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蟹の横歩き -ヴィルヘルム・グストロフ号事件- [戦争小説]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ギュンター・グラス著の「蟹の横歩き」を読破しました。

11月の「武装親衛隊とジェノサイド」でも書かれていたギュンター・グラス・・。
1999年にノーベル文学賞を受賞した著名なドイツ人作家が戦時中、武装SS隊員だったと告白し、
大バッシングを浴びた・・ということですが、彼の本は読んだことがありませんでした。
今回、初挑戦ということで、「バルト海の死闘」でも知っている
ヴィルヘルム・グストロフ号事件が描かれた本書を選んでみました。

蟹の横歩き.jpg

ギュンター・グラスとして知っているのは「ブリキの太鼓」の映画くらいのもの・・。
子供の頃、映画館やTVの予告編・・オスカル少年が「ア~~!」「テケテケ」「パリ~ン!」
というヤツですが、さすがに当時は観に行くこともなく、大人になってからTVで一度だけ観ました。
それでも、なんとも不思議な映画で、良く理解できなかったですね。
グラスは1927年、ポーランドのダンツィヒ生まれ。
そんなことから「ブリキの太鼓」も含め、ダンツィヒなどを舞台とした小説を多く書いているようです。

Günter Grass_Die Blechtrommel.jpg

本書の一風変わったタイトルもそうですが、内容についてまったく予備知識なしで挑みましたが、
一言で書くと、過去の「ヴィルヘルム・グストロフ号事件」の実話を掘り起こしながら、
現代のネオナチ問題を問いかけるというもので、
ノンフィクションとフィクションが半々に入り混じった2003年の小説です。

主人公の"わたし"は、うだつの上がらぬ記者・・。
生まれは1945年1月30日、ヴィルヘルム・グストロフ号が沈没し、
救助された母親がその場で産み落とした人物です。
あるとき、ドイツではタブー視されていたヴィルヘルム・グストロフ号の件が書かれた
インターネット・サイト「www.殉教者 de」を発見します。

gustloff.jpg

こうして、ヴィルヘルム・グストロフ号とはなにか?
そもそも船名の名前になっているヴィルヘルム・グストロフとは何者か?
ということが語られていきます。

ヴィルヘルム・グストロフはスイスにおけるナチスの地区指導者でしたが、
1936年、クロアチア出身のユダヤ人、ダヴィド・フランクフルターに自宅で暗殺されます。
この事件はもちろんナチ党にとっては大きなもので、
グストロフの葬儀にはヒトラー以下、党の幹部が出席する盛大なものとなり、
当初、「アドルフ・ヒトラー号」の名が予定されていた新造客船にも
彼の名が付けられることになります。

wilhelm_gustloff.jpg

一方、下手人のダヴィド・フランクフルターはスイスで裁判にかけられますが、
中立を守るスイスによって、懲役18年の刑で済むことに・・。

Der Attentäter David Frankfurter während seinem Prozess 1936.jpg

このようにしてドイツ労働戦線全国指導者ロベルト・ライのもと、
歓喜力行団(KdF)の旗艦ともいえる客船「ヴィルヘルム・グストロフ号」は
一般勤労者に等級のない客室で、安価な地中海クルーズやノルウェークルーズを提供。

gustloff maiden voyage to Madeira2.jpg

ヴィルヘルム・グストロフ号に姉妹船があって、
それが「ロベルト・ライ号」っていうのもひどい話ですね。
初めて知りましたが、自分の名前をつけるっていうのは、まったく図々しい・・。

KdF-Schiff Robert Ley, Empfang von Bulgaren.jpg

やがて戦争が勃発すると、この客船は病院船に就役。さらにバルト海のゴーテンハーフェンで
潜水艦訓練部隊の兵営として繋留されることになります。
そして1945年1月30日、ソ連軍から逃げ惑う1万人とも云われる避難民を乗せて出航・・。
マリネスコ艦長のソ連潜水艦S-13により魚雷攻撃を受けてしまうわけですが、
この呑兵衛で不運なマリネスコ艦長についても、本書は平行して語り、
沈没するヴィルヘルム・グストロフ号の阿鼻叫喚の世界も同様ですが、このあたりは
「バルト海の死闘」とさほど変わりはありません。

Marinesko.jpg

ネオナチ・サイト「www.殉教者 de」では、管理人のヴィルヘルムに対抗するユダヤ人、
ダヴィドがチャット(本書ではチャート)に登場し、スポーツのような激戦を繰り広げ出します。
そして主人公の"わたし"は、このヴィルヘルムが15歳の息子のコニーであることに気づくのでした。

インターネットの世界から抜け出して、直接対面することとなったヴィルヘルムとダヴィド・・。
ここから突然、思いもよらぬ展開へとなっています。

KdF_1939-08-04_47th_Norwegenreise.jpg

正直言うと、後半の「うわっ」となるシーンまで、フィクション部分はなんだろな~という感じで
読んでいました。ちょっと難しく考えすぎていたのかも知れませんが・・。
そして最後まで読み終えて、もう一度、最初から256ページの本書を読んでみました。
現代と過去を行き来し、そしてノンフィクションとフィクションが入れ混じった小説ですから、
ある程度の予備知識がないと、ちょっと難しいかも知れませんね。
ただし、全体が理解できると(ヴィトゲンシュタインは2回目でしたが・・)
凄い構成の本だな~・・という感想になっていきます。

また、ヴィルヘルム・グストロフ号事件が詳しく書かれた「バルト海の死闘」は
日本では1984年に出版されていますが、ひょっとしたらドイツでは
翻訳されていないのかも知れませんね。
グラスが武装SS(第10SS装甲師団 フルンツベルクの戦車砲手らしいですが)にいたことを
告白した「玉ねぎの皮をむきながら」も今度、読んでみようと思います。

そういえば、映画「スターリングラード」のヨゼフ・フィルスマイアーが監督した
「シップ・オブ・ノーリターン ~グストロフ号の悲劇~ 」もまだ観てませんでしたが、
イタリアの豪華客船「コスタ・コンコルディア号」が座礁、転覆のニュースが
ちょうど報道されています。
そして、とっとと逃げたとされる船長・・。う~ん、やっぱりイタリア人?

costa-concordia-night_The ship's captain gets into a police car.jpg









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