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消滅した国々 -第二次世界大戦以降崩壊した183ヵ国- [世界の・・]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

吉田 一郎 著の「消滅した国々」を読破しました。

去年、「世界軍歌全集」の際にコメントでもオススメいただいた本書。
本屋さんで手に取ったこともありましたが、711ページという分厚さにたじろいでいました。
まぁ、それでもず~と気になっていましたし、社会評論社の「ニセドイツ」ファンでもあります。
ソ連や東ドイツなど、今や存在しない183ヵ国を気楽に勉強してみましょう。

消滅した国々.jpg

巻頭の8ページは本書の国々の国旗がカラーで掲載されています。
ソ連、東ドイツ、チェコスロバキア、ユーゴスラビアなど有名な国旗もありますが、
ほとんどは初めて見る国旗の数々・・。
一般人よりは国旗には詳しいつもりですが、コリャ参ったな。。
ちなみに次の3つ国旗、上からマリ連邦、東カプリビ、そしてミゾラムです。

mali_Caprivi_Mizoram.jpg

たまにTVで国旗マニアの小学生が登場したりしますが、あの子たちでも全部は判らないでしょう。
1年前に出た、「国旗 その“隠された意味"に驚く本」が本文に入る前に欲しくなってきました。



「まえがき」では、国連加盟国の数は2012年時点で193。
国連に加盟していないものの、日本と国交がある国がバチカン、コソボ、クック諸島で、
国連加盟国なのに日本が承認していない北朝鮮・・ということで、
日本政府の公式見解は、「世界には195ヵ国ある」。
しかし、台湾やソマリランドなど、存在していながらも世界の大半が承認していない国に、
パレスチナのように世界の大半が承認していても、
日本や西側主要国が承認していない国があるなど、世界の国の数はかなり曖昧だと解説します。

最初の国は「南ベトナム」です。
1954年にフランスから独立し、ベトナム戦争の結果、首都サイゴンが陥落・・。
簡単な年譜に地図などが掲載され、ホー・チミンの写真も登場しながら10ページ。
1国のボリュームとしてはちょうど良いですね。

Hồ Chí Minh_time-16-7-1965.jpg

続いては「マラヤ連邦」。。もう、聞いたこともない国が出てきました。
1957年に英国から独立したこのマラヤ連邦の首都はクアラルンプールで、
1965年にシンガポールが分離独立したという経緯です。

こんな調子で5番目には来ました、「ソ連」です。
ソヴィエト社会主義共和国連邦の「ソヴィエト」は、「労農兵評議会」という意味であり、
社会主義共和国の集まった連邦で、構成するのはウクライナベラルーシなど15の共和国、
ロシア自体も連邦であり、国内に18の「自治共和国」があった・・と、解説します。
レーニンスターリン、ゴルバチョフの写真も掲載しながら、ソ連における社会主義の意味、
そしてペレストロイカにグラスノスチによってソ連が消滅するまでを簡潔ながらわかりやすく・・。

Gorbachev Yeltsin.jpg

6番目は「東ドイツ」。
1953年に生産性向上を狙って労働者のノルマの引き上げを発表すると、各地で暴動が起こり、
この年だけで33万人がベルリン経由で西ドイツへ逃げ出し、
49年~60年まででは、東ドイツの人口の1/4にあたる250万人が亡命。
そのような危機に建設されたのが「ベルリンの壁」です。

Berliner Mauer 1961.jpg

しかし1987年、ホーネッカー書記長が東西ドイツの平和共存をアピールして西ドイツを訪問し、
フランス国境に近い生まれ故郷のノインキルヒェンに里帰りしたことがTV中継されると、
「一番エライ人が西ドイツに行ってるんだから、俺たちにも行かせろよ!」と不満が爆発。
出国申請者が急増するのでした・・。そして2年後の壁の崩壊へ。

Berliner Mauer 1989.jpg

「チェコスロバキア」の歴史では、ヒトラーによるズデーテンラントの併合などにもシッカリと触れ、
戦後の「プラハの春」や、チェコ人とスロバキア人の関係も説明しています。
「協議離婚」と例えられるほどに平和裏に解体し、連邦大統領だったハヴェルが
新生チェコの初代大統領に就任します。おぉ・・あの金髪若奥さんジョークの人。。
面白いのは、"CZECHO"の"O"は、"SLOVAKIA"に続くための接続助詞で、
単独なら、"CZECH"であり、「チェック共和国」となるはずなのが、外務省もそう呼んでおらず、
「チェコ」はあくまでチェコスロバキアの略であるというのが正しいようですね。

Československá.jpg

「ユーゴスラビア」は旧と新に分かれて登場しています。
まず「旧ユーゴスラビア」は、いわゆるチトーのユーゴスラビアであり、
クロアチア、スロヴェニア、マケドニア、ボスニアが独立して消滅。
「新ユーゴスラビア」は残った、セルビアとモンテネグロによって誕生した連邦で、
後に「セルビア・モンテネグロ」と改称されますが、結局、モンテネグロが独立して消滅します。

この当時、ユーゴのサッカー好きでしたから、このような独立の推移は興味深く見守っていました。
要は、代表選手の誰がセルビア人で、誰がモンテネグロ人なのかを知っていないと、
ただでさえクロアチア人がいなくなり、どっちがどう弱くなるのかが心配だった・・ということです。
セルビア・モンテネグロサッカー協会の会長に就任したのはセルビア人のストイコヴィッチで、
代表監督がモンテネグロ人のサビチェヴィッチという構図でもありましたから・・。
本書を読んでいると、そんなことを思い出しました。

Stojković Savićević.jpg

「パレスチナ」や、「チベット」といった国々が紹介された後、気になったのは「ブガンダ王国」です。
1962年、英国から独立した「ウガンダ」。ブガンダはウガンダ内の王国ですが、
1966年5月20日に、そのウガンダからの独立を宣言します。
しかし5日後、アミン大佐に率いられた部隊が宮殿を急襲。
国王ムサテ2世は英国へと亡命し、ブガンダ王国は独立からわずか5日で消滅します。
こんな話だけでも十分面白いですが、このアミン大佐は、あの「アミン」なんです。
そう、日本でも1984年に封切られた「食人大統領アミン」です。

amin.jpg

本書では彼がボクシングのヘビー級(東アフリカ)チャンピオンで、
アントニオ猪木と異種格闘技戦を開催する予定だったという話から、
30万~40万人を粛清したと云われ、気にくわない裁判官を公開処刑にしたり、
囚人に他の囚人をハンマーで撲殺させ、死んだ囚人の肉を食事に出したり・・といった
食人大統領っぷりも紹介します。「食人族」はパスしましたけど、この映画、観たなぁ。。
フォレスト・ウィテカー主演の「ラストキング・オブ・スコットランド」もアミンでした。知らなかった。。
「スコットランドの黒い王様」という原作もあるんですね。

the-last-king-of-scotland.jpg

「ソ連崩壊で生まれた国」という章も興味深いですね。
まずは「クリミア共和国」。
独ソ戦好きなら「知らなきゃモグリ」と言われちゃう、セヴァストポリのあるクリミア半島です。
もともとソ連時代はロシアの一部だったクリミアは、
1954年に地続きのウクライナへ所属替えとなり、1991年にウクライナが独立すると、
翌年、クリミア議会がウクライナからの独立を宣言します。
クリミアではロシア人が半数以上を占めているのも要因の一つですが、
黒海艦隊の母港もあり、支援したいロシア自身もチェチェンの独立を阻止すべく、軍事弾圧中・・。
クリミアに独立をそそのかすのでは立場が矛盾するために、正式承認できず。。

それにしても国旗も限りなく、ロシア風ですね。

flag-Qırım Muhtar Cumhuriyeti.jpg

その後、セヴァストポリだけはロシアが租借している形ですが、
現在のウクライナ情勢を鑑みると、再度の「独立」に発展するかも知れません。
特にプーチンが「ロシア国民、ロシア軍の要員の安全を守るため」という理由で、
軍事介入しようとしているのは、まさに「ドイツ人が脅かされている・・」と言って
ヒトラーがズデーテンラントの併合と、その後にチェコスロバキアに侵攻したことや、
ドイツから切り離された飛び地となっていた「ダンツィヒ」の帰属を求めるヒトラーによって、
ポーランド侵攻が行われたこととソックリの展開な気がします。。
そしてプーチンを非難しているオバマは、それこそチェンバレンとダラディエですね。

Ukraine EU_Students kiss.jpg

そんな「チェチェン」も当然、出てきます。
ロシア軍による首都グロズヌイへの爆撃に、チェチェン側が起こしたテロ事件も紹介。
2002年のモスクワ劇場占領事件(死者130人)、
2004年のモスクワ地下鉄爆破事件(死者240人)、
ロシア旅客機同時墜落事件(死者90人)、北オセチア学校占領事件(死者386人)。
特に占領事件は検証したTVも見ましたが、人質の死者の数はハンパじゃないですよね。

Moscow theater hostage crisis.jpg

「オマーン・イマーム国」もなかなか楽しめました。
英国の力でオマーンを再統一したものの、サイード王は首都から遠く離れた離宮に、
黒人奴隷500人とハーレム女性150人とともに引き籠り、暗殺事件が起きると、
生きているのか、死んでいるのかさえ「国家機密」にしてしまいます。
徹底した鎖国政策で、議会も存在せず、国内に学校は3ヵ所、病院は1ヵ所、
新聞、TV、ラジオもなく、国民の文盲率は95%・・と中世さながら。。
英国が援助したロケット砲などの兵器類も、「軍隊に渡したら反乱に使われる」と恐れて、
離宮の奥に隠され、英国で訓練を受けた皇太子まで離宮に幽閉してしまいます。
1970年、呆れ果てた英国の支援で皇太子がクーデターを起こし、サイード王を追放・・。

Said bin Taimur.jpg

第2次大戦後、南北に分かれる前の、統一「朝鮮人民共和国」も勉強になります。
1945年9月6日に建国を宣言するも、南朝鮮に上陸した米軍には認められず・・。

最後に紹介したいのは「マーチャゾ共和国」です。
ルワンダとその隣のブルンジという国名は知っていますが、
このマーチャゾは1972年5月1日にブルンジから独立した国です。
フツとツチという民族の殺し合いの歴史がここでは詳しく描かれ、
フツだけの独立国を築こうと、ツチを殺して建国したものの、8日後には、
ツチ主体のブルンジ軍によって制圧されて消滅。8月までに25万人のフツが殺されます。
そして1994年、今度はルワンダでフツが大虐殺を行い、
3ヵ月間で人口の一割、80万~100万人を殺害するという「ルワンダ大虐殺」が起こるのでした。

rwanda_scarred-man_01.jpg

ひゃ~、しかし、大変な労作ですね。
印象としてはアフリカ大陸と東南アジア、アラブ諸国で半分以上を占めていると思いますが、
それらの国も、もとは西欧列強国の植民地だったり、第2次大戦の結果による独立や消滅、
一ヵ国の問題、民族対立や近隣諸国との問題だけではない、世界規模の影響を感じました。

近代の世界史は大国を中心にして、もっと言えば、
第2次大戦の勝利国側から語られるものとすれば、
本書のように歴史に名を留めないような消滅した国々から見た世界史という意味で、
大変、面白かったですね。「ふたつの戦争を生きて」で書かれていたように、
歴史家が書いた戦記や将軍が書いた回想録ではなく、
兵士たち、パルチザン、テロリストから見た戦記のようなイメージでしょうか。

著者は「世界飛び地大全―不思議な国境線の舞台裏」や、
「国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ!」といった本も書いている、
完全な国フェチの方のようです。
「世界飛び地領土研究会」というサイトも運営する、さいたま市議でもあるそうで、
この2冊も気になりますね。










pat
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コメント 5

編集者

『消滅した国々』の編集者です。いつもご紹介頂き、ありがとうございます。この本は実に大作で制作するのに3ヶ月ぐらい掛かりました。何回読んでも新しい発見があります。クリミア自治共和国なんかも今読んでみると新鮮ですね。
by 編集者 (2014-03-04 09:58) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も、編集者さん。
今回も楽しく勉強させていただきました。
端折ってしまいましたが、ヨーロッパや、アフリカ、東南アジアといったありきたりな分類ではなく、「独立したら併合された国」、「併合されたくて独立した国」といった「章分け」が絶妙で、それによって最後まで、興味を保ったまま読むことが出来ました。
また、「世界各国女傑列伝」や、「戦後復興首脳列伝」、「世界ナンバー2列伝」 などの列伝シリーズにも惹かれているところです。
by ヴィトゲンシュタイン (2014-03-04 18:22) 

編集者

どうもありがとうございます。私が一番好きなのは「傀儡政府」の部分ですね。その点、日中戦争期に限られてしまいますが『ニセチャイナ』という本で中国の傀儡政府にチャレンジしました。列伝系もお薦めです。
by 編集者 (2014-03-06 09:49) 

ヴィトゲンシュタイン

近々、出ると噂の「共産主婦 東側諸国のレトロ家庭用品と女性たちの一日」も、異常に惹かれますね。
by ヴィトゲンシュタイン (2014-03-06 19:54) 

編集者

『共産主婦』、Twitterで大いに盛り上がっています。17日頃に書店に並ぶ予定なので、是非ご覧頂ければ幸いです。
by 編集者 (2014-03-07 14:44) 

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