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極北の海戦 -ソ連救援PQ船団の戦い- [ドイツ海軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

木俣 滋郎 著の「極北の海戦」を読破しました。

「極北の海戦」と書くと、かなりアバウトな感じのする本書ですが、
副題の「PQ船団」が示すとおり、7月の「海戦 連合軍対ヒトラー」で詳しく書かれていた
ソ連に物資を送る連合軍の「PQ17船団」が、ドイツ海軍によって壊滅的な打撃を受けた
という海戦をクライマックスに、英米ソの海軍vs大戦艦ティルピッツを中心とした
ドイツ海軍との攻防を最初のPQ1船団から詳細に描いたものです。

極北の海戦.jpg

1941年6月のドイツ軍によるソ連侵攻「バルバロッサ作戦」の猛攻の前に
必死の防衛を試みるスターリンは英国に援助を求め、早くも10月には
膨大な物資の供給が約束されます。
それは毎月、爆撃機100機、戦闘機300機、戦車500両、アルミニウム2000㌧を海路
送り届けるというもので、英国から北ロシアへ向かう船団記号「PQ」と呼ばれる船団が
ハリケーン戦闘機やヴァレンタイン戦車を積んで、アルハンゲリスクやムルマンスクを目指します。

Valentine Mark II tanks are readied for shipment to Russia.jpg

当初のこじんまりした商船6隻程度のPQ船団は順調な航海を続けます。
しかしノルウェーに基地を持つ、ドイツ北方艦隊のポケット戦艦アドミラル・シェア
太平洋をうろつき出した・・との情報に
英本国艦隊司令長官ジャック・トーヴェイ大将は出航を中止することもしばしば・・。
12月にもなるとドイツ側も、このソ連への軍事物資を満載したPQ船団の存在を知るようになり、
レーダー提督は新鋭の駆逐艦とデーニッツのUボートも派遣します。
PQ7船団の貨物船1隻がU-134に撃沈されるなどの被害も出始めますが、
スターリンとの約束を絶対に守り通したい英首相チャーチルの強気の指示によって
多少の損害は承知で、その後もPQ船団は規模を大きくしながらもロシアへ向かい続けます。

admiral-scheer-38.jpg

こうして登場するのは総統ヒトラー。。。
英国によるノルウェー奪回とソ連向け船団を危惧し、バルト海の戦艦ティルピッツにも出撃命令を・・。
さらにはフランスのブレスト港に釘付けにされている巡洋戦艦シャルンホルストとグナイゼナウ、
重巡プリンツ・オイゲンもドーヴァー海峡を白昼突破して、ノルウェーへ。

これに喜びを隠せないのが、ドイツ空軍の第5航空艦隊司令のシュトゥンプ大将です。
すで航空艦隊を指揮して名を挙げた、シュペルレケッセルリンク
コンプレックスを持っていた彼は、いよいよ出番が回ってきた・・と言わんばかりです。

Hans-Jürgen Stumpff.jpg

しかし前年にも戦艦ビスマルクに魚雷を命中させた雷撃機を持つ英艦隊も一歩も引きません。
今回も空母ヴィクトリアスから発進した雷撃機がティルピッツを狙いますが、
ティルピッツ艦長トップ大佐の見事な操艦で見事に回避。
この事件にレーダー元帥もドイツが空母を持っていたら・・と憤慨しますが、
遂にヒトラーも叫びます。「空母グラーフ・ツェッペリンの建造を再開したまえ!」

Graf Zeppelin.jpg

ちなみに「行きの船団」はPQですが、もちろんロシアからの「帰りの船団」も存在します。
これらは「QP船団」と呼ばれ、通常は空っぽの船団ですが、ソ連は武器の代金を支払うため、
いやいやながらQP15船団に金塊400本(約135億円相当)を積み込みます。
しかしこの船団がUボートと駆逐艦の攻撃にさらされ、金塊を積んでいた軽巡エディンバラが沈没・・。
このエディンバラは39年後の1981年に発見され、宝船として有名になったそうで、
「スターリンの金塊」という本になってるようですね。

また、「第2次大戦の沈没船から200㌧(180億円)の銀塊発見、回収へ」なんてニュースも
つい3日ほど前にありましたね。
これは1941年、インドから英国に向かう船団から逸れた英国の蒸気船「SSゲアソパ」が
アイルランド沖でUボートの餌食になったそうですが、TVのニュースでは、
一言も「Uボート」って言っていませんでした。。
誰が撃沈したのか、ちょっと気になるところです。。。

U-boat attacked a convoy.jpg

いよいよ悲劇のPQ17船団、商船36隻の出航の時・・。
連合軍の船団護衛も3本立てからなり、駆逐艦6隻に潜水艦2隻の直接護衛の他に
トーヴェイ大将が直率の間接護衛は英戦艦デューク・オブ・ヨークに米戦艦ワシントン、
空母ヴィクトリアスの他、巡洋艦、駆逐艦あわせて20隻の大艦隊で途中まで護衛、
さらにその中間にもハミルトン少将率いる4隻の巡洋艦隊が追随します。

Tovey.jpg

対するオットー・シュニーヴィント中将のドイツ北方艦隊は、ティルピッツを筆頭に、
重巡アドミラル・ヒッパー、ポケット戦艦シェアとリュッツォーと強力な布陣で待ち構えますが、
濃霧と流氷の前にPQ船団のうち2隻が衝突、追突によって引き返します。
そんな船団をU-408が発見。すぐさま6隻のUボートによる狼群作戦の開始です。
当然、ドイツ空軍も負けじとHe-111とJu-88爆撃機が出動しますが、
この爆撃機隊では「ヒトラーの特攻隊」を考案した、ハヨ・ヘルマンも頑張ってました。。

Junkers Ju-88A4 in die Kämpfe eingreifen.jpg

それでもPQ17の護衛艦はドイツ軍の海空からの攻撃をなんとか撃退。
しかしロンドンの軍令部には恐ろしい情報がもたらされます。
「ティルピッツが出てきた・・」。
船団を追随する護衛の巡洋艦4隻は、ポケット戦艦と駆逐艦への対策でしかなく、
戦艦の装甲には巡洋艦の砲など役に立たず、それは海戦というより「虐殺」を意味します。
「巡洋艦隊は高速を持って西方へ退却せよ!」
「ドイツ艦隊の脅威あり。船団は分散し、各自ロシアの港湾に向かうべし!」
34隻の商船は海軍から見放されたも同然の緊急電です。。

Arctic convoy PQ-17.jpg

唖然とする商船の乗組員たちをさらに驚かせる事態・・、直接護衛の駆逐艦隊までも
巡洋艦隊に追いつけとばかりに逃げ出してしまうのでした。。

戦艦2隻を擁するトーヴェイ大将の間接護衛戦隊は、「ドイツ艦隊と一戦交えるべきか・・」
しかし船団はあまりに遠く20ノットで突っ走っても11時間、ティルピッツまでは20時間です。
そんな状況を一変させたのが見張りの役で哨戒していたソ連潜水艦です。
ルーニン中佐のK-21は魚雷2本をティルピッツの命中させたと報告し、大騒ぎになりますが、
結局は誤報と分かって、ロンドンもがっくり・・。

battleship-tirpitz.jpg

ティルピッツとシェアが現場へ進撃を続けるも、すでに駆逐艦もなくバラバラとなった商船は
Uボートと爆撃機の格好の餌食でしかありません。
沈没寸前の商船から船員たちが乗り移った救命ボートに接近するUボート。
ドイツ士官は「怪我人はいないか?」と尋ね、陸地の方角を示して「元気で行けよ」

U-boot attack.jpg

一方、レーダー元帥は前年に味わったビスマルク撃沈の件もあり、かなり慎重です。
深追いしすぎて、怪我でもしたら元も子もない・・すでに空軍からは「PQ17は全滅」の報告も・・。
ということで、わずか9時間の航海の末、ティルピッツは基地へと引き返すことになります。
PQ17は最終的に11隻が逃げ切ったものの、23隻がUボートと爆撃機によって沈められ、
実に2/3が北極海の藻屑と消えるという未曾有の犠牲となったのでした。

Time_1942_04_20_Erich_Raeder.jpeg

なかなか楽しめた1冊でした。
文庫の375ページっていうのもボリューム的にちょうど良かったですしね。
主役は英海軍ですが、並行して語られるドイツ海軍と空軍も決して悪役ではなく、
せいぜいヒトラーが「ワーワー」言ってる程度・・。
そのぶん、度々登場するソ連艦隊が情けない脇役に徹していて、
ドイツ軍陸戦モノでいうところのイタリア軍のような扱いでした。。

もともと本書は1985年に「朝日ソノラマ」から出ていたモノの再刊で、
さすが日本人の著者というべきか、「戦艦『比叡』の最期と同様な・・」といった例えが
所々に出てくるんですが、これが太平洋戦争に無知な自分にとっては余計に分かりずらい・・
というか、普通、この本を読むような人は、「なるほど~」となるのか・・と思うと、
ちょっと寂しい気持ちにもなりました。。







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コメント 2

すだこ

直接護衛の駆逐艦部隊に関しては巡洋艦の護衛の指令のために輸送船団を放置せざるをえず、恥辱に満ちたものだったと言うようなことが朝日ソノラマの「死闘の駆逐艦」に書いてあったと思います。立場の問題があるのでどちらが本当とも言えませんが多少大目に見てあげてください。
by すだこ (2013-05-01 00:19) 

ヴィトゲンシュタイン

こちらにもコメントど~も。
朝日ソノラマの「死闘の駆逐艦」。未読ですがこれは有名ですね。著者は元英駆逐艦艦長だったと思いますが。
ボクのレビューは本書の書きっぷり、そのままですから、個人的に英海軍にダメ出ししているつもりはありません。確かにUボート好きですから、英駆逐艦は「敵」という位置づけではありますが・・。う~ん。「死闘の駆逐艦」、面白そうですね。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-05-01 09:28) 

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