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女ユダたち ドイツナチ時代の密告10の実話 [女性と戦争]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヘルガ・シューベルト著の「女ユダたち」を読破しました。

独破戦線の「女性と戦争」というカテゴリーでは女性は被害者の場合が多いですが、
密告者ステラ」というゲシュタポに協力したユダヤ人女性の本も以前に紹介しています。
本書もそのステラのような女性たちが10人登場・・ですが、
特に残酷な女性を知りたいという思いがあるわけではなく、
ゲシュタポが市民を監視する第三帝国の世界に生き、
近所の知り合いに肉親や先生など、単純に嫌いというだけの人間を密告することで、
その内容がウソであっても収容所送りに出来たり、斬首刑にも出来たり・・。
「憎い相手」を合法的に葬れる世界で当然、普通に起こったであろうことを知りたいんですね。

女ユダたち.jpg

最初の密告は「カール・ゲルデラー」です。
反ナチでライプツィヒ市長を務めたゲルデラーは、1944年7月のヒトラー暗殺が首尾よく終われば、
首相である国家元首に予定されていた人物です。
シュタウフェンベルク大佐らがさっさと銃殺されたあとも、逃亡を続け、指名手配書には
「情報提供者には100万ライヒスマルクと、ヒトラー総統の握手」が約束してあります。

Carl Goerdeler, zum Tode verurteilt und hingerichtet.jpg

彼を偶然発見し、通報したのは42歳のタイピスト、ヘレーネです。
20年前に近所に住む顔見知りだったゲルデラーの顔を見分けたことで百万長者に・・。
総統本営でヒトラーから直々に小切手を与えられたそうです。
逮捕されたゲルデラーは1945年2月に処刑されますが、密告者ヘレーナもナチスが敗北すると、
まるでニュルンベルク裁判のような「人道に対する罪」で15年の懲役刑を受けることに・・。

Helene Schwärzel.jpg

著者は東ドイツに住む小説家として、本書の執筆に先立って東ドイツの中央公文書館を訪れ、
「女の密告によって死刑判決を下された、国民裁判記録を読みたい」旨を申請し、
係官との面接を経て、ようやく許可が下ります。
また、特別な許可で西ドイツへの出入国カードも手にし、証明書など不要なその国の
西ベルリン図書館で、戦後、西ドイツ裁判所が下したナチ時代の殺人に対する判決集も発見。
このような調査経緯から、本書ではナチス時代の密告と裁判、
そして戦後の密告者に対する裁判、という2本立てで進むことになるのです。

Helga Schubert_Judasfrauen.jpg

1943年、汽車のなかで見知らぬ婦人たちと世間話をはじめ、ナチス体制を批判した男・・。
44歳のその商人の夫人は、たまたま隣組班長をしている植木屋の妻にこの件を話すと、
この見ず知らずの植木屋の妻がこの男を密告してしまいます。
戦後の裁判でこの植木屋の妻は、もし商人の夫人が婦人部長にこの件を話し、
班長さんもご存知ですね・・となったら、報告しなかったことで大変厄介なことになっていた・・
と弁明します。

gestapo_verhaftung_schupo.jpg

いつまで経っても結婚してくれない<男F>の目を覚まさせるため、
外国人労働者との良い関係をわざと話した27歳の女。
この犯罪行為に<男F>は女を告発します。
復讐に燃える女はゲシュタポの手先となって、シュナップスをくれなかった若い男や、
ドライブの時、冷淡に扱った男、国防軍報道のラジオを聞いて「くだらん」と言った男、
V兵器は結局、こけおどしさ」と語った男どもを尽く密告・・。
そして外国放送を聞いていたと嘘のでっちあげで<男F>も遂に逮捕・・。
しかし、あまりに話が信憑性に欠ける・・として裁判は延期になります。
あ~、でもこういう女は恐いですねぇ。。

夫がヒトラー・ユーゲント分団長であることを知らずに、妊婦の奥さんにちょっとマズイこと喋った医師。
「あいつは豚よ。人間のクズよ」と妊婦は早速、BdMの婦人指導者に報告します。
国民裁判で、検事側の求刑は10年というもの。
面白かったのはナチスの検事たちっていうのは、調査して、証拠集めして・・と
思った以上にちゃんとやっているところですね。証拠が弱ければそれなりの求刑に・・。
しかしフライスラー裁判長は、ヌルい!とばかりに求刑を却下し、「死刑」を宣告・・。

Roland Freisler_Präsident des Volksgerichtshofs.jpg

この在職中に4951名に死刑を宣告したフライスラー裁判長によって、
ヒトラー暗殺未遂事件に関係した多くが絞首刑になったのは知られていますが、
映画「白バラの祈り」のラストでゾフィー・ショルがあっという間に
ギロチンで「斬首刑」になったのを思い出しました。
ギロチンって聞くと、なにか残酷な気がしますが、死ぬまで時間のかかる絞首刑より、
人道的な処刑方法なのかも知れません。

sophiescholl-originalfallbeil.jpg

しかし首を切り落とされた人間がいつ死ぬのか・・?
頭と身体が離れても、脳に酸素が残っている数秒間は意識があるのでは??
という解説をしている本を昔読んだのも思い出しました。
斬首刑大国フランスでは、ソレを確認するため、落とした頭を拾って殴ったり、
耳元で大声を出したりすると、怒ったような顔や、ビックリしたような顔になった・・
なんて話だったですね。

もう5年以上前に買ったものの怖くて本棚の奥に入れっぱなしだった、
「図説 死刑全書」を開くときがやってきたようですね。
ただし、コレは読んでも第三帝国に関する死刑の話がない限りは
「独破戦線」では紹介しませんのであしからず。。

図説 死刑全書.jpg

38歳のヒルデの旦那ミヒャエルは兵士として出兵。しかしポーランド女性と特別な関係に・・。
それに気づき、生活が荒れ始めたヒルデは、兵隊たちを自宅に連れ込んでは、飲み食いさせて、
一緒に寝たりと小さな町では「ふしだらな態度」が有名になります。
「ミヒャエルがスターリングラードに行けば良かったのに・・」と語り、
7月20日がうまくいっていれば戦争は終わった」という夫からの手紙を
管轄の突撃隊支部長のところへ持って行って報告までしてしまいます。

hese are pitiful remains of the Wehrmacht in Stalingrad.jpg

ところが支部長は手紙を読まずに「あんたのご主人の首が飛ぶよ」と諌めます。
しつこくやってくるヒルデに居留守を使う支部長ですが、遂に管区指導者が知ることとなり、
1945年2月、ミヒャエルは逮捕。
旦那を厄介払いしたいだけの唯一の証人であるヒルデの態度に、軍法会議の裁判長も
「最低の女だな!」。
証拠不十分で有罪にはならず、前線送還と宣告されると激昂するヒルデの宣誓の前に
死刑判決を下さざるを得なくなります。そして、せせら笑いを浮かべるヒルデ。。

1991年発刊で221ページの本書、原著の発刊はベルリンの壁崩壊直後です。
本書の執筆中は東ドイツ公安警察シュタージのスパイ網と密告が続いていた時代。
序文では、「彼女たちも独裁政治の犠牲者であり、民主政治下では他人を死に追いやることは
無かったでしょう。彼女たちは密告の誘惑に負けたのだ」としています。

NS-Frauen-Warte.jpg

そしてスパイと密告者の違い・・。
スパイは計画的で、人を注意深く観察し、通報するのが仕事。
しかし密告者は知っていたことを役人に聞かれたから答える。
或いは、由々しきこと偶然に知ってしまい、黙っていて報告しなかったことを責められるのを恐れ、
我が身可愛さに通報してしまう。。
本書では女性の密告者だけを取り上げていますが、
やっぱり愛憎に起因する女性の執念・・というのが印象に残りましたね。コワい、コワい。。







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コメント 2

IZM

密告とその後の展開は中世の魔女裁判的な感じですかね。。。
本の書かれた時代背景も面白いですね。

>首を切り落とされた人間がいつ死ぬのか
これ、ドイツの伝説にクラウス シュトルテベッカー Klaus Störtebekerという有名な海賊がいて、ドイツ版ロビンフッドというか、ねずみ小僧?なんですがその人がとうとう捕まって、首をはねられるんですが「もし首をはねられた後に、並んだ手下の前を歩く事が出来たらその手下を無罪にしてやる」といわれ、首をはねられた後に11人の手下の前まで歩いて命を救ったという話が残っていまして、それをきいた時はやっぱり心というのは脳にあるんじゃなくて体とか細胞の隅々まで宿ってるんだなあ。。。と感動したことがあります。

by IZM (2012-07-19 19:26) 

ヴィトゲンシュタイン

>首をはねられた後に11人の手下の前まで歩いて命を救ったという話
へ~、この話は面白いですねぇ。ドイツの怪談の番外編で4コマ漫画で描いてほしいなぁ。。怖いか笑っちゃうかとっちかですね。。

で、針が指に突き刺さった写真すら見れなかったビビり~なヴィトゲンシュタインですが、「図説 死刑全書」読みまして、ここにも「首を切り落とされた人間がいつ死ぬのか??」が詳しく書かれていました。
そして案の定、「ナチス・ドイツは・・」というフレーズ連発してましたので、しょうがないからレビュー書いてます。だいたい「ガス室」って章があるんですから、こりゃダメですね。
by ヴィトゲンシュタイン (2012-07-19 20:40) 

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