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ナチスドイツの映像戦略 -ドイツ週間ニュース 1939‐1945- [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

三貴 雅智 著の「ナチスドイツの映像戦略」を読破しました。

15年前に発刊された本書。ちょっと仰々しいタイトルなので敬遠していましたが、
副題の「ドイツ週間ニュース」、さらには帯に書かれている「ガイドブック」の文字が
本書の内容を表しているものでした。
15巻ほど??ビデオ化され、後に一部はDVD化もされている「ドイツ週間ニュース」。
1巻も持ってはいないものの、YouTubeなどではいくつか見ていて興味がありましたので、
DVDを購入する手引きとして、古書を500円で手に入れてみました。

ナチスドイツの映像戦略.jpg

「はじめに」では、この「ドイツ週間ニュース」とは如何なるものかと、
「宣伝中隊」について簡単に解説しています。
国内での啓蒙用に映画館などで定期的に上映されていた戦場ニュース「Wochenschau」。
そしてこの素材となる映像を前線で撮影したゲッベルス主導による
宣伝中隊「Propaganda Kompanie」、通称、「PK」ですが、
(ペナルティ・キックと間違えてはいけないので、ちゃんと「ペーカー」と記されています)
彼らはもともと純粋なアナウンサーやカメラマンであり、軍事訓練を受けたうえで
戦う報道員として配属され、その数は延べ、陸軍で40個、海空に各10個中隊もあったそうです。
また、武装SSは有名なクルト・エッガース連隊がPKマンとして活躍しました。

Propaganda Kompanie.jpg

本文は「MGビデオ ドイツ週間ニュース」を1939年から順に紹介していくわけですが、
ビデオ自体が時系列で発売されておらず、最初に紹介されるポーランド戦が「第6巻」にあたります。
実際のニュースの内容に触れる前には、著者による当時の戦況が解説され、
その後、ニュースのポイントや兵器など映像についてコメントするといった展開で進みます。
ページの下部は注意書きと映像の一部が小さいながらも掲載され、キャプション付き。
自由都市ダンツィヒでのSSダンツィヒ郷土防衛部隊が旧式装甲車で郵便局を襲うシーンも
「降伏しないポーランド兵に業を煮やしたSS部隊は、ホースでガソリンを撒いて放火するという
ゴロツキまがいの戦法で決着をつけた」という書きっぷりです。

danzig 1939.jpg

次は第4巻の西方フランス戦です。
ドイツ週間ニュースは時折、映像とナレーションの不一致・・というか間違いがあるようで、
コレは「捏造」ではなく、編集者が単に兵器に明るくないという理由のようです。
その一例として炎上した戦車が映し出されるシーンでナレーター氏は「フランス戦車」と言うものの、
著者によると「間違えようのないドイツⅢ号戦車である」

Die Deutsche Wochenschau.jpg

第7巻のハリコフの戦いに続き、第10巻の栄光の戦場スターリングラードでまず紹介されるのは
ハイドリヒ暗殺事件」です。
プラハの広場に集まった6万人を超える大観衆が映り、その後、遺体がプラハ城に安置され、
SSの衛兵に囲まれたベルリンへの護送風景と続いていきます。
これは1巻50分程度のドイツ週間ニュースはタイトルの戦役だけが収められているものではなく、
同時期のいくつか戦役やニュースの詰め合わせになっているようですね。

Heydrich’s funeral.jpg

この巻には「セヴァストポリ要塞攻略」のニュースも含まれています。
マンシュタインに加え、カール自走臼砲列車砲ドーラの活躍も映っているようですね。
メインはスターリングラード戦のようですが、この戦役全般の話が書かれていて、
どの時期のどのようなシーンが映っているのかは不明でした。
もう少し、ニュース部分の記述が明確にしてあると良いんですけどねぇ。

The monster 807 mm German gun called 'Dora' in action in Russia.jpg

続く第11巻はアフリカ軍団です。
「北アフリカのドイツ兵士」というタイトルの教育映画が収められているようで、
これはアフリカに派遣される前の将兵に知識を与えるものだそうです。
また、88㎜高射砲によって散々な目に遭わされた英国戦車兵の
「高射砲で戦車を撃つとは卑怯だ」という負け犬の遠吠えに、
「高射砲でしか撃破できない戦車で来るほうが卑怯だ」
とドイツ兵が語った逸話が紹介されています。

88-mm-flak-18-flak-36-north-africa.jpg

そして地中海で空母アーク・ロイヤルと戦艦バーラムを撃沈したUボート・エースの2人、
U-81のグッゲンベルガーとU-331のティーゼンハウゼンが登場し、
アオスタ公からイタリア勇者勲章を授与されるシーンも・・。
さらにはこの北アフリカで忘れてはならない人物。「アフリカの星」こと、マルセイユ
乗機から降り立ち、やや緊張した面持ちで空戦技術を身振り手振りで語るそうです。

Hans-Joachim Marseille.jpg

このビデオシリーズでは第○巻ではなく、独立したものも出ています。
「緑の悪魔 1939~1943」はそのうちのひとつで、これはもちろん降下猟兵ですね。
本書では、その訓練映画を紹介し、勇気と恐怖を克服するタフネスが必要であり、
空挺部隊員は国籍を問わず猛烈に戦った・・として、マーケット・ガーデン作戦などの
英米の空挺部隊も取り上げ、精鋭を自負する彼らは「俺も空挺、お前も空挺」という
独特の連帯感情のもと、同じ国の陸海空軍がいがみ合うのが当たり前のなか、
空挺部隊員には国籍を超えた戦友感情が存在していたと評価します。
ヴィトゲンシュタインも空挺部隊は国籍を問わず大好きなので、コレはわかりますね。

Kreta, Soldatengräber.jpg

第8巻「激闘の戦線 1943」では、スターリングラードで敗北したドイツ軍が3月、
第3次ハリコフ争奪戦で戦う様子が収められています。
パウル・ハウサーの第2SS装甲軍団に、進むティーガー戦車の姿・・。
ライプシュタンダルテの連隊長、フリッツ・ヴィットSS大佐も画面に登場します。

Fritz_Witt.jpg

続くクルスク大戦車戦は何が映っているのか、良くわかりませんが、
スターリングラードで全滅した第60自動車化歩兵師団が再編され、
ダンツィヒで行われた「フェルトヘルンハレ装甲擲弾兵師団」命名式典の様子・・
というのに惹かれます。

「緑の悪魔」と同様、単巻モノの「対戦車戦」は、予備役訓練局が製作したそうで、
本物のT-34戦車を使用したストーリー仕立ての教育映画です。
震え上がって逃げ出そうとする2等兵に、「臆病者は死ぬだけだ!」と老練の下士官が諌めます。
その後はめでたく撃退するわけですが、そのシーンは、あのサム・ペキンパーの名作映画
戦争のはらわた」にも影響を与えたほど、ソックリだということです。
ふ~ん。比較して観たいですねぇ。
他にも柏葉章の中尉がKV-1戦車に立ち向かい、その腕には数枚の「戦車撃破章」が・・。

the holders of the tank destruction badge.jpg

これは教育映画ですから、T-34を発見した際、「転輪5個、傾斜装甲」と声にして伝え、
「砲塔に識別の白十字なし」と味方の鹵獲戦車でないことをダメ押しするなど、
細かいやりとりが結構、面白そうですね。

Charkow, SS-Division Das Reich_T-34  1943.jpg

さらに「工兵、前へ」というタイトルの教育映画も収められていて、
橋を架けたり、トーチカを爆破したり、地雷を撤去したりと、最前線で活躍する
「戦闘工兵」の危険な仕事を詳しく解説しています。
特にゼリー状の可燃物に点火して圧縮ガスで飛ばすという火炎放射器は、
摂氏800℃の高温で燃焼する恐ろしいもので、間違って付着したら最後です。
このような教育映画で「狙撃兵」というのも出ているんですが、本書は無視。残念。。

Flammenwerfer.jpg

1944年からは、複数の巻に収められているニュースを紹介していきます。
これはもう大攻勢もなく、戦局は悪化しているため、各地での戦いの模様を少しずつ
ニュースで伝える展開のようですね。
西側連合軍の上陸に備え、B軍集団司令官に任命されたロンメル
西方の壁と宣伝された砲台やトーチカを視察・・。
しかし映像は点在する施設を繋げて、さも強力なように見せているということです。

Rommel_bei_Inspektion_des_Atlantikwalls.jpg

チェルカッシィで包囲された友軍を救うべく、出動するベーケ重戦車連隊にもPKマンは同行。
戦死した"パンツァー"・シュルツ将軍葬儀式典の光景。マンシュタインが花輪を捧げます。
「フェルトヘルンハレ師団」がUボート基地を訪問し、大エースのリュートを出迎える様子。

Generalmajor Dr. med. dent. Franz BÄKE.jpg

モンテ・カッシーノから降下猟兵も撤退。ナレーター氏は珍しく「第1降下猟兵連隊」の
特定名を挙げて、その健闘を称え、「この撤退は命令によるものであり、
決して戦闘に敗北したわけではない」と強調します。

Monte_Cassino  Fallschirmjaeger.jpg

フランスではレジスタンス容疑者を尋問する「ミリス」も登場し、
ポーランドでは「ワルシャワ蜂起」を鎮圧する寄せ集めのドイツ軍部隊も。
マーケット・ガーデン作戦も物資コンテナから英国製のタバコを美味そうに燻らせるドイツ兵。
また、ヒーローを称えて盛り上げるためか、騎士十字章受賞者がニュースに多く登場し、
宝剣が追加される22歳の史上最高のパイロット、エーリッヒ・ハルトマンに、
伝説のタンクキラー、ヴィットマンいざ出撃の姿・・。

wittmann_1944.jpg

ヒトラー・ユーゲントの少年たちが防空戦闘に駆り出され、訓練を受ける様子。
さらには女性も補助部隊に、老人も国民突撃隊に・・。
バルジの戦いではPKマンが、あのパイパー戦闘団に随行。
ひょっとしたら、映画「バルジ大作戦」の元ネタシーンがあるかも知れません。
翌年のバラトン湖の戦いでも敗北を喫したドイツ装甲部隊。
「ロシア人民最大の敵」ルーデル大佐も片足を失って入院中・・。

Training on a 'Würzburg D' radar_flak.jpg

ドイツ軍が奪還した村々に入ったカメラは、レイプと虐殺、略奪のあとを写します。
このようなニュースもソ連の進軍に脅える国民に見せていたようですね。
ベルリンの最後まで本書では語られますが、いつまでニュースになっていたのかは
良くわからないまま終わってしまいました。
前線の歩兵並みの死傷者を出したという、「PKマン」ですから、
フィルムと命のある限り、ニュースにはならずとも撮影を続けたのかも知れませんね。

PK Mann_Russia July 1941.jpg

全体的にドイツ軍の兵器が好きな著者が、それらを称賛したり、嬉々として書いていては
調子が悪いので、とりあえず映像の捏造部分やナレーションに異議を唱えたりして
タイトルと帯に書かれているような「映像が歪めた真実」という、
単なるガイドブックではないんだよ的な本に仕上げたという印象を持ちました。
しかし最後に「あとがき」を読むと、もともとは字幕の情報を補う、兵器解説を主体とする
「MGビデオ・ガイドブック」としてまとめるつもりが、映像とナレーションに
真実が隠されていることに気づき、本書のような形になったそうです。

決して悪い本ではありませんが、「ガイドブック」と「プロパガンダの検証」の
切り分けをもう少し、巧くして欲しかったですね。
でもこれを参考に買ってみようかと思いますが、半分くらいしかDVD化されてません。
とりあえず、「ドイツ・アフリカ軍団」と「対戦車戦」、「緑の悪魔」あたりかな?











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