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卵をめぐる祖父の戦争 [戦争小説]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

デイヴィッド・ベニオフ著の「卵をめぐる祖父の戦争」を読破しました。

いつの間にやらamazonの「ほしいものリスト」に登録していた本書。
ひょっとしたら4月の「レニングラード封鎖: 飢餓と非情の都市1941-44」のときに見つけて 
そのままにしていたのかも知れませんが、無性に小説が読みたくなったので
2011年に文庫化された469ページの本書を選んでみました。

卵をめぐる祖父の戦争.jpg

LAで脚本を書いている「私」がロシア系の祖父母から
戦争の話を聞き出そうとするところから物語は始まります。
1942年の最初の一週間、祖母に出会い、親友ができ、ドイツ人を2人殺したことを語る祖父。
このようにして始まる戦争小説や戦争映画は、もはや定番ですね。

1941年の夏に侵攻してきたドイツ軍によって包囲されたレニングラード。
母と妹はすでにヴャージマに疎開し、暗殺されたセルゲイ・キーロフの名に因んで付けられた、
「キーロフ」という集合団地に住む17歳の若き祖父、レフが主人公です。
彼がこの地元の都市のことを「ピーテル」と愛称で呼ぶあたりはいいですね。
ペトログラードの名残りなんでしょうか。
そんな大晦日の夜、パラシュートで落下してきたドイツ兵の死体からナイフを盗んで、
逮捕されてしまったレフは、拘置所で20歳の脱走兵コーリャと一緒になります。

Leningrad fortified region.jpg

こんな理由でも死刑になったり、拘置所で餓死してしまうという当時のレニングラード。
2人はNKVDの大佐から特別任務を授かります。
それは来週金曜日に結婚する娘のために奥さんが造るケーキに必要不可欠な
「卵」を1ダース見つけてこいというもの。。
一般市民は飢餓に苦しんでいるなかで、砂糖に蜂蜜、小麦粉などは貯め込んでいるものの
「卵」だけはどうしても見つからないのです。
元ボクサーのような風貌のNKVDの大佐は、粛清の拷問を受けた傷跡が残る、
タフでおっかないオッサンで、こんな ↓ イメージ。。

Полковник НКВД.jpg

命にかかわる「配給カード」と引き換えに、
半年前なら1000個の卵が買えた400ループルもの大金と
このNKVDの大佐の署名の入った絶対的な許可証を渡されて、いざ出発です。
まぁ、「鷲は舞い降りた」のヒムラーのヤツと同じようなモンですね。

leningrad.jpg

闇市の露店が並ぶセンナヤ広場では、「ウォッカ」の名をした「メチルアルコール」に、
本の製本糊を煮詰めて棒状にした「図書館キャンディ」に金を払ってしまう2人。。
「図書館キャンディ」は蝋のような味がするものの、命を繋ぐ蛋白質が含まれているそうで、
以前、壁紙を剥がして糊を・・というのは読みましたが、そんな理由なんですね。

そして「卵を売ってやる」と言う大男に連れられて、そのアパートに行くと、
鉤爪に引っ掛けられた子供の胸郭、皮を剥いだ女性の太腿が・・。
命からがら逃げだす2人。いや~、食人鬼夫婦、こわいですねぇ。。
「悪魔のいけにえ」を思い出しました。キャ~!

texas-chain-saw-massacre_1974.jpg

続いて、噂に聞いた鶏を飼っている爺さんのもとを訪れて、なんとか最後の一羽をゲット。
ダーリンと名付けて、卵を産む瞬間を今か今かと待ちますが、
雄鶏であることに気づき、スープに変身・・。

「ピーテル」には一個の卵もないことを悟った2人は、戦線の向こう側、
50㌔離れたムガの集団農場に向かうことを決意します。
ムガを占領しているドイツ兵だって、卵を食べるだろう・・と推測するわけですが、
レニングラードに卵がない理由は、犬、猫、ネズミまで食べてしまうくらいですから、
卵を産む鶏なんて、とっくに食べちゃってるんですね。

防衛陣地では白い網がかけられ、カモフラージュされたKV-1戦車に、
ドイツ軍が「スターリンのオルガン」と呼んで恐れるカチューシャ・ロケットのトラックが・・。
大佐の許可証の効力は絶大で、それを見た軍曹は、
「すべてわかってる。パルチザンの組織化、だろ?いいねぇ」。

katyusha_2.jpg

そして郊外では背中に木製の箱が取り付けられ、死にかけた牧羊犬の姿。
気が付けはそんな犬の死骸がそこらじゅうに・・。
地雷犬に気づいたドイツの狙撃手に仕留められた犬たちなのです。

dog mines.jpg

ムガへの方角も間違え、夜になって辿り着いた一軒の農家。
そこにいたのは元気な4人の女の子たちです。
村の男たちは虐殺され、女はドイツの工場へ労働者として送られ、
彼女たちは侵略者の快楽のためにここに残されていたのです。

russian girls 1941.jpg

さらにここに来るドイツ人は国防軍兵士ではなく、「アインザッツグルッペン」。。
クラースナヤ・ズヴェズダー「赤い星」でも、この殺人部隊によって殺害された
ロシア人で埋められた塹壕の写真を掲載しており、すでに有名なのです。

1939-po-wkroczeniu-wehrmach.jpg

襟に4つの星を付けた、アインザッツグルッペン最年少の少佐であり、
首から騎士十字章を下げたアーベントロートはチェスと14歳のゾーヤが好み。
彼女たちが語るところによれば、逃げ出したゾーヤを捕まえてきて戻ると、
両手両足を押さえつけさせて、彼女の両足首をノコギリで・・。
イメージ的にはこんな感じの ↓ ヤツですかね。。

SS-Sturmbannführer Rafael Wolfram.jpg

このような悪いドイツ人が沢山出てくることで知られる1985年のソ連映画、
炎628」のDVDが年末に再発売されるようです。
観たくても廃盤でプレミア価格だったので、買っちゃおうかな。。



そんな極悪非道を絵に描いたようなアインザッツグルッペンAのゾンターコマンド隊長の
アーベントロートの命を狙っているパルチザン一行と行動を共にすることになった2人。
そしてリュドミラ・パヴリチェンコの記録を狙う、若い女性狙撃者のヴェラに
レフは淡い恋心を抱いてしまうのでした。

Soviet partisans.jpg

いまだ「卵」を求める2人とパルチザン一行は、アインザッツグルッペンAと行動する
エーデルヴァイスの部隊章を付けた第1山岳師団に追われると
敢えて彼らの捕虜になる道を選びます。
目的はドイツ軍の「卵」と、アーベントロートの「命」。
生き残った3人、レフとコーリャ、そしてヴェラの作戦は・・。

Gebirgsjäger-Division.jpg

いや~、最後の1行まで楽しめた戦争小説でした。
というより、青春ドラマというか、戦争ファンタジーと言っても良いかもしれません。
休日の朝っぱらから読み始めて、2回の食事休憩を挟みながら、
469ページを夕方までに読み倒してしまいました。

祖父である主人公のレフは小柄で痩せた、でか鼻で童貞のユダヤ人。
相棒のコーリャは背も高く、美男子で話の巧さも天下一品ですが、
後半に語られる彼が脱走兵となった理由も笑えます。とんだポコチン野郎で・・。
下品な会話が散りばめられた凸凹コンビの珍道中でもあります。
もちろん男の子のようなヒロインの狙撃者ヴェラも良い味出してますね。

著者は2004年の映画「トロイ」の脚本を手掛けているそうです。
監督が「Uボート」のウォルフガング・ペーターゼンだからってわけじゃありませんが、
この映画、結構好きなんですよねぇ。

Troy.jpg

そうそう、映画っていえば、8月の「戦争の世界史 大図鑑」で観たい、と書いていた
「高地戦」をWOWOWで観ました。
本書のヴェラのように若い女性狙撃手が登場するんですが、
コレが個人的な好みで、なかなかよろしい・・。
映画自体も非常に非情な戦争モノで、今年観たなかでNo.1です。

TheFrontLine-2011.jpg

最後の「謝辞」では、ソールズベリーの名著「攻防900日」は現在でも、
レニングラード包囲戦について英語で書かれた最も素晴らしい本であり、
「いつもそばにいて助けてくれた」と、著者は感謝しています。
もう一冊、クルツィオ・マラパルテ著「壊れたヨーロッパ」のドイツ軍vsパルチザンにも触れ、
「本書の物語を構成する上で不可欠だった」と述べています。
後者はまったく知らない本ですが、amazonにありました。5000円超えですけど・・。

壊れたヨーロッパ.jpg

また、世の中には「Twitter文学賞」なるものがあるそうで、
本書が2010年にハヤカワ・ポケット・ミステリとして出た際に、
「ツイートで選ぶ2010年ホントに面白かった小説」の第3位になっているようです。
なるほど・・。確かに戦争小説ファンじゃなくても楽しめる一冊かもしれませんね。
ソ連を舞台にした小説、「チャイルド44」と、「グラーグ57」 も読んでみたくなりました。



















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