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武装親衛隊とジェノサイド -暴力装置のメタモルフォーゼ- [武装SS]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

芝 健介 著の「武装親衛隊とジェノサイド」を読破しました。

久しぶりに「武装SS」モノを読みたいなぁ~・・と、amazonで探していると
3年ほど前に刊行された本書のレビューがあまりに切ないので、
どうしようか・・と悩みつつも、買うのは控えてとりあえず図書館で借りてみました。
なんといっても、このタイトルで表紙の写真が「国防軍兵士」であるのはイタイですが、
(1934年、ヒンデンブルク大統領に最後の挨拶をする国防軍兵士のようです)
これは著者のミスとは言えない気もします・・。
しかし内容についてもあそこまでケチョンケチョンに書かれていると
いったい、どんな内容なのかと、怖いもの見たさも手伝って・・という感じですが、
まぁ、いつものように人の評価は忘れて、自分なりに読んでみました。

武装親衛隊とジェノサイド.jpg

ということで、これまたいつものように「あとがき」から・・。
ギュンター・グラスが武装SSだったと告白した話や、パウル・カレルについても
国防軍はもとより、武装SSも戦争犯罪は犯していなかった・・という伝説を散布し続けたと、
戦記作家として断罪しているようにも感じます。
また「武装SS神話」なるものの存在と、国防軍や武装SSはホロコーストに関与していない
純粋な軍事組織であるということへの反論的な解説。
そしてヘルマン・フェーゲラインがどうした・・とか、本書の内容にも触れていて「おぉっと・・」
最近、日本人の著者の「あとがき」を先に読むのはやめるつもりだったんですが、
ついつい読んでしまいました。。。

Deutschland erwache.jpg

そんなわけで、本文を読む前にまずは自分が武装SSをどうイメージしているのか・・
改めて考えてみました。
まさしくパウル・カレルの「バルバロッサ作戦」や「焦土作戦」から
この世界に入った自分ですが、著者の心配はまったく無用であって、
これらを読んでドイツ軍が戦争犯罪は犯していなかったとは、別に思ったこともありません。
それはカレルの本には書かれていないだけで、それがドイツ軍の全てであり
真の姿であるなどと思ってしまうようなアホではないからです。
本書に限ったことではないですが、カレル批判の話を読むと、
正直、「読者を馬鹿にしてんのか!」と腹立ちますねぇ。

Paul Carell Unternehmen Barbarossa.jpg

それから武装SSや国防軍が「ホロコースト(ジェノサイド)」に関与していたのか・・
ということでは「関与していた」と思っています。
ただ、だからと言ってそれらの組織全体が黒だとか白だとかという意味ではなく、
「関与していた人間もいただろう」という意味ですね。
だいたい100万人の組織をひと括りに黒か白か評価しようというのは無茶な話ですし、
そんなことはニュルンベルク裁判とその後の継続裁判で結果はどうあれやっていたこと・・。
それと同じレベルのことを50年、60年経った今頃やることにどんな意味があるのか・・
疑問に思ってしまいました。

The Waffen SS defendants during the Dachau trial - 11 Sepp Dietrich,33 Krämer,45 Priess,42 Peiper,8 Coblenz,13 Fischer,19 Gruhle,23 Henneck,31 Knittel,34 Kuhn,39 Munkemer.jpg

この「独破戦線」を以前から読まれている方ならお分かりのとおり、
ヴィトゲンシュタインは「組織」ではなく、その「組織のなかの個人」に興味があるんですね。
極悪な組織にいるマトモな人間と獣のような人間、
神聖な組織にいる邪悪な人間と清廉潔白な人間。。
その組織のなかの誰をピックアップするかによって、組織全体の印象と評価も変わるわけです。
だいぶ、前置きが長くなりましたが、以上のようなことをいったん頭で整理してから、
いざ、本文に突入しました。

第1章は、この手の本ではお馴染み「SSの起源」などを解説し、アウシュヴィッツ絶滅収容所所長
ルドルフ・ホェース(ヘース)の戦後の回想から、彼らの忠誠心を分析します。
第2章では反ユダヤ主義がナチの政策で実践されていく過程。
ヒムラーハイドリヒ、水晶の夜といったキーワード。新聞では反ユダヤ「シュテュルマー」以外に
SS隊員向け「ダス・シュヴァルツェ・コーア」の論調を解説します。

Das Schwarze Korps.jpg

90ページを過ぎた第3章からアインザッツグルッペンが登場してきて、ユダヤ人を虐殺しはじめると
構成員の内訳を掲載して、武装SSが一番多い・・と解説します。
そしてフェーゲライン率いるSS騎兵連隊がバッハ=ツェレウスキの配下に入ると
「あ~、そういうことね・・」という感じです。
バッハ=ツェレウスキはパルチザン掃討作戦の親玉ですから、
このフェーゲラインの部隊がパルチザンを掃討しつつ、ユダヤ人も一緒に殺した・・、
すなわち、ホロコーストに関与した・・と言いたいんだろうなぁと。。
このバッハ=ツェレウスキがパルチザン掃討作戦の任務に異常なまでに忠実で、
パルチザンしか殺さなかった・・などということは誰も思っていませんから、
これは新発見というより、単なる解釈の違い・・ですね。

Bach-Zelewski.jpg

そして第6軍司令官ライヒェナウの「狡猾で残忍なこの異人種を容赦なく根絶しなくてはならない」
という訓示を紹介して、ユダヤ人絶滅政策は国防軍の戦争政策にもなっていたのである・・・
と、まとめています。
しかし、ナチ派のライヒェナウだけ(しかも、この後1942年1月に急死してますし)の言葉を取って、
これが国防軍全体の戦争政策とするのは、かなり荒っぽい・・というか、
写真で見る ヒトラー政権下の人びとと日常」よりも短絡的で、
読んでいて、思わず苦笑いしてしまいました。。。

Generalfeldmarschall Walter von Reichenau talking to Generalleutnant Otto Stapf September 1941.jpg

SSの医師の章では、ヒトラーの元主治医で安楽死計画にも関与したカール・ブラントなど
戦後、裁判を受けた第三帝国の医師たちの名が列挙され、
武装SS「保険局・衛生部」に配属されて、チクロンBの輸送に携わった
抵抗のアウトサイダー」こと、クルト・ゲルシュタインが登場してきます。
本書ではこのことによって、アウシュヴィッツなどのガス室による大量殺戮に
武装SSが大きく関与していた・・という書きっぷりです。

SS doctors examine Polish children judged racially valuable for adoption by Germans. Poland, October 1942..jpg

最後の章では、ポーランドのゲットー解体に武装SSが駆り出され、大いに貢献した話。
収容所の看守についても元々は「髑髏部隊」という独立した部隊でしたが、
やがてそれを母体として第3SS師団トーテンコップが創設されると、
収容所任務の「髑髏部隊」も武装SSとなった・・ということは良く知られたことですから、
本書に書かれているようなことを、ここで改めて論じるまでもありませんね。。

Stroop_Report_-_Warsaw_Ghetto_Uprising_11.jpg

247ページの本書ですが、50ページほどは注記と参考文献なので、実質190ページほどです。
それでもアッという間に読める本ではなく、なんだろうなぁ・・言い回しなのか、
カッコ書きが多い割にはその意味が良くわからなかったり、ちょっと読みづらいし、
知ってる話も仰々しく書いているトコも多いことから、眠くなったりもしました。

結局のところ本書は、重箱の隅を突いたようにフェーゲラインやゲルシュタインを
取り上げて、「ほ~ら、武装SSは悪いことをやってたんだぞ~」というモノでした。
巨大で、生き物のように変化した怪物のような組織「SS」、
そのなかの1つの組織である「武装SS」がホロコーストに関与した部分だけを検証する・・
という本書の狙いが果たして妥当なのか・・?

Hermann Fegelein - SS-Kavallerie-Brigade.jpg

本書を理解するにはホロコースト、SS全般はもとより、アイザッツグルッペンやSD、
警察、髑髏部隊などの関連性や、それぞれどんな組織や部隊だったのかを
ある程度知っている人でなければ難しい1冊だと思います。
逆に言うと、それらを知っている読者が、武装SSは純粋な軍事組織であり、一般SSとは違い、
戦争犯罪 = ホロコースト(ジェノサイド)に関わっていないとする「武装SS神話」なるものを
信じているとはとても思えません。
となると、自分も含めた読者からしてみれば「なんのこっちゃい」となってしまいますし、
「武装SS神話」を信じている若い方がもしいるならば、
ごたまぜで混乱するような知識しか与えられないような気もしました。

An accordionist leads a sing-along for SS officers at their retreat at Solahutte outside Auschwitz.jpg

amazonのように「★☆☆☆☆」は付ける気はありませんが、
本書を読むにあたって、個人的に武装SSという組織を改めて整理する
キッカケになったことには間違いありませんね。



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りかの配偶者

なんだか切ないですね
「検証した結果こうです」ではなく
「実例を挙げて悪であることを証明せよ」
みたいなんですね、、
負ければ賊軍という言葉が頭をよぎります。
by りかの配偶者 (2011-11-04 12:24) 

IZM

アマゾンのレビューも今見てきましたが。。。 色々ツッコミ所の多い本のようですね。ちなみにワタシも本はよくあとがきから読みます。
ヴィトゲンシュタイン様のスタンスに共感しながらレビューよませて頂きました。

ドイツ国内は「水晶の夜」の日程に近づき、各地で焼かれたシナゴーグ跡地で式典を予定してるらしく、例の地元新聞でも今日特集記事やっていましたよ。これからゆっくり熟読予定です。11月は他にWWⅡ戦没兵士への慰霊祭も地元であります。

by IZM (2011-11-04 17:49) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。 りかの配偶者さん。
いつも「nice! 」をありがとうございます。

>「実例を挙げて悪であることを証明せよ」
まぁ、そういうことです。答え先にありきのスタイルですね。
それがうまく表現できなくて、相変わらずダラダラ書いてしまいました。。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-11-04 20:26) 

ヴィトゲンシュタイン

IZMさん。こちらにもこんばんわ。
本書はレビュー書こうか悩んだんですが、武装SSについての個人的見解が盛り上がって、それがメインになってしまいましたね。。

「あとがき」は以前は外国人の著作を読むことが多く、「訳者あとがき」にはその著者の経歴や、本国での評価などの情報を事前に知るために、先読みしているんですが、日本人の著者の「あとがき」はもちろんそうではなく、書き上げるにあたって大変だった・・とか、言い訳とか・・があって、読む前から同情したり、腹立ったり・・ということですね。

>ドイツ国内は「水晶の夜」の日程に近づき、各地で焼かれたシナゴーグ跡地で式典を予定
ほ~、そういうのやってるんですかぁ。。「水晶の夜」って今まで読んだ本でもちょくちょく出てくるんですが、コレがメインになっているはまだ読んだことないんですよね。「水晶の夜―ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害」という本があるので、今度、キッチリ勉強してみます。
この「独破戦線」もそろそろ季節感持たせてやらないとダメですかね??
今月は、水晶の夜、モスクワ攻防戦、スターリングラードとか・・。

by ヴィトゲンシュタイン (2011-11-04 20:43) 

しゅり

こんにちは、ヴィトゲンシュタインさん。
この本、本当にアマゾンのレビューではけちょんけちょんでしたよね(汗)。
ヴィトゲンシュタインさんのレビューを読んでさらに。。。。

さて、。「水晶の夜―ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害」。
私もチェックしています~。
でも、きっとヴィトゲンシュタインさんの方が読むのが先だと思います(笑)。

by しゅり (2011-11-05 08:09) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。しゅりさん。
「水晶の夜」チェックしてますかぁ。でもボクは、買っても2年位平気で読まなかったりしますから、どうかなぁ?
最近のしゅりさんレビュー、かなり濃いですし、参考にしたいんですけどね。

今日はこれから「が~っ」とレビュー書きます。その前にこってり気味の味噌ラーメンを作って食べます。朝っぱらからですが・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-11-05 08:42) 

ねお☆なち

  長文失礼します。
  第三章だけは読みましたが、武装親衛隊の解説書としては使える本だとは思います。ナチス研究は武装親衛隊だけでも非常に研究が多いジャンルなので、特にゴールドハーゲン以降の研究をこの分量で整理してくれているのは非常にありがたい。
  ただ、前書きと後書きでやたらと武装SS神話なるものを強調しすぎるせいか、断罪のニュアンスが強く出た気がします。この点は様々なところで言われる通りです。文章も著者の書き癖のせいか読みづらい。
  武装親衛隊の全体像を描こうとしているんだから、細かい論証よりも、武装親衛隊という組織の全体像を手短にまとめることを優先させた方がいい本になったかと思います。読ませる相手が絞れていないので、まず図書館に買わせて、あとは見たい時に手に取れれば十分でしょう。
  最後に細かいことを言うと、1941年7月31日のゲーリングからハイドリヒへの任務委託(本書101頁註22)は手ごろな解説に落ち着いていると思います。日本語の本でアインザッツグルッペン研究の枠で語っている本が少ないので(英語圏ではC. ブラウニングが先駆)、この前後の射殺の流れを整理しているのはこの本をおいて他にないんじゃないかと思います。もっと欲を言えば委託文書の出典はIMTの文字起こし版だけではなくタイプライターの原文にたどり着けるものを一つは掲げて欲しかった。

※以下、蛇足です
  ①ヴァンゼー会議記念館のサイトから7月31日委託のタイプ版が閲覧できます。
http://archive.is/avVyR
http://www.ghwk.de/fileadmin/user_upload/pdf-wannsee/goerings_beauftragung_heydrich_juli1941.pdf
  ②ヴァンゼー会議について最近本が出たようです。
Norbert Kampe & Peter Klein (共編),『ヴァンぜー会議Die Wannsee-Konferenz am 20. Januar 1942』ケルン,2013年.
by ねお☆なち (2014-01-19 17:09) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。ねお☆なちさん。
コメント&情報、ありがとうございました。
by ヴィトゲンシュタイン (2014-01-19 19:28) 

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