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愛は絶ちがたく -アイゼンハワーとの秘められた恋- [女性と戦争]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ケイ・サマーズビー・モーガン著の「愛は絶ちがたく」を読破しました。

本書の著者の名を見て「おっ!」と思われる方はどれくらいいらっしゃるんでしょうか?
以前に児島 襄 著の「第二次世界大戦 ヒトラーの戦い〈6〉」と
デイヴィッド・アーヴィング著の「将軍たちの戦い」で登場した彼女。
連合国遠征軍最高司令部(SHAEF)の長であるアイゼンハワー付き運転手から、
副官、そして「愛人」という女性であり、そんな経歴を持つ彼女が晩年に書いた回想録です。
しかし我ながら、よくこんな本を見つけるなぁ・・と、ちょっと自慢です。。
1977年発刊で344ページの表紙を見ても日本語なしで向こうの恋愛小説風ですしねぇ。
なので、週間△△の「アイゼンハワーの愛人が情事を赤裸々に告白!」というような、
下世話な感じで読んでみましょう。

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1939年9月、英首相チェンバレンが「ドイツと戦争状態に入った」と告げた翌日、
ゴードン・サマーズビーと離婚をして、モデルの仕事をしていたケイが、
ロンドンの自動車輸送部隊に入隊するところから話は始まります。
翌年のロンドン空襲では救急車を運転し、ドイツ軍の落下傘兵に対する恐怖から、
道路標示や道順標識が無くなったロンドンで運転を磨いたケイは、
やがて続々とやってくる米軍御用達の運転手に任命され、
無名のアイゼンハワー少将の運転手となります。

The force of a bomb blast in London piled these furniture vans atop one another in a street after a raid on December 5, 1940..jpg

当初は「おはようございます、閣下。」とドアを支える一介の運転手だったケイですが、
高級レストランへ案内しても「一緒にどうか?」と米国人特有のおおらかさを見せるアイク将軍。
喜ぶケイを尻目にドアマンは、運転手風情が立場もわきまえず、けしからん・・という態度です。
この時期、マーク・クラーク将軍も含め、3人でドライブなどで楽しみ、ロンドン爆撃の
恐ろしい思い出を興味深く聞いては、彼女に同情する将軍2人。
彼女は米士官ディック大尉と婚約しますが、すっかりアイクにも魅せられるのでした。

ksummersby.jpg

ハリー・ブッチャー海軍大尉、アーネスト・リー大佐、そして当番兵のミッキー軍曹という
3人から成るヨーロッパ戦域司令官アイクの側近チームのなかに徐々に溶け込んでいくケイ。
特にミッキーの将軍崇拝は大変なもので、アイクがパリッとした軍服で降りてくると、
フッとため息をついて「ゲーリー・クーパーよりカッコいいや」と呟くほど・・。

Gary Cooper in Sergeant York.jpg

途中では1908年にアイルランドで生まれ育った彼女の生い立ちも紹介しながら進みます。
また、ケイへプレゼントを兼ねて、黒いスコッティ犬「テレク」を司令官アイクが飼うことになると、
まるで2人にとっての子供のような関係が出来上がります。
昼食の席でアイクが自分の皿からテレクに食べさせてるのを見た英海軍のカニンガム提督は
「その犬は甘やかされてますぞ」と我慢できずに非難。

Eisenhower TELEK.jpg

やがて北アフリカ上陸の「トーチ作戦」の指揮のためにB-17でジブラルタルへと向かうアイク。
「ケイ、君は一緒に来たいか?」 ということで、遅れること1ヵ月後、
ストラトハーレン号に乗船するケイですが、地中海で魚雷攻撃を受け、船は沈没・・。
救命ボートに乗り移り、命からがら駆逐艦に収容されるのでした。

連合軍とアイクにとって重要なカサブランカ会談
ボスのなかのボスであり、密接に仕事をした一人であるにも関わらず、
一度も「アイク」とは呼ばずに「アイゼンハワー将軍」と呼ぶ、
魚のように冷血な人物として登場するのは、米参謀総長マーシャル将軍です。
まぁ、「君をジョージと呼びたい」とルーズヴェルト大統領に言われても、
ソレを断るという規律の鬼のような軍人ですからねぇ。。
そんなマーシャル将軍を部屋に案内し、ベッドの快適さを説明するアイクを尻目に
テレクはベッドの上に飛び乗ると、枕の上で片脚を上げて・・。

General George Marshall and General Dwight D. Eisenhower.jpg

彼女が全連合軍司令官のうちでたった一人嫌いな人物は、モントゴメリーです。
曰く「彼は尊大で、女性嫌いのやかまし屋で、閲兵台に私が立っていることが彼の機嫌を損ね、
しかも私は、それを面白がるほど意地が悪いときた」。
もちろん、モンティのアイクに対する嫌がらせや、逆にアイクのモンティ評も書かれていて
まさしく「将軍たちの戦い」ですね。

Eisenhower_Montgomery.jpg

シシリー上陸の「ハスキー作戦」に本腰を入れ始めた頃、別荘の部屋にケイを招き入れるアイク。
彼女の婚約者ディックが地雷で死んだことを苦しそうに告げます。
ショックを受け、泣きじゃくる彼女を優しくなだめ続けるアイク。
しかし、戦争のこの時期に知り合ったディックのことは実は何も知らず、
将軍に身も心も捧げていたことに気が付くのです。

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そして「ケイ、君は私にとって極めて特別な人なんだよ」と語るアイクと手を重ね、
「私はこの髪が薄くなり、眼鏡をかけ、歪んで疲れた顔の中年男を愛したのだ」と
無言で愛を告白する2人。
いよいよ・・と思ったのも束の間、鍵も掛かっていない朝の司令官のオフィスには、
すぐにリー大佐が飛び込んでくるのでした。。
それでも互いの愛を確認した2人はお昼に激しく爆発します。
「愛しているよ」と、飢え、求めるようなキスの雨。ケイも同じ激しさでそれに応じ、喘ぎますが、
朝のことを思い出して正気に返ります。アイクの顔のあちこちに付いた口紅を慌てて拭き取るケイ。

「もし事情が違っていたらなぁ」とアイクは溜息交じりに呟きます。
「ずっと前から愛していた。君の乗った船が撃沈されたという知らせが入った晩は、
地獄の苦しみを味わった」としわがれた声で語ります。
しかしこの愛は誰にも知られてはならない、禁断の愛なのでした。

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モンティを除いてアイクの一番厄介な相手・・、それは「猛烈将軍」パットンです。
アイクに勧められたパットンを乗せて、ケイの運転でロンドン・ツアーに出発した際の
パットンらしいエピソードなど、相変わらず話題が豊富で、ホント憎めない人ですね。

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その他、チャーチル首相からは大いに気に入られ、国王ジョージ6世にも紹介されるケイ。
ルーズヴェルト大統領が訪問してきた際には、「女には絶対に運転させない」という
頑固なシークレット・サービスと大喧嘩。。

Churchill and Ike's driver, British Officer Kay Summersby.JPG

夜中になってようやく帰ってきたロンドンの屋敷。
当番兵のミッキーに「もう休んでいい」と命令し、ケイと2人で酒を呑みながらくつろぐアイク。
遂に抱擁に身をゆだね、気が狂ったように求め合います。
しかし疲れ切った挙句、「ああ、ケイ、ごめんよ。私は君の役に立ちそうもない」。
何年間も愛の営みを考えずに仕事に没頭してきたアイクは、
「どうかして私の身体は機能を失ったんだ・・」と、背を向けて語るのでした。

General Eisenhower.jpg

いよいよ、人生を賭けた大一番、「オーヴァーロード作戦」の開始です。
死地へと向かう空挺部隊員たちに握手をし、言葉をかける司令官アイク。
こんなときに「愛」だの、「立つの立たない」のと考えている場合ではありません。

Eisenhower and 101st Airborne U.S. Paratroopers June 5th 1944.jpg

ウェスト・ポイントを6月に卒業したばかりの息子ジョンを連れて、
ワシントンでの休暇をケイに提案します。
初めて訪れた平和な米国。
しかし、救急車のサイレンを耳にしたケイは反射的に歩道に伏せて。。
周りの人々は「どうしたんです? ご病気ですか?」と助け起こしてくれますが、
「そうね。これが爆弾が落ちた時に命が助かるひとつの方法よ」と塵を払いながら答えるのでした。

Kay_Summersby.jpg

パリを開放し、ルントシュテットが急いで立ち去った小奇麗な邸宅に住むことになったアイク。
ケイも戻ってきますが、正式に婦人部隊に編入され、中尉に任命されます。
もはや運転手ではありませんが、女性として初めての元帥付き補佐官として、
どこまでも一緒の生活。

こうしてルーズヴェルト、ヒトラーが死に、ドイツ軍も降伏。
ヨードルとフリーデブルクが降伏文書に署名をし、彼らが部屋から出ていくと、
大勢のカメラマンが押し掛けるなか、「ではシャンパンで乾杯といくか」。

Kay Summersby.jpg

お祝い行事が毎日にように続き、ヒーローとなったアイクは劇場にもケイを同伴します。
それでも次の勤務地がワシントンで参謀総長・・ということになると、
米国民ではないケイの居場所はペンタゴンにはありません。
米国市民権の獲得のために奔走し、その未来を夢見て、再び、愛を交わす2人。
しかし、この最後の機会も、「駄目だ・・」。
・・まぁ、ヴィトゲンシュタインも、正直この数年のこと思うと、他人事と笑ってられません。。

Dwight D. Eisenhower and Kay Summersby.JPG

1945年11月、先にワシントンへと帰っていたアイク。
彼の個人的職員たちにもワシントンへの出発命令が届きます。
しかし、そこには「サマーズビー中尉」の名は無いのでした。

「将軍アイク」というTVシリーズが1978年に製作されているようで、
日本では3本セットのビデオのみなんとか売っていますが、
このドラマで描かれているケイとの私生活シーンは本書がベースになっているようです。
また、アイクを演じるは、我らがロバート・デュヴァル。。
もともと「ゴッドファーザー」のときから好きで、「鷲は舞いおりた」のラードル中佐は最高でしたし、
そして同じTVドラマでは「スターリン」も演じています。
アイゼンハワーとスターリンの両方を演じれる役者さん・・さすがですね。

Ike The War Years (TV mini-series 1979).jpg

当初、想像していたより遥かに面白かったですねぇ。
ここまでの恋愛モノを読むのは、もう10年以上振りでしたし、
もともと好きじゃなかった「アイク」も本書では「可愛い親父」風ですから・・。

実は「プロローグ」でケイが本書を書き上げた経緯が語られています。
戦後、連合軍の将軍たちの回想録ラッシュのなか、ケイもまた、
「アイゼンハワーはわたしのボスだった」を1948年に発表しますが、
アイクとの親密さは誤魔化した一冊で、私生活にも触れられていなかったものの、
それから25年も過ぎた1973年に「トルーマン元大統領の口述伝記」が発表され、
そこに「アイクはマーシャル参謀総長に手紙を送り、アメリカに帰ってこの英国女と結婚するため、
夫人と離婚したいと伝えたのだ。マーシャルは返事を書き、
そんなことをすれば君を軍から放逐する・」・。といった経緯が書かれていて、
一躍、注目を浴びたケイは全米のマスコミから追われることになります。

Eisenhower Was My Boss by Kay Summersby.jpg

しかし、そのとき彼女は余命6ヶ月の宣告を受けて入院中。。
すでに4年前にはアイクもこの世を去っており、彼女は人生の締めくくりに
余命を1年以上も伸ばしながら、最後に真実を語るために本書を書き上げました。

Summersby_tv.JPG

そしてアイクが彼女を裏切って去っていったのか・・? については、
男目線から考えると、「そのとおり」であった気もします。
本当に彼女を愛していたかも知れませんが、戦争の英雄であり、
この後、大統領にもなる野心家ですから、そちらを選んだとも思えますし、
または、「不能者」であることを気にして、ケイを幸せに出来ないと考えたのかも知れません。

最近もアフガニスタン駐留米軍司令官だったCIAのペトレイアス長官の
不倫スキャンダルが世間を賑わせていますが、
こういう「陣中妻」のような文化は、ず~と続いているのかも知れませんね。

paula-broadwell-general-david-petraeus-affair.jpg

いずれにせよ、アイクのケイに対する想いは想像するしかありませんが、
男女双方に読んでもらい、意見を聞いてみたくなる一冊でした。
でも、本書は結構なレア本のようなので、そういうわけにもいきませんか・・。





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リント

ヴィトゲンシュタインさんこんにちは!

今回はまた変わった毛色の本を読破されましたねぇ、でも「ヒューマンドラマ」的で面白そう!

記事を読んでいて何となくヒトラーの秘書であったユンゲさんを連想してしまいました。
きっとこの人(ケイさん)ならヒトラーにも気に入られたんじゃないでしょうか?(もちろん恋愛関係にはならないでしょうけど…)
もうね、「尊大なモントゴメリー」なんかほっとけばいいんですよ。

ところで、ロバート・デュバル、イイですね~!
アプヴェールのラ―ドル中佐(確かに最高!)からアイク将軍、果てはヨシフおじさんまで!?(これは知りませんでした) いずれにしても演技の幅、広過ぎです!

因みにヴィトゲンシュタインさんはお気づきと思いますが、ワタクシ「鷲は舞い降りた」にはかなり影響を受けております。
原作小説と映画のどちらも素晴らしかった、こんな小説が書ければなぁ…(←遠い目)

アレス・イスト・フェアリュクト…

by リント (2012-11-21 20:36) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。リントさん。
確かに、独破戦線初めて??の恋愛モノの一冊でした。。
個人的には、「尊大なモントゴメリー」を含めたお偉方に対する女性目線の話が面白かったですねぇ。まぁ、モンティも奥さんを若くして亡くしているし、同情の余地はあるんですね。。

ボクは恥ずかしながらラ―ドル中佐の1/6フィギア持ってます・・。
もちろんシュタイナ中佐もコンビとして・・。
あとは同じシュタイナとして「戦争のはらわた」シュタイナー軍曹、「バルジ大作戦」のヘスラー大佐ってなトコです。みんな大好きな名優ですね。

>ワタクシ「鷲は舞い降りた」にはかなり影響を受けております。
もちろん、あのフレーズ一発でわかりましたよ。なんてったって、一番好きな戦争小説ですから・・。
>アレス・イスト・フェアリュクト…
ご依頼のミッションは完了しました。あとは報告書を提出するのみです。しばしお待ちくださいね。
by ヴィトゲンシュタイン (2012-11-21 21:56) 

さねゆき

このTVドラマ見ました! NHKだったかな、、
実に面白かったです。

改名してブログを刷新しました「りかの配偶者」あらため「さねゆき」です。

by さねゆき (2012-11-23 21:58) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。「りかの配偶者」あらため「さねゆき」さん。
急にエラーになっていたので心配していましたが、ご無事でホッとしました。。
TVドラマご覧になりましたか。さすがに「立つの立たないの」ってのはカットでしょうかねぇ??
by ヴィトゲンシュタイン (2012-11-24 09:20) 

さねゆき

>「立つの立たないの」

それは記憶にないです。
NHKだったと思いますので、NHKがカットしたかも?

ご心配おかけしてすみませんでした。
by さねゆき (2012-11-25 21:13) 

ヴィトゲンシュタイン

>NHKがカットしたかも?
良く考えてみれば、もともと脚本には無さそうですね。。
失礼しました。

by ヴィトゲンシュタイン (2012-11-26 20:08) 

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