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戦う広告 -雑誌広告に見るアジア太平洋戦争- [日本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

若林 宣 著の「戦う広告」を読破しました。

この「独破戦線」では第三帝国を中心に、ソ連、英米などのプロパガンダ・ポスターも
たまにUPしていますが、基本的にああいうのが好きなんですね。
当時のスローガン、国ごとのデザイン・センス・・、見るべきところが豊富です。
今年3月、九段下の「昭和館」で見た、戦時中のポスターは印象的で、
先日、偶然に本書を発見し、早速、読んでみました。
本書は日本の雑誌広告に限定した2008年発刊、159ページ、B5サイズの一冊で、
1937年から1945年までの戦時中の広告を時系列で紹介しています。

戦う広告.jpg

第1章は「1937年~1941年(昭和12年~16年)」の広告で、
「日中戦争の勃発から総動員体制へ」といった章タイトルです。
5年間の年表と、近衛内閣の発足に盧溝橋事件などの政治と戦況、
また、1939年、軍用米確保のための「白米禁止令」、
そして配給制といった国民生活の概要が2ページで解説。

そして1ページあたり3枚程度の割合で広告が登場します。
友邦伊太利で作られた オリヂナル ボルサリノ帽子」が一発目ですね。
コレは「週刊朝日」の広告ですが、同じ号では
銀座のマロミ美粧院の「パァマネントウェブ」も印象的です。

ボルサリノ帽子.jpg

しかし「日本人なら贅沢は出来ない筈だ!」というスローガンが、
東京市内の目抜き通りに1500本も立てられると、
マロミ美粧院も「パーマネント」という言葉を言い換えた「淑髪」で対抗。。

マロミ.jpg

「防空壕」の広告もインパクトあります。
まだまだ昭和16年ですから、「平時は耐震・耐火の土蔵」ということです。
どんなモンなのか、一度、見てみたい・・。

防空壕.jpg

関西ペイントからは、「空襲恐るるに足らず!!」
凡ゆる建築物・造営物の迷彩と偽装に完璧を期せ」と
防空用塗料「仏陀青 ブターブルー」が発売中です。

佛陀青.jpg

クラウン万年筆の「ムッソリーニペン」も笑えます・・。
軍の航空のみならず、国策遂行の重要な手段として本土と植民地や占領地を
連絡していた民間航空も・・と説明がありますが、
そのような題材に便乗した「売らんかな」の姿勢だそうです。

ムッソリーニペン.jpg

第2章は1942年(昭和17年)、「太平洋戦争と緒戦の勝利」です。
松下無線のナショナル受信機。
戦況ニュースは良いラジオでハッキリと!
定価61円70銭ってのは、果たして高いのか、安いのか・・。

ナショナル.jpg

「慰問袋」関連の広告も多くなってきました。
「酷寒の北から、酷熱の南まで、どこの戦線でも文句なしに喜ばれて居るものは・・
慰問袋のサロメチールです」。

左ページでは三越も慰問袋を販売していますが、トンボ鉛筆も強烈です。
職場は戦場だ! 机上は陣地だ! 鉛筆は兵器だ!
ムリヤリ過ぎますなぁ。。

トンボ.jpg

わかもと本舗からは「必殺の照準視力 エーデー」。
戦場だけでなく、「必見の防空監視に健全な視力の緊要な時」ということです。
ちなみに関西弁の「え~で~」ではなく、ビタミンAとDの「エーデー」です。

エーデー.jpg

本書の真ん中にはカラーも使ったグラビアの特集が・・。
戦時下の映画では、「戦う軍楽隊」に「シンガポール総攻撃」、
「愛国の花」といった銃後の婦人の献身ぶりを強調したメロドラマなどがポスターで紹介されます。

映画.jpg

また、昭和17年からは郵便切手も教化や意識の高揚に一役買うことに。
図案が一般公募され、普通切手として発行。
「女子工員」、「旭日と三式戦闘機(飛燕)」、「少年航空兵」、「靖国神社」などなど・・。
基本的にはナチス・ドイツの切手と変わらないですねぇ。

1銭_女子工員 5銭_飛燕 15銭_少年航空兵 27銭 靖国神社.jpg

「総出陣、女子挺身の時」では、内閣情報局のプロパガンダ雑誌といわれる
写真週報」の写真も登場します。
「『写真週報』に見る戦時下の日本」という本も出ているので、かなり気になりますね。

写真週報 292号.jpg

第3章は「1943年(昭和18年) 悪化する戦局」です。
青果や鮮魚などの生鮮食料品の不足が続き、ガダルカナル島からの撤退、
そして「学徒出陣」・・というのがこの年です。

大日本飛行協会は「諸君の友達を射殺したアメリカの飛行機をたたき落とすために」。
陸海軍の少年飛行兵らの募集広告ですが、
警戒の目を盗んで飛びまわるあの憎い敵米英の、最後の一機を
大東亜の空からたたき落とした時、輝かしい勝利がくるのだ。
そのためには、よい飛行機と秀れた飛行士が必要だ。沢山必要だ。
英米が千機造れば日本でも千機造ろう。英米が千人持てば、日本でも千人の飛行士を持とう。
日本の運命がここで決せられるのだ。
今度卒業する諸君
諸君はもう日本を背負って立つ国民の一人だ。
諸君の魂と腕と力を、進んで御国のために捧げてもらいたい」。

大日本飛行協会.jpg

う~ん。。すでに「特攻」を想定してると思うのは気のせいでしょうか・・??

そんな重々しいのもあったかと思えば、相変わらずの商法も・・。
勝つために 先づ鼻病撃滅」。しかも「ミナト式」。

ミナト式.jpg

宝塚歌劇も、ズバリ「海軍」を雪組が公演しています。
「海軍省後援」というので本気度がわかりますが、戦時中はこのようなのが多く、
満州への慰問なども行っていたようですね。

昭和十九(1944)年3月の雪組公演.jpg

「着剣した鉛筆」は、またまたトンボ鉛筆です。
敵性語撃滅に率先着剣して敢然! 突撃をしたトンボ鉛筆!」。
攻撃的だなぁ。。だけど、意味不明・・。

着剣した鉛筆.jpg

出たっ! 「ヒロポン」!
戦後を舞台としたヤクザ映画でもいっぱい出てくるポン中のアレですね。
メタンフェタミンという強い中核神経興奮作用を持つ科学物質の商品名で、
覚醒(眠気覚まし)や疲労が無くなる感覚をもたらすことで、
勤労者を「ハイな気持ち」にさせ、生産効率を落とさずに、
長時間労働をさせようとした・・と、本書では詳しく書かれていました。

ヒロポン.jpg

西宮航空園の広告では、「アメリカの新標識」。
「憎むべきアメリカ空軍は、時々飛行機に描き入れたマークを改めて
不意打ちをかけようとしている。
各家庭でも配布されている、敵機記号を直しておくがよい。
アメリカでは最近青字に白星で、今迄の赤玉をつけていない」。

アメリカの新標識.jpg

じぇじぇっ! これは知らなかった!
確かに1942年までは「赤玉」付いてますなぁ。。

F4_Wildcat.Note that the red centers have been removed from the national insignia as of 15 May 1942 in order to avoid confusion with the Japanese red rising-sun markings..jpg

いよいよ最終章、「1944年~1945年(昭和19年~20年) 戦局の絶望化と敗戦」。
「コロムビア」改め、「ニッチクレコード」からの、「大航空の歌」。
仇敵米英を殲滅せん 一億必唱の大航空歌」。
思わずYouTubeで聞いてしまいました。「一億必唱」ってのが好き。。

大航空の歌.jpg

「これがB29だ!!!」とか、「B29 現る」なんて、なんの広告かと思いきや、
大阪模型とツバサヤ本店の広告でした。
頭に叩き込もう この正體!
防空の要訣は先づ敵機を識ることだ! 今! 直ぐ 敵機模型を作れ!」って、
昭和19年9月に正しい広告なんでしょうか・・??

B29.jpg

「ここに銀が要る!!」と、銀の供出呼びかける広告。
勝利の翼を送れ!敵を叩くのには飛行機だ!! 飛行機だ!!」と悲壮感が漂いますが、
「戦時女性」に載ったこの広告の主は「オバホルモン」です。

オバホルモン.jpg

昭和20年3月の「アサヒグラフ」の広告。
またもやB29を中心に「決死増産! 全機撃墜!」と謳ってますが、 
なんのこっちゃ「一家に一函 食栄素」です。
これはナニか申しますと、配給の醤油一升と水一升、そして本品を混ぜると
あら不思議・・即座に二升の美味しい醤油が出来る・・というものです。

食栄素.jpg

終戦間際の6月にもなると「特攻」の文字が目につきますね。
「一機一鑑!」とか、「生産特攻」、「国民総特攻!」。
もはや広告のコピーといった枠を超え、単なるスローガンと化したのでした。
「七生報国」は三島由紀夫のハチマキを彷彿とさせます。

一機一鑑.jpg

個人的にとても楽しみながら、勉強にもなりました。
嘘八百 -明治大正昭和変態広告大全-」はもっと笑える本でしたが、
本書は戦時中の広告が対象なだけに、茶化したものではありません。
小学館の発行だけあってか、戦争に詳しくない若い人向けのようにも思いました。
割愛しましたが「徴兵保険」など、知らないことがいくつもありましたし、
分厚い本を読んだり、プロパガンダ写真を見るよりも、
銃後の生活と、その変化の様子が違った視点で理解できますね。





タグ:切手 敵性語
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コメント 2

ジャルトミクソン

いつも楽しく拝見しております。

面白いですね。
神憑り的な壮烈風プロパガンダは見ていて痛々しくなるのですが、着剣鉛筆だとかB29模型だとかを見るとその緩さに驚かされます。
一枚岩でみなが戦争のことで一体感を持っていたということはなさそうですね。

この緩さはドイツやソ連にもあるんですかね。なさそうな気が。。。
アメリカにはありそうです。
不思議なマッチングです。
by ジャルトミクソン (2013-06-20 09:50) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。 ジャルトミクソンさん。
おっしゃるとおり戦争末期であっても、売らんかな・・の精神があるんですね。ただし、末期になればなるほど、特攻精神を前面に出した広告でなければダメだったようです。しかも物資不足で新聞、雑誌もページ数が激減し、従って広告の大きさも制限されるというパターン・・。

共産主義ではこんなのはNGですね。ドイツはどうでしょう? 確かにアメリカは。
考えてみると世界各国のプロパガンダ・ポスターって、まとまった本がありませんね。先日の「写真でみる女性と戦争」じゃないですけど、
「世界のプロパガンダ・ポスターにみる第2次世界大戦」
なんて本があれば絶対に買います。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-06-20 20:05) 

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