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スローターハウス5 [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

カート・ヴォネガット・ジュニア著の「スローターハウス5」を読破しました。

先月の「ドレスデン逍遥」以来、気になっていた本書。
原著は1969年に発表され、翌年の「ヒューゴー賞」を受賞したSF小説の古典です。
出版当時は、まだドレスデンの無差別爆撃は連合国によって秘密扱いとされ、
1945年2月にドレスデンで捕虜となっていた著者の体験がベースとなっているそうです。

スローターハウス5.jpg

この「スローターハウス5」というタイトルは昔から聞き覚えがありますが、
1972年のジョージ・ロイ・ヒルの映画も観たことがありませんし、
記憶を辿ってみると、やっと思い出しました。
1990年ごろ、NFLのヒューストン・オイラーズが黒人QBウォーレン・ムーンを擁し、
5人のレシーバーを走らせるラン&シュート・オフェンスをやっていたとき、
そのレシーバー陣をニックネームで「スローターハウス5」とTVで呼んでいたと思います。
なかでもタッチダウンした時にエレクトリック・スライドと名付けられたビリビリ感電したかのような
セレブレーションをするアーネスト・ギビンズが大好きでしたねぇ。

houston-oilers-ernest-givins.jpg

本書のストーリーはというと、1944年の冬、ルクセンブルクでの「バルジの戦い」で
ドイツ軍に捕らえられた主人公のビリーら米国兵たち。
大戦末期のドイツ軍による悲惨な捕虜列車の輸送・・、
辿り着いた平和な都市ドレスデンで巻き込まれる味方による大空襲・・。

bombing Dresden 1945.jpg

と書けば、まるで戦争小説のようですが、実はそんなことはありません。
四次元の宇宙人トラルファマドール星人に拉致されて、
彼らの星の動物園で見世物になったり、時空を越えてビリーの過去、未来が頻繁に往復する展開。
トラルファマドール星人は手に眼があったり、
小学生の時によく読んだ星新一や筒井康隆のショートSFを思い出させます。
いや~、このとんでもない本のレビューを上手く書けたらプロになれますね。

Tralfamadore.jpg

そんなわけで、文庫でも267ページの本書ですが、いつものようなレビューはさっさと諦めます。。
amazonでは23件のレビューがありますし、wikiにも内容が書かれていますから
興味のある方はそちらを参照ください・・。

日本で本書が発刊されたのは1973年で、タイトルはそのまま翻訳した「屠殺場5号」です。
本書でも「シュラハトホーフ=フュンフ」と呼ばれる主人公の米軍捕虜たちが
収容所代わりに入れられたドレスデンの屠殺場のことなんですね。
表紙は前年に制作された映画の主人公ビリーの写真なので、ソレに合わせて発刊されたのかと
思ったものの、映画のタイトルと違うのはナゼ? と思って調べてみると、
映画が日本で公開されたのは1975年だったようです。
そしてこの文庫版は1978年に映画と原著のタイトルで発刊されたという歴史ですね。

屠殺場5号.JPG

映画の監督ジョージ・ロイ・ヒルはこの映画の前に名作「明日に向って撃て!」を撮っており、
この「スローターハウス5」の次に、ヴィトゲンシュタインの大好きな
「スティング」を撮っているという名監督です。
映画のDVDも、もはや買ってみるしかありませんが、
いったい、この原作をどのように料理しているのか、
コメントで教えていただいていますが、なおさら興味津々です。

slaughterhouse_five.JPG

ココでおまけとして年末らしく「独破戦線2012-年間ベスト10」を発表してみましょう。
独破戦線初の試みですよ!
と、威勢の良いワリには考えれば考えるほど、順位をつけるのが難しい・・。
なので順位付けはやめて、「独破戦線が選ぶ 2012年、この10冊」にします。。

1945年・ベルリン解放の真実 戦争・強姦・子ども
ドイツ参謀本部
第二次世界大戦 リデル・ハート
健康帝国ナチス
グラーグ -ソ連集中収容所の歴史-
イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45
君はヒトラー・ユーゲントを見たか?
スターリン -赤い皇帝と廷臣たち-
ヒットラーを焼いたのは俺だ
ノルマンディー上陸作戦1944

う~む。。今年はソ連モノにも本格的に挑戦しましたので、3冊がランクインです。
順番はあくまで読んだ順なので意味はありません。
戦争小説はランク外ですが「反逆部隊」が一番面白かったですし、
番外編で紹介した「ロシアから来たエース」も結構、感動しました。
実はレビューは書きませんでしたが、巨人入団までのスタルヒンの前半生が描かれた
「白球に栄光と夢をのせて」もコッソリ読んだくらいです。。

白球に栄光と夢をのせて.JPG

コレはやってみると、なかなか楽しいなぁ・・ということで、去年の
独破戦線が選ぶ 2011年、この10冊」もやってみましょう。

死刑執行人との対話
第二次世界大戦 ヒトラーの戦い 全10巻
パンツァー・ユニフォーム -第2次大戦ドイツ機甲部隊の軍装-
Uボート部隊の全貌 -ドイツ海軍・狼たちの実像-
切手が語るナチスの謀略
電撃戦という幻
ヒトラー最後の十日間
普通の人びと -ホロコーストと第101警察予備大隊-
ヒトラーを操った男 -マルチン・ボルマン-
エヴァ・ブラウン -ヒトラーの愛人-

まさにナチス・ドイツ・・ですね。

poster-nazi-h.jpg

ついでに「独破戦線が選ぶ 2010年、この10冊

ベルリン終戦日記 -ある女性の記録-
最終戦 -1945年ドイツ-
始まりと終り -栄光のドイツ空軍-
デーニッツと「灰色狼」 -Uボート戦記-
ドイツ装甲師団とグデーリアン
捕虜 -誰も書かなかった第二次大戦ドイツ人虜囚の末路-
髑髏の結社 SSの歴史
戦争は女の顔をしていない
ジューコフ元帥回想録 -革命・大戦・平和-
重戦車大隊記録集〈2〉SS編

いや~、名著がズラリ・・。
最終戦にハマっていた時期だったかな??

Battle of Berlin 1945.jpg

ここまできたらこのBlogが始まった、「独破戦線が選ぶ 2009年、この10冊

不屈の鉄十字エース
失われた勝利
最強の狙撃手
大西洋の脅威U99 -トップエース クレッチマー艦長の戦い-
脱出記 -シベリアからインドまで歩いた男たち-
鷲は舞い降りた [完全版]
極限に生きる -疎外され死ぬ以外の権利を剥奪された一団の物語-
ヒトラー最後の戦闘
詳解 武装SS興亡史 -ヒトラーのエリート護衛部隊の実像-
10年と20日間 -デーニッツ回想録-
巡洋艦インディアナポリス号の惨劇
電撃戦 -グデーリアン回想録-
忘れられた兵士 -ドイツ少年兵の手記-

初年は数が多かったですし、マンシュタイン、デーニッツ、グデーリアンの
回想録なんてのはどうやっても外せませんから、足が出てしまいました。
やっぱり戦記が多い気がしますね。
小説は個人的に大好きなBest.2が入っています。

manstein_Dönitz_Guderian.jpg

さてさて、勢いで決めてみたベスト10ですが、もちろん読み返したりして
決めたわけもなく、タイトルだけ見て、パッと挙げてみました。
よって、明日、同じことをやってみれば、違う結果になるでしょうね。。

今年はこれにて閉店です。
コメントしていただいた方々も、そうでない方々もご訪問ありがとうございました。
それでは皆さん、ど~ぞ良いお年を。













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ラスト・オブ・カンプフグルッペIII [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

高橋 慶史 著の「ラスト・オブ・カンプフグルッペIII」を読破しました。

過去に1作目2作目と楽しく読んだシリーズの3作目です。
今年の2月あたりから出るぞ、出るぞと噂をありましたが、10月末になってようやく発売。
早速、購入しました。
前2作が、「戦争末期の戦闘団」が主役だったのに対して、
本作は、「知られざる小規模な戦闘部隊の奮戦」ということですが、
4515円とお値段はちょっと高くなったものの、ページ数も400ページを超え、
鮮明な写真も増量されています。

ラスト・オブ・カンプフグルッペIII .jpg

第1章に登場する部隊は「突撃師団 ロードス」です。
1943年に枢軸から脱落しそうなイタリア。
3万以上のイタリア軍が駐留するエーゲ海に浮かぶ、ロードス島とドデカネス諸島を巡る
戦闘の経緯が語られます。
9月に案の定、イタリアが降伏したことで始まった「枢軸作戦」。
それまでの盟友イタリア軍が英軍の支援を受けてドイツ軍に反旗を翻します。
クレタ島駐在の部隊などから編成された「ロードス」。
あの特殊部隊「ブランデンブルク」も沿岸猟兵大隊として登場してきたり、
ドイツ軍らしくない、まるで海兵隊のような戦闘が続きます。
特に興味深かったのは第999要塞大隊で、これは「懲罰第Ⅳ大隊」という
純粋な懲罰部隊だそうです。いや~、この懲罰部隊だけで1章欲しかった。。

Kos von deutschen Truppen 1943.jpg

第2章の「残されて島った人々」の舞台となるのは、英国とフランスの間、
ドーヴァー海峡のチャンネル諸島です。
1940年の西方戦役の際にこれらの島々も占領したドイツ軍。
最も大きなジャージー島とガーンジー島には、敵の上陸を危惧するヒトラーの命令によって
沿岸砲も数多く備え付けられ、「第213重戦車大隊」の姿もあります。
主役であるこの大隊の重戦車とは、もちろんティーガーではなく、
フランスで鹵獲した「シャールB1」26両に、「シャールB2火炎放射戦車」10両というものです。
この島が舞台のジャック・ ヒギンズの小説、「狐たちの夜」を思い出しながら楽しめました。

Char B-1 auf der Kanalinsel Jersey.jpg

続いてはハンガリーの突撃砲大隊のお話。
以前に「トゥラーン」というハンガリー戦車を写真付きで紹介したことがありますが、
この章の主役は「ズリーニィⅡ」というハンガリー産の突撃砲です。
なんとなく、Ⅲ号突撃砲とソ連のSU自走砲を合体させたような風貌ですね。
しかし生産台数は最大でも72両に過ぎず、結局、ハンガリーの突撃砲大隊が乗るのは
ドイツから譲り受けたⅢ号突撃砲になるわけです。

Zrínyi II 1943.jpg

さらにもっとマイナーな国が登場。それは「スロヴァキア快速師団」です。
1942年の夏季攻勢に参加し、ドイツ軍と共にカフカスへと向かったこの部隊ですが、
スターリングラードでドイツ第6軍が壊滅し、彼らのA軍集団にも危機が迫ると、
士気は目に見えて低下・・。集団投降することがソ連側とコッソリ合意されます。
この部隊の話は「カフカスの防衛」でも印象的だったヤツですね。

第5章は「フランス艦隊」です。
1940年、降伏したフランスの艦隊がドイツ側に奪われることを危惧したチャーチルによって、
カタパルト作戦」が発動され、英vs仏の戦いが・・。
そして1942年11月、ツーロンのフランス艦隊を接収するために、
フライヘア・フォン・フンク率いるドイツ第7装甲師団に命令が下ります。
お~と、この人、「ノルマンディー上陸作戦1944」に出た人ですねぇ。

Toulon_7. Panzer-Division.jpg

「空軍地上師団ついに勝つ」は、一番のお気に入りの章です。
空軍の地上部隊という意味では、歴戦の「降下猟兵師団」や、
精鋭「ヘルマン・ゲーリング師団」と、その戦いぷっりでは陸軍の師団にも劣らないことが
知られていますが、この「空軍地上師団」とは、1942年9月、空軍の予備部隊20万名を
陸軍に編入させようとするヒトラーと、それに猛反対し、
独立した空軍地上部隊を創設すると説き伏せたゲーリングから生まれた産物です。
陸軍の補充兵としていれば、その完成された訓練システムによって鍛え上げられたものの、
経験不足の将校や兵で一から師団を創設したところで、どうなるものでもありません。

Hitler_and_Goering.jpg

こうして1943年までに高射砲訓練部隊や飛行場警備部隊、通信部隊出身の兵士による
「ドイツ軍最弱師団」と呼ばれる空軍地上師団21個が創設されますが、
結局、ヒトラーの決定により、全空軍地上師団は陸軍へと編入され、
例えば本章の主役「第16空軍地上師団」は「第16地上師団(L)」と改称されます。
この(L)はもちろんルフトヴァッフェを指すものです。
そしてオランダに駐留していたこの師団は、1944年6月16日、
連合軍が上陸したノルマンディに向けて行軍が下令されるのでした。

luftwaffen-felddivisionen.jpg

第21装甲師団の戦区を引き継ぎ、第12SS装甲師団「ヒトラー・ユーゲント」と隣接する、
英軍の猛攻のど真ん中に放り込まれた、最弱の第16地上師団(L)。
すぐにパニックに陥って兵器を遺棄して敗走。。多くが捕虜となってしまいます。
この師団の話も充分に面白いものですが、特に面白かったエピソードは高射砲部隊です。

第125装甲擲弾兵連隊長ルック中佐が敵戦車30両を発見し、88㎜高射砲中隊の
若い空軍大尉に、移動しての戦車攻撃を命令します。しかしこの大尉は
「私の標的は敵の航空機で、戦車と戦うのは貴方の仕事です。私は空軍ですから」。
ルックは拳銃を突きつけて「死ぬか、勲章を貰うかどっちかだ」。
こうして4門のハチハチシャーマン戦車4両と装甲車両14両を見事撃破するのでした。

Hans_von_Luck.jpg

勢いに乗った88㎜高射砲中隊はその後、味方のティーガー2両の分厚い正面装甲までもぶち抜き、
「敵重戦車2両撃破」と誤射にも気づかず、大いに士気はあがります。。
結局、英第5近衛機甲旅団15両も撃破したところで弾薬が尽き・・。
ちなみにこの空軍大尉が勲章を貰ったか否かは定かではないということです。

Acht-Acht.jpg

本書のメインとなるのは次のワルシャワ蜂起の章でしょうか。
1944年8月1日に蜂起したポーランド国内軍(AK)の兵力や状況から、
この蜂起を知ったヒトラーが、つい先日に起こった暗殺未遂事件から陸軍を信用せず、
SSのヒムラーに反撃作戦を命令します。
臨時攻撃司令官となったのは、SSおよび警察司令部「ポーゼン」の司令官、ライネフェルトSS中将
とんでもない悪人顔ですが、1940年に陸軍第377歩兵連隊の小隊長(曹長)時の
活躍によって騎士十字章を受章し、その後、武装SSに転出してSS中将まで上り詰めたという、
決してありがちなお飾りのSS警察司令官ではなく、
実戦指揮能力はずば抜けて高いと紹介されます。

Heinz_Reinefarth.jpg

そしてこのライネフェルトの指揮下に駆け付けたのが、悪名高い囚人部隊「ディルレヴァンガー」、
ロシア義勇兵部隊カミンスキー旅団から抽出されたフロロフSS少佐の連隊、「戦闘団フロロフ」、
国防軍防諜部によって編成されていた「アゼルバイジャン第111大隊」といった連中です。
ヘルマン・ゲーリング師団の突撃砲や鹵獲T-34の援護にも関わらず、
これらの兵士たちは戦闘などほったらかしで、掠奪、暴行、強姦、殺人に走り、
作戦初日にはわずか900m前進したのみ。。
フロロフ戦闘団に至ってはBdMの少女を暴行するという事件までも起こしています。

Warschauer Aufstand  Waffen-SS 1944.jpg

この章では人物と戦闘の経緯が中心で、最終的に蜂起の失敗を迎えますが、
次の章、「ワルシャワ蜂起の装甲車両」では別の角度から語られます。
突撃戦車「ブルムベア」にⅢ号突撃砲、ヘッツァー、そしてティーガー、
その擱座したティーガーを破壊するために投入されたミニ戦車「ゴリアテ」。
パンターはAKに鹵獲されて「マグダ」と命名されます。

Powstanie Warszawskie Panther_Magda.jpg

その他、ボルクヴァルト重爆薬運搬車がAKの手に落ちると、
熱狂したAK中隊と市民数百人が集まって、黒山の人だかりに・・。
そしてその時、この500㎏の高性能爆薬を積んだ恐ろしい兵器は目を覚まして爆発。。
諸説あるものの、死者500人、重軽傷者350人という地獄絵図が繰り広げられます。
まだまだカール超重自走臼砲の第Ⅵ号車「ツィウ」に、シュトルムティーガーも写真付きで登場。

Sturmtiger-Warsaw 1944.jpg

写真ということでは、「瓦礫と化したワルシャワ市街を飛翔する
ネーベルヴェルファー」の写真 ↓ が凄いですね。感動ものの鮮明さです。

Wurfgerät 42 Nebelwerfer. Warsaw. August-September 1944.jpg

第9章は「聞くのも恐ろしい雑多な部隊の寄せ集め」と紹介される「第11軍」。
これはもちろん、東部戦線でマンシュタインが指揮し、セヴァストポリ要塞を陥落させた
第11軍のことではなく、戦争末期の1945年3月、ルール包囲網から逃れることの出来た
敗残部隊などから編成された新生第11軍、またはSS第11軍と呼ばれるものです。

軍司令官には63歳の老将軍ヴァルター・ルヒト大将、
3個軍団の編成内容も詳細で、例えば、「敗残兵を率いて頑強な防衛戦を展開する専門家」
と紹介される有名なフレッター=ピコ大将の率いる第9軍団の内訳は、
2個国民擲弾兵師団の「残余」が中心です。。

Maximilian_Fretter-Pico.jpg

そして最後は「装甲列車」。
第1次大戦時のドイツ帝国が保有する装甲列車から、第2次大戦時までの開発の歴史に始まり、
「第61鉄道装甲列車」の戦いの記録までが、写真たっぷりで紹介されます。
コレはハッキリ言って、とても勉強になりました。

eisenbahn panzerzug.jpg

この章の「おわりに」では、日本には鉄道ファン(テッチャン)は100万人~200万人いるそうで、
一人当たりの出費5万円として、1000億円市場といわれているということですが、
「セッチャン」というらしい戦車ファンや戦史ファンの人口は2万人・・としています。
ヴィトゲンシュタインは果たして「セッチャン」だったのか・・?
という、いままで考えたこともない難題にぶち当たりました。。

本書と、このシリーズは決して「一般的」な戦史ファンが喜べる内容ではないと思いますが、
より「マニア」な戦史ファンには実に楽しめるシリーズです。
個人的には「ドイツ武装SS師団写真史」のシリーズも含めて、
出来る限り続けていただけるよう応援しています。



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爆撃機 [戦争小説]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

レン・デイトン著の「爆撃機」を読破しました。

ここのところ、「戦闘機」、「SS-GB」と著者デイトンの本を楽しんできましたが、
4年前に買っていたハードカバーの上下2段組、569ページの「戦争小説巨編」に挑んでみました。
四発爆撃機小説としては、去年に「戦う翼」という映画化もされた小説を紹介していますが、
あちらが米軍のB-17"フライング・フォートレス"の話だったのに対して、
英国人の書く本書は、当然、アブロ・ランカスター爆撃機が主役です。
しかし、訳者あとがきを先に読んでみると、英独あわせて100人もの人物が登場し、
メインの主人公もおらず、これだけのボリュームなのに、たった24時間の話・・という、
なんとなく「いちばん長い日」、つまり「史上最大の作戦」のドイツ無差別爆撃版といった趣です。

爆撃機.jpg

まず登場するのは英国に基地を持つ、爆撃機の飛行小隊の面々です。
小隊長は若干22歳のスイート大尉。
そして4つ年上のランバートは軍曹ですが、部下たちの人気を得ようとやっきのスイートに対して、
ドイツの都市を爆撃することを公然と嫌だと語るランバートが主役の雰囲気です。
毎度小説を読む時はその顔をイメージするヴィトゲンシュタインは、
今回その名前から、現在アストン・ヴィラの監督を務め、1995年にヨーロッパ・チャンピオンに輝いた
ドルトムントでセンターハーフだったスコットランド人、ポール・ランバートをイメージして読み進めます。

Paul Lambert dortmund.jpg

「1943年6月31日夜のドイツ空襲に参加したある英空軍爆撃機の最後の飛行をめぐる出来事」
というのが原書の副題になっているそうですが、この存在しない架空の日の目標に選ばれたのは
やはり架空の町であるルール地方のクレフェルトです。
一方、ドイツ側ではその架空の町クレフェルトの西に位置するオランダ国境に近い
人口5千人の田舎町アルトガルテンの様子。
46歳のアウグスト・バッハ家の朝、旦那様と10歳の息子の朝食を作る
22歳のアンナ=イルザの姿があります。
彼女は「RAD/wJ」、すなわち女子勤労奉仕隊の制服隊員であるわけですが、
「わたし旦那様が好きです」と告白してしまうと、空襲で妻を失っていたバッハも
「あんたが好きだよ。わしと結婚しておくれ」となって、すぐさまベッドへ直行。。
アンナ=イルザは可愛らしくて、ヒロインの雰囲気ですね。

RAD maiden with a young girl.JPG

また、オランダにあるドイツ空軍夜間戦闘機の基地では、
金髪で背が高く、優雅な身のこなしの男爵フォン・レーヴェンヘルツ中尉が登場。
確認戦果28機で、いつ騎士十字章を受章してもおかしくない夜戦エースです。
こういう人物はどうしても「プリンツ・ヴィトゲンシュタイン」を想像してしまいますね。

Heinrich Prinz zu Sayn-Wittgenstein, at the age of 22.jpg

大きく以上の3つが舞台となって、24時間の物語が入れ代わり立ち代わり進みます。
7人乗りのランカスター爆撃機の小隊の基地にある全16機が出撃準備に入り、
小隊長のスイートはランバートの腕利き搭乗員を自機に引き抜こうと画策。

レーヴェンヘルツは部下が手に入れたダッハウ強制収容所で行われている
ドイツ空軍医務局のジークムント・ラシャー博士の悪名高い「実験」の報告書を目の前にして、
彼の信念を揺るがせるほどの衝撃を受けます。

Dachau medical experiment for the Luftwaffe.jpg

その頃、爆撃機基地では最終ブリーフィングが。
爆撃機700機を投入する大作戦であり、ランカスターの他、ウエリントン、ハリファックス、
スターリングといった各爆撃機も参加することに古強者たちは歓声をあげます。
これはランカスターの喪失率5.4%に対して、旧式のスターリングは
低い上昇限度でのろのろ飛ぶことから、その喪失率は12.9%という甚大なものであり、
対空砲火の矛先がそちらに向かってくれることを知っているからです。

avro-lancaster-bomber-01.JPG

オランダにあるドイツ軍のレーダー基地では、その巨大なフライヤ・レーダーのアンテナが
英爆撃機が飛び立ったことを早くも探知。
そしてその基地の指令は、「旦那様が好きです」ことアウグスト・バッハ中尉です。
このレーダーの役割については細かく書かれていて、広い範囲をカバーするフライヤ以外にも
ヴュルツブルクという2基のレーダーがあって、1基は味方夜間戦闘機の位置を捉え、
もう1基は英爆撃機の進路を1機ずつ捉える・・というものです。

Würzburg Radar.jpg

すぐさま夜間戦闘機の基地に迎撃要請が伝えられ、3人乗りのJu-88に乗り込むレーヴェンヘルツ。
ちなみに彼の乗機の名は「猫1号」です。。
同乗するレーダー員と観測員の仕事も詳しく書かれた夜間戦闘機の戦闘方法っていうのは、
大変珍しいと思いますね。真っ暗な中、計器を頼りに受け持ちの空域を旋回しながら待機し、
レーダー基地からの指示によって、敵爆撃機が飛ぶ方向へ誘導され、
近づいてきたら自機のレーダーによってさらに接近。
最終的には目視で巨大な四発重爆の姿を捉えるのです。

nachtjäger ju 88.JPG

海峡を渡ろうとする爆撃機の方でも、それぞれ1機ごとに名前があり、
オレンジのO、シュガーのS、ラブのL、ゼブラのZというのが正式名称ですが、愛称があります。
ランバートのランカスターは何度も傷ついて、修理を重ねた機であることから「がたぴしドア」、
スイート大尉は「スイートのS」、そして「フォルクスワーゲン」に「ジョー・フォー・キング」。。
特に「ジョー」というのはヨシフ・スターリンのことですから、「スターリンを王に」という
基地司令の大佐からも目を付けられている危険な爆撃機なのでした。

avro-lancaster-bomber.JPG

やがて「フォルクスワーゲン」の背後に迫った「猫1号」。
20㎜機関砲180発が「フォルクスワーゲン」の下腹に吸い込まれます。
「脚をやられた!ああ、母さん母さん母さん!」と叫ぶフレミング機長。
爆発によって無傷のまま暗闇に放り出される無線手。ですがパラシュートは抜き・・。
しかし、たった3機の夜間戦闘機が、700機の重爆全てに同じ目を合わせられるハズもありません。

Wireless_Operator.JPG

アルトガルテンでは空襲警報が鳴り、クリスマス・ツリーのように美しい照明弾を眺めるアンナ。
本来、もっと東の町クレフェルトを狙った照明弾が街の片隅に、誤って落ちてきたのです。
爆撃機隊員たちは、あとで恥をかかなくて済む程度に、出来るだけ早く爆弾を投下したがります。
そうすれば少し先のルール地区の高射砲とサーチライトの密集陣を横目に旋回して、
無事、帰路につくことができるからです。

flares.JPG

こうして目標ではない田舎町アルトガルテンに爆弾の雨が降り注ぎます。
子守の少年と共に、貴重品の詰まった頑丈な地下壕へ逃げたアンナ=イルザ・・。
しかし建物が崩れて、出口は塞がれてしまうのでした。

bombing-Lancaster.jpg

第1波に続いて、第2波が襲ってくると、住人だけではなく消防隊員たちですら、
精神と肉体の限界を超えた精神症に侵されていきます。
現れた白髪の老人は「頼むから、わしを死なせてくれ」と訴えますが、
上級小隊長のボドは「黙れ、死ぬ時が来たら、俺がそう言ってやる!」と一喝。
すると老人は第1次大戦時の軍隊口調で答えます。
「はっ、わかりました。少尉殿」。

Freiwillige Feuerwehr.jpg

人望のないスイート大尉の「スイートのS」もやられます。
なんとか体勢を整えようと奮闘するスイート機長ですが、部下たちは勝手に脱出を始めたりと
機内は混乱状態に。。やがてスイートはアルトガルテンに墜落するのでした。

avro Lancaster clash.jpg

ようやくアンナ=イルザの埋まった地下壕に救援が辿り着きます。
「わたしきっとバッハさまの良い奥さんになってみせますわ」と喜ぶ彼女。
そのとき、頭上の爆発延期装置付きの600ポンド爆弾が爆発。
彼女の体の一部でさえ、発見されないほど、木端微塵に・・。
う~ん。彼女は生き残るかなぁ・・?と思ってましたが、デイトンはやっぱり容赦ありません。。

Bombing of Dresden.jpg

88㎜高射砲の射程外の高さを飛び、帰路についたランバートの「がたぴしドア」には、
夜戦エース男爵操る「猫1号」が迫ります。
その時、ドイツ海軍の放った105㎜高射砲弾が炸裂。
双方の機に重傷を負わせたこの1発により、3名の死者を出した「がたぴしドア」は
海峡を越えて英国の基地をなんとか目指します。
そして味方の高射砲の破片が腹に食い込んだレーヴェンヘルツも部下に脱出を命じ・・。

Lancaster Pilot.jpg

1979年発刊の大ボリュームの一冊でしたが、英独双方に良い人間もいれば、
ムカつく人間もいて、それらに関係なく死んでしまう小説です。
例えば、第12SS「ヒトラー・ユーゲント」の編成のために東部戦線からやってきた
ライプシュタンダルテの将校は、一時避難した地下壕から貴重品を持ち去ろうとしたところを
アンナ=イルザに邪魔されると、顔面に1発お見舞いし、彼女は前歯が吹き飛びます。
そしてそんな腹立たしいSS将校には、対ソ戦で生き延びてきた術があり、
街を襲う爆撃なんてどこ吹く風とばかりに、サイドカーで走り去っていくのです。

今回イメージしたポール・ランバートがルール地方のドルトムントで活躍したというのも
なにかの因縁のようにも感じましたし、
戦争という大きなうねりの中では善も悪もなく、人間は、ただ悲惨な死に巻き込まれているだけ・・、
というようなことを改めて感じさせる一冊でした。



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ノルマンディー上陸作戦1944(下) [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

アントニー・ビーヴァー著の「ノルマンディー上陸作戦1944(下)」を読破しました。

この分厚い上下巻も492ページの後半に突入しました。
上巻までの印象は、この大作戦をバランスよく書かれていると思いました。
すなわち、アイゼンハワーを筆頭とした連合国遠征軍最高司令部(SHAEF)内のゴタゴタに、
モントゴメリー、ブラッドレーの軍集団指揮官の戦術、彼らの隷下で部隊の指揮を執る師団長。
そして前線での激しい戦いで気がふれてしまう新米兵士まで・・。
一方のドイツ軍もヒトラーに始まり、ロンメルのような軍集団司令官の発言、
陸軍、空軍降下猟兵軍団、武装SSの師団長たちの軋轢と共同作戦。
ロシアやポーランドから来た、やる気ゼロのヒーヴィに、
血みどろになりながらも鬼神の如く戦い続けるヒトラーユーゲント師団の少年兵まで。。

ノルマンディー上陸作戦1944(下).jpg

第18章「サン=ロー攻略へ」から始まるこの下巻は、ドイツ軍が最も恐れるパットン将軍
遂に正真正銘、米第3軍の指揮を取り、大陸への上陸を果たすところからです。
しかし、すでにD-デイから1ヶ月を過ぎたこの時期、戦闘は各地で苛烈さを増しており、
捕虜の殺害などの報復合戦だけでなく、赤十字のマークも役には立たず、
連合軍では「医療チームが一人残らずドイツ軍に残忍に殺された」と報告すると、
ドイツ軍側も、「連合軍戦闘機は赤十字を付けた救急車を空から攻撃した」と報告します。

German Convoy Attack.JPG

それでもシェルブールで身動きの取れなくなったドイツの従軍看護婦の扱いをめぐり、
米第1歩兵師団とドイツ第2装甲師団の間で一時休戦がまとまり、引き渡し式が挙行されます。
この騎士道的な話を聞いたB軍集団司令官ロンメルは、
ヒトラーがこのまま戦争終結を拒むようなら、密かに米側と接触して休戦交渉に入ることを決意。

drk.jpg

武装SSのヒトラーユーゲント師団を率いるマイヤーSS大佐に出頭を命じ、
間近に迫る英軍の「グッドウッド作戦」について「貴官の所見を訊きたい」と質問。
「兵士たちは引き続き戦い、それぞれの陣地において死に続けるでしょう。そして彼らは、
英軍の戦車が自分たちの死体を踏み潰し、パリへと進軍するのを阻止できないでしょう」
と答えます。OKWを非難し、「私がなんとかせねば・・」と熱く語るロンメル。。

一方の連合軍では「なんと、あの"モンティ"が遂に突破攻撃に出るそうだ」と聞いて、
すべての上級司令官が神に感謝するのでした。

THE VISIT OF THE PRIME MINISTER, WINSTON CHURCHILL TO CAEN, NORMANDY, 22 JULY 1944.jpg

爆撃機2600機でドイツ軍陣地を叩くという地上軍支援の航空兵力としては空前の規模で始まり、
その2時間半も続く、人間が作り出した大地震の前に、ドイツ兵も気が挫け、
気が触れた兵士たちのあげる絶叫、爆風によって重戦車ティーガーさえひっくり返り、
ゆれる地面に耐えきれず、おのが銃で命を絶つ者も・・。
しかし、地雷原で手こずった英軍は、またしても大きな損害を出し、作戦は失敗。

Panzer Lehr Panther XXX destroyed by Operation Cobra bombs.jpg

第20章は「ヒトラー暗殺計画」です。
トレスコウシュタウフェンベルクといった首謀者に触れながら、西部戦線の関係者である
ロンメルに参謀長のシュパイデルクルーゲシュテルプナーゲルらの動きに加え、
カーンが陥落する直前、SSの重鎮ゼップ・ディートリッヒまでがロンメルの元へやってきて
「迫りくる崩壊」に関し、どのようにお考えか?と尋ねます。
ゼップは「SS部隊は私が完全に掌握している」と請け負ったものの、
シュパイデルにどこまで暗殺計画を教えてもらえたかは定かではないとしています。
髑髏の結社 SSの歴史(下)」でもこの件について少し触れられていましたが、
このシュパイデルの回想録「戦力なき戦い」は一度、読んでみたいんですよね。

LangRugeSpeidelRommel_May1944Webd.jpg

街を瓦礫にして占領したサン=ローから、米軍は「コブラ作戦」を発動します。
英軍のしくじった「グッドウッド作戦」と同様、まず爆撃機によって敵陣を叩き、
そのショックから立ち直らないうちに突破を図ろうとするこの作戦ですが、
2日間に渡って自軍の上に爆弾を投下するといった、有名な大失態が起こります。
そんなことにもめげず、作戦は順調に進み、ドイツ軍は大混乱に陥ります。

Saint-Lô 1944.jpg

「モルタン反撃」、ドイツ側では「リュティヒ作戦」と呼ぶ、ヒトラーの反撃の章は
とても興味深かったですね。
この作戦を直接指揮するのは第47装甲軍団司令官の男爵ハンス・フォン・フンク大将ですが、
隷下の第116装甲師団の伯爵フォン・シュヴェーリン中将と積年の確執があり、
かなり仲が悪いんですね。
さらに作戦開始の前日になって、フンクがかつての陸軍総司令官フリッチュ
個人参謀であったことから、ヒトラーによって「エーベルバッハと交代させよ」と
西方軍司令官のクルーゲに命令が・・。
結局、うやむやの内に始まった作戦ですが、年上で階級も上の男爵によって
反ナチ的な45歳の若き伯爵師団長は解任。。それにしてもこの人、いい顔してますねぇ。

Hans von Funck_Gerhard Graf von Schwerin.JPG

ファレーズに向けた「トータライズ作戦」が始まると、
算を乱して退却してくる第89師団の兵士たちの前に、
"パンツァー"マイヤーがカービン銃をもって立ちはだかり「喝」を入れます。
「貴様ら、恥を知れ、恥を。さっさと戻って、ソントーを防衛せんか!」
そして頼りになる部下に指示を与えるマイヤー。
ティーガー戦車長のヴィットマンは、このまま死地へと赴くのでした。
う~ん。本書では"パンツァー"マイヤー目立ちますね。「擲弾兵」再読したくなってきました。

このカーン~ファレーズ街道をめぐる戦いでは、カナダ第2軍団は1327名を捕虜としますが、
憎っくき「ヒトラーユーゲント師団」の兵士はわずかに8名のみ・・。
確かに狂信的な戦士といわれ、包囲されても降伏する可能性は低い彼らですが、
「この8名という数字は衝撃的である」としています。もちろん「報復」の結果も含めてですね。

This nazi POS was lucky.jpg

面白い話では、ドゴールの思惑により、パリ解放一番乗りを目指す「ルクレール師団」が
前進するにつれ600名近い死傷者を出しますが、自分も参加したいと言うフランスの若者は
片っ端から採用し、そのなかの1名は武装SS「ライプシュタンダルテ」に所属していた
アルザス出身の兵士だったそうです。

General Jacques Phillippe Leclerc directing French action in Paris from his half-track.jpg

解放された町々のフランス人たちは、道端で倒れた連合軍兵士に花を供える一方、
レジスタンス組織や「FFI(フランス国内軍)」が逃亡を図るドイツ人を捕えては、
捕虜として、自慢げに正規軍に引き渡します。
もっとも、ゲシュタポやSS関係者だった場合には、彼らが生き延びるチャンスはほとんどありません。
あ~、本書には書かれていませんでしたが、"パンツァー"マイヤーも確かこんな風にして
捕虜になってしまいましたね。まぁ、ラッキーな人です。

French townspeople lay flowers on the body of an American soldier..jpg

また、ドイツ軍兵士との「協力」があったフランス人女性たちは、公衆の面前で
髪の毛を刈られる辱めを受けた後、そのまま「市中引き回し」の目に遭います。
この有名な件も著者は次のように解釈します。
「そうした若い女たちは、特にレジスタンス運動に参加したと、自ら胸を張れない男たちにとって、
ごく手近にいる、最も血祭りにあげやすい恰好の標的だったのである」。

france woman 1944.jpg

ファレーズ包囲網」が閉じられようとするころ、西方軍司令官クルーゲが
ヒトラーの疑心暗鬼の犠牲者となって、モーデル元帥と交代。
ベルリンへと向かう途中で青酸カリを呷るクルーゲ・・。
ファレーズの街道ではドイツ兵の死体の上を連合軍の戦車が通り過ぎ、
死んだ軍馬に破壊された装甲車が散乱。
真夏の8月の最中、蠅がたかり、ガスで膨らんだ死体、黒焦げで炭化した死体。

falaise-road.jpg

ノルマンディの戦いで奮戦した後、「大パリ司令官」となったコルティッツ将軍ですが、
パットンの第3軍に対処するために次々と部隊を持って行かれ、
いまや老兵からなる保安連隊に自転車で移動する2個歩兵中隊、
若干の対空砲、フランス製装甲車17両、戦車4両が手元に残っただけ。
この土壇場で新たに招集された部隊は、
パリ在住のドイツ国籍の民間人から成る「通訳翻訳大隊」です。。

Panther_Paris_1944.jpg

こうして8月24日、フランス第2機甲師団、通称「ルクレール師団」がパリ市内に進軍します。
パリ市民が大歓声共に殺到し、兵士はキスやアルコールが振る舞われつつも前進を続けますが
1両のシャーマン戦車に両手を挙げて近づいてきた美しい娘が車体によじ登ろうとしたとき、
ドイツ軍の機関銃が火を噴きます。
そして地面へと滑り落ちた娘がシャーマンのキャタピラに巻き込まれるという事件も・・。

M-8 Howitzer Motor Carriage from the French Army taking part in the liberation of Paris, August 1944.jpg

また、フレーヌ刑務所の外では88㎜対戦車砲を操る部隊の姿・・。
彼らはそれまで刑務所に収監されていた「札付きドイツ兵」であり、
ズックの囚人服を着たままです。
2両のシャーマンを葬るものの、やがて残りの戦車によって粉砕されるのでした。
こんな彼らの話はそのうちに「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」に登場するのかも・・?
なんてこと言ってないで、早く「Ⅲ 」を読まないと・・。。

「大パリ司令官」のコルティッツも「パリを燃やす」ことなく、降伏文書にサイン。
司令部のあったオテル・マジェスティックの前には人々が集まり、
捕虜が建物から引き出される度に歓声をあげます。
しかし若い兵士4名がいきなりその場で射殺されたり、
ドイツ軍捕虜を満載したトラックに手榴弾を投げ込もうとする輩がいたりと大混乱ですね。。

prison_captured_german_mihiel_1944.jpg

やって来た米軍と言えば、この「華の都パリ」で存分に贅沢を味わうべく、
最高級のホテルを残らず接収するという暴挙に及び、フランス人でさえ立ち入り禁止。
問題は溜まりに溜まった給料をこのほどまとめて支給されたことであり、
前線であれだけキツイ目に遭ったのだから、
今こそ好き勝手に振る舞う権利があると信じていることで、
ヴァンドーム広場の歩道で米兵が酔って寝ていることにフランス人もショックを受けます。
それは非番の時でさえ、咥え煙草で歩くのは禁じられていたドイツ兵との差があり過ぎる・・。
フランス共産党はそんな米軍を「解放軍」ではなく、「新たな占領勢力」というレッテルを貼るほど。

Crowds line the street to greet American soldiers after the liberation of Paris by Allied forces.jpg

最後には連合軍、ドイツ軍双方の損害等を数字であげながら、
連合軍の上陸からノルマンディ解放までに殺されたフランスの民間人が2万人。
上陸前の準備爆撃での被害が15000人。
戦争の全期間を通じ、連合軍の手によって命を落としたフランス人の数は7万人に膨れ上がり、
この数字は、ドイツ軍の爆撃によって殺された英国人を上回っている・・としています。

An A-20 from the 416th Bomb Group making a bomb run on D-Day.jpg

ふぇ~。。いやいや凄いボリュームでしたが、最後まで楽しく読みました。
美味いとんかつ屋さんで、ヒレと海老フライとあじフライの乗ったミックスフライを
ご飯とキャベツと味噌汁もおかわりして、腹一杯で動けなくなったような状況ですね。。

StuG.jpg

上下巻を通して読むと、上巻で思った連合軍内の対立の構図は必要最低限に留まり、
基本は前線での師団、大隊、中隊、戦闘団の激烈極まる戦いの様子、
そして開放されたノルマンディからパリに至るまでのフランス人との知られざるエピソードなど、
米英加独仏の軍人たちが入れ替わり立ち代り登場する展開です。
ただ、それゆえこの戦いにおける大局的な全体像が掴みにくいとも思います。

Pair of French women and a little girl pose w. a group of American soldiers after German troops were driven from the area..jpg

初めて「ノルマンディ上陸作戦」から「パリ開放」ものを読まれる方には、ちょっとどうかなぁ・・
とも思いますが、「史上最大の作戦」や、「パリは燃えているか」がまた、楽しめるでしょうし、
ドイツ軍の奮戦するシーンでは、パウル・カレルの「彼らは来た」を思い出しました。
この次は8月に出た560ページの「パリ解放 1944-49」も読まなくてはなりませんね。

















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ノルマンディー上陸作戦1944(上) [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

アントニー・ビーヴァー著の「ノルマンディー上陸作戦1944(上)」を読破しました。

ノルマンディー上陸作戦を描いたものは、言わずと知れた「史上最大の作戦」や、
ドイツ軍視点なら「彼らは来た」、「ノルマンディのロンメル」など、独破してきましたし、
関連書籍を全部挙げたらキリがないほどです。
そして去年の7月に出た個人的に好きな著者の上下2巻組みの大作。
夏に古書で4000円で購入しましたので、気合を入れて挑戦です。
原題は「D-ディ:ノルマンディーの戦い」というものですが、なぜかビーヴァーの和本のタイトル
スターリングラード―運命の攻囲戦 1942‐1943」、「ベルリン陥落 1945」、
赤軍記者グロースマン―独ソ戦取材ノート1941‐45 」、「スペイン内戦―1936-1939」
今年の8月にコッソリ出た最新刊も「パリ解放 1944-49」と、西暦が付くのがお約束なんですね。

ノルマンディー上陸作戦1944(上).jpg

本書の始まりは1944年の6月を迎えたアイゼンハワーを筆頭とした連合軍の様子から・・。
「プラン・フォーティテュード」と呼ばれる一大欺瞞作戦を展開し、
そのなかにはドイツ軍が最も恐れる野戦指揮官、パットン将軍の「架空の第1軍集団」をでっち上げ、
この軍集団は隷下に11個師団という触れ込みですが、当のパットンは問題が多くて干されたまま。。
西側連合軍による大陸侵攻が近いうちに始まるのは、敵にとっても周知の事実であり、
そこに絶対的に必要な奇襲の効果をもたらすには、如何にして上陸地点を悟られないようにするか。
それがノルマンディだと悟られた場合でも、実はそれは「陽動作戦」なのであり、
「連合軍は7月に別の地点に上陸するつもりなのだ。騙されるか!」と、
ドイツ側に信じ込ませることが目的です。

patton getting out of car.jpg

しかし、まず敵は身内に・・ではありませんが、司令官アイゼンハワーの頭を悩ますのは
有力な将軍たちの政治的ライバル関係や、個人的対抗意識へのバランスを配慮しつつ、
最高司令官たる自らの権威を如何に保つかも苦心しなければなりません。
早速、英側のブルック参謀総長に連合軍の地上軍を統括するモントゴメリー
同じく航空部隊を統括するリー=マロリーなどとの確執を紹介します。
また、上陸の日時を最終的に決定する気象情報は最も大事な問題です。

Omar Bradley, Bertram Ramsay, Arthur Tedder, Dwight Eisenhower, Bernard Montgomery, Trafford Leigh-Mallory, and Walter Bedell Smith meeting in England.jpg

この侵攻作戦直前のヒトラーとドイツ軍の様子といえば、6月3日の土曜日、
ヒトラーの山荘「ベルクホーフ」において、盛大な結婚式が催されています。
新郎はヒムラーの名代でSS中将のフェーゲライン、新婦はエヴァ・ブラウンの妹グレートル
新婦の父親役を引き受けたヒトラーですが、同時に連合軍の侵攻も待ち望んでいます。
それは「わたしが築かせた"大西洋の壁"によって、必ずや粉砕される」という自信からくるもの。
「西側連合軍を頓挫させれば、この戦争における英米問題は解決を見るであろう。
そうなれば全軍をスターリン相手の東部戦線に集中できる」という戦略です。

Gretl und Fegelein Wedding.jpg

しかしフランスとベネルクス三国を統括する西方総軍司令官たる、ルントシュテット元帥
この"大西洋の壁"について、「安手のはったり」と見なしています。
彼によれば「不愉快極まる、あの長靴の国」を放棄して、アルプス山脈を横断する線を
防衛ラインとすべき・・というのが持論であり、ノルウェーについてもあれほど多くの兵員を置き、
その戦略的重要性を言い立てるのは「海軍の連中だけだ」と思っています。

Rundstedt,Mussolini,hitler.jpg

また、その海岸の防衛線の改善に取り組むB軍集団のロンメル元帥も、
「フランス防衛には全軍一丸となって当たるべきであり、この地に駐留する空軍、海軍も
統一指令部のもとに集約したい」という、まるで連合軍のような体制を要望するものの、
空軍のゲーリング、海軍のデーニッツの強い働きかけもあり、ヒトラーは却下。
100万名の要員のうち、1/3以上が空軍の支配下にある西部戦線ですが、
高射砲部隊を陸軍に融通するのをゲーリングに拒否されて、ロンメルは怒り心頭です。

Rommel_ST-Freies_Indien_Legion_France.jpg

ここまで80ページほど読んで思いましたが、本書はあまりにボリュームがあるゆえ、
このノルマンディー上陸作戦を、攻守共々理解するのが逆に難しい気がしました。
良い意味でアイゼンハワーが総司令官に任命された経緯などには触れられませんし、
大局的なことよりも著者らしい、細かいエピソードの積み重ねで進んでいきます。
ですから、初めてD-Dayものを読まれる方にはちょっと不向きで、
ひょっとしたら著者は「史上最大の作戦」や「将軍たちの戦い」くらいは読んで、
ある程度理解している読者をターゲットにしているようにも思います。
そういうわけで、あまりに細かくて面白いエピソードが盛りだくさんなので、
ヴィトゲンシュタインも基本的な話は端折ってみたいと思います。

Normandy-supply-effort_1944.jpg

「決して"ドゴール主義者"ではなかった」と書かれるフランス国内のレジスタンス組織。
彼らの支援には米軍のブラッドレー将軍が「破壊活動の高度訓練を受けたパラシュート屋」と呼ぶ、
英陸軍の「SAS(特殊空挺部隊)や、米将校もしくは英将校1名、フランス将校1名と
無線士の3名一組で構成される「ジェドバラ」も紹介。
「特殊部隊 ジェドバラ」という本が去年出ていて気になっていたんですよねぇ。

jedburgh.jpg

日付が6月6日に変わった深夜、空挺部隊によって大陸への侵攻が開始。
英第6空挺師団が「メルヴィル砲台」の無力化に挑み、
米軍の2つの空挺部隊「第82空挺部隊」と「第101空挺部隊」もC-47輸送機で飛び立ちます。
死地へ向かうことを理解している部隊員たちは、エンジンの咆哮と振動にひたすら耐えつつも、
襲いくる吐き気に胃の中身を床にぶちまけ、肝心の時にひどく滑りやすくなってしまいます。
テイラー少将の「断じて一人も機内に残すな」の命令は、
最後に飛び降りる軍曹たちによって遂行され、高射砲によって重傷を負った10数名を除けば、
例外はわずかに2名。1人は機内で緊急用パラシュートが開いてしまった者、
もう1人は、心臓発作に見舞われたある少佐です。。

Soldiers waiting to be parachuted in France.jpg

しかし高度の低すぎる輸送機から飛び降りたケースでは、脚や背骨を折ってしまう者も・・。
18人全員がパラシュートが開かぬまま落ちてきたのを目撃した兵士は、
肉体が地面に激突する音を、「トラックの荷台から落ちたスイカ」に例え、
やはり低すぎる高度から橋を目指して飛び降りた一団は、長い1列縦隊で
全員がハーネスを装着したまま死んでいるのを発見されるのでした。

101ST AIRBORNE DIVISION LANDINGS.jpg

陰部を切断され、それを口に突っ込まれた空挺隊員の死体に
結婚指輪を取るために指ごと切断されたドイツ軍将校の死体が発見され、
大破したグライダーではジープの下でグライダー兵が押し潰され、
農家のかみさんたちがシルクで出来たパラシュートに先を争うように殺到するという
大混乱が夜通し続いたころ、遂に史上最大の大艦隊が海を渡ります。

D-Day_glider_casulties.jpg

そしてこちらでも多くの上陸部隊の兵士たちが左右上下に揺さぶられてグロッキー・・。
最後の晩餐のような「心よりの朝食」をうかうか食べてしまった我が身を呪い、
サンドウィッチに挟んであったコンビーフの塊を吐き出しながら、「オマハ・ビーチ」の章を迎えます。
通称「ビッグ・レッド・ワン」と呼ばれる米陸軍の第1歩兵師団と第29歩兵師団。

Omaha Beach on D-Day, 6 June 1944.jpg

第8航空軍のB-17とB-24の落とした爆弾13000発は一発もオマハ・ビーチには落ちません。
また、ドイツの守備隊が必殺の88㎜砲を装備していたというのは「神話」であり、
それに比べてはるかに命中精度の劣る、チェコ製の100㎜砲だったとしています。
さらに彼らを援護する第741戦車大隊は、水陸両用の「DDシャーマン戦車」を発進させます。
しかし32両のうち、実に27両が荒れる海で沈没・・。33名が命を落とします。

Sherman Duplex Drive tanks on an amphibious exercise.jpg

この「血のオマハ・ビーチ」だけで50ページ程度。その後、ユタ、ゴールド、ジュノーの
各ビーチの章と続き、ソード・ビーチでは、「砲兵出身で戦車戦の経験が皆無であった」という
フォイヒティンガー少将率いる第21装甲師団が反撃部隊の筆頭として登場。
しかしヤーボの前に戦車連隊長のオッペルン=ブロニコフスキー大佐も右往左往し、
前大戦で片目を失い、今次大戦において片足を失いながらもノルマンディ地方全体を統括し、
第84軍団を率いる「昔気質のプロイセン軍人」エーリッヒ・マルクス大将も、この状況に唖然。。

Erich Marcks.JPG

海岸堡を固めようとする連合軍にあっさり投降するドイツ軍歩兵。
チャンスとあれば喜んで投降する兵たちにはポーランド人やロシア人からなる
東方兵部隊も少なくありません。捕虜となった彼らに対し、
「こいつら2名はドイツ人だ」となると、その2名の後頭部を撃ち抜く米兵の姿も。
米第90師団もユタ・ビーチに上陸した際、引率されたドイツ人捕虜と偶然行き会うと、
この新米兵士たちはありったけの武器を用いて、捕虜たちに攻撃を加えるのでした。

西部戦線で戦うロシア兵となると、名作「幻影 -ヒトラーの側で戦った赤軍兵たちの物語-」を
思い出しますねぇ。

Some German prisoners are being moved in after capture by the relieving forces.jpg

カランタンをめぐる戦いでは、珍しく第17SS装甲擲弾兵師団「ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン」が・・。
60%が10代で編成された若い武装SS師団ですが、精鋭の第12SS「ヒトラー・ユーゲント」とは
錬度の点でも、装備の面でも比べものにならず、火力としては1個突撃砲連隊があるのみ。

Officier de la 17e panzerdivision Gotz Von Berlichingen.jpg

ここにマインドル空軍大将率いる第2降下猟兵軍団とリヒャルト・シンプフ中将の第3降下猟兵師団が
共同作戦を展開しますが、「ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン」師団長のオステンドルフSS少将が
「今から、この私が指揮を取る」と宣言すると、有名な空挺部隊指揮官で、
口だけの上官に何の敬意を示さない男、フォン・デア・ハイデと激論に・・。
カランタンを失った責任をめぐり、「勇気の欠如」なる罪状で告発されるハイデですが、
柏葉付き騎士十字章を持つこの英雄が軍法会議にかけられることはありません。

von der Heydte.jpg

一方、カーン周辺の英軍を海へと叩き落とすため、ゼップ・ディートリッヒの第1SS装甲軍団に、
陸軍の精鋭中の精鋭であり、バイエルライン中将が指揮する装甲(戦車)教導師団と
第21装甲師団、第716歩兵師団が組み込まれます。
ここでは第21装甲師団司令部を訪れたゼップに参謀長が進言するシーンが面白かったですね。
この参謀長の名は、フォン・ベルリッヒンゲン男爵。
あのSS師団の由来となった「鉄拳の騎士」の末裔です。

17. SS-Panzergrenadier-Division  Götz von Berlichingen.jpg

南からレジスタンスの妨害をはね飛ばし、村々で虐殺を行いながらノルマンディを目指す、
第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」の姿、そしてフリッツ・ヴィット師団長の「ヒトラーユーゲント」が
カーンに到着すると血なまぐさい激戦が展開され、その中心にいるのは
連隊長のクルト・マイヤーSS大佐です。
ここでは彼らに対するカナダ軍との報復に次ぐ、報復、が繰り返されます。

Kurt Meyer & Sepp Dietrich.JPG

そして第13章「ヴィレル・ボカージュ」とくれば、あの男の登場です。
モントゴメリーの虎の子師団であり、北アフリカで「砂漠のネズミ」と呼ばれた
精鋭の第7機甲師団を相手に、「我々の合言葉はただひとつ『復讐』だ!」と部下にハッパをかけ、
ドイツ諸都市を見舞った連合軍の空爆に怒りをたぎらせたSS中尉、
第101SS重戦車大隊ヴィットマン
クロムウェル戦車1個大隊を道路上で次々に撃破し、
轟音と共にヴィレル・ヴォカージュへ突進するヴィットマン・ティーガー。
やっぱり、このシーンは血湧き肉踊りますね。
「ヴィレル‐ボカージュ―ノルマンディ戦場写真集」買い忘れてました。。

Wittmann_drink.jpg

本書ではちょこちょこ出てくるロンメルですが、それよりも頻繁に登場するのは
西方装甲軍司令官のガイル・フォン・シュヴァッペンブルクです。
ヤーボの襲来によって幕僚たちを失い、自身も怪我を負った彼ですが、
「ベルヒテスガーデンの戦略家ども」を批判し、OKWの作戦部長であるヨードルに対しても、
「あの砲兵あがりが・・」と全面否定。
「OKWは常に状況を極度に楽観視し、その決定は常に間違っているうえに、伝達が遅すぎる」
という報告書をロンメルの支持を得たうえでOKWに送り付けます。
そしてその結果は、当然、シュヴァッペンブルクの解任。
後任にはエーベルバッハ装甲兵大将というヒトラーの決定です。
また、芋づる式にルントシュテットも解任され、クルーゲに席を譲ることに。。

Geyr von Schweppenburg.JPG

この際、ロンメルも一緒に・・と考えるヒトラーですが、「ロンメル元帥の解任は、
前線だけでなく、ドイツ全土の士気低下に繋がり、対外的にも逆効果」という
エーベルバッハの進言もあって見送りに。。
それでも先輩元帥クルーゲの挑戦的な所信表明にロンメルとの激しい口論が始まります。
そして前線を視察したクルーゲは自分の不明を恥じ、ロンメルに謝罪して、
彼の大局観を受け入れるのでした。

von kluge_Eberbach.jpg

その頃、激戦の続く米軍の前線では、ドイツ軍の巧者ぶりを改めて認識せざるを得ません。
恐怖心からドイツ軍の戦車はすべて「ティーガー」であり、
すべての火砲は「ハチハチ」であるとみなされ、
東部戦線で赤軍を相手に闘い続けてきたベテラン兵士はあらゆる戦場テクニックを駆使します。
地面に穴を掘るのが遅い連合軍兵士は、しばしばドイツ側が掘ったタコツボを流用。
するとそこには多くの場合、ブービートラップが仕掛けられており、対人地雷の餌食に。。
また、手榴弾1箱をさりげなく残しておき、何発かはピンを抜いた瞬間に爆発するよう手を加え・・。

Bodies of U.S. soldiers are attended to in the French countryside, Summer 1944..jpg

カルピケ飛行場をめぐる壮絶な戦いも細かい映写で印象的です。
復讐に燃えるカナダ軍と、彼らを援護する戦艦ロドニーの艦砲射撃。
村と飛行場を守る「ヒトラーユーゲント師団」の残余の若き擲弾兵たちに、
Ⅳ号戦車5両、88㎜砲を擁する砲兵中隊、そしてその発射音から連合軍兵士たちから
「キーキー・ミニー」と呼ばれていたネーベルヴェルファー多連装ロケット砲の数個中隊です。
「狂戦士」と化したカナダ兵は、瀕死の重傷を負った武装SS兵士を見つけると、
その喉を尽くかき切っていったとされ、「この日は双方とも一人の捕虜も取らなかった」。

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この上巻の最後には、6月末の時点で米英軍それぞれの損害が34000人、25000人であり、
同じくドイツ軍が80000人という数字がとても印象的です。
確かにこの数字だけ見ると、ここまで互角ですねぇ。
東部戦線に比べて西部戦線は・・という話も良く聞きますが、
本書ではソコはやっぱり戦争です。

ドイツ軍は武装SSを中心に確かに荒っぽいですが、
デビュー戦となった米軍兵士は、ビビっては敵かどうかを判断する前に
とにかく撃ちまくってしまいますし、KレーションやCレーションに飽きては、
ノルマンディの農家で略奪を働いて、捕獲した豚に「ヘルマン・ゲーリング」と名付けて
撲殺を図り、めでたく丸焼きにするといった連中も出てくる始末です。
まさに「誰にも書けなかった戦争の現実」を彷彿とさせますね。。







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