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総統からの贈り物 -ヒトラーに買収されたナチス・エリート達- [ナチ/ヒトラー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

G.ユーバーシェア, V.フォーゲル共著の「総統からの贈り物」を読破しました。

昨年暮れに発刊された本書は、そのタイトルからスキャンダラスな感じがして気になっていました。
過去に読んできた本のなかでも、ヒトラー総統からお金や絵画をプレゼントされたり、
グデーリアンが土地貰ったり・・という話もありましたが、
それが副題の「買収」に当たるのか、また「ナチス・エリート達」とはどのような人物
(国防軍の将軍連なのか、SS隊員、またはナチ党員)を指すのかが読み取れませんでした。
「総統からの贈り物」を貰ったことが、当時、或いは現在「罪」なことなのか?
と・・若干、本書のテーマを自分が消化できるのか、疑問に思いながらも読んでみました。

総統からの贈り物.jpg

「下賜金と贈与の歴史」という第1章では、1600年代の神聖ローマ皇帝や、その後のナポレオンが
功労のあった将帥や知人などに途方もない規模の下賜金授与を行い、
戦争によって「解放」された土地も領土して分け与えた歴史を解説します。
まぁ、これは日本でも戦国時代や江戸時代でも同じですかね。
武勲のあった人には、金○○両に100万石を与える・・というヤツですか。
そう思うと、実は歴史というものは、規模はどうあれ戦争によって土地を奪い合い、
勝利に貢献した人にはお金と土地、貴族などの称号や名誉が与えられるということが
繰り返されているだけのような気もします。
しかし第三帝国では勝利とは関係なく、ヒトラーによる個人的な下賜金がばら撒かれていた・・
ということになっていきます。

それまで大統領と首相に与えられていた自由裁量基金が1934年、助成金や贈与金、
名誉給付などの漠然とした名前で、総統であるヒトラーが自由に引き出せることが可能となり、
その仕事を一手に引き受けるのは内閣官房長ハインリヒ・ラマースです。
当初はナチ党の政権抗争時代の仲間や未亡人に褒賞金が配られ、第1次大戦中、
負傷したヒトラーを介護した元看護婦さんにも、月額200ライヒスマルク(RM)の年金を与えます。

Hans_Heinrich_Lammers.jpg

その前大戦の偉大な元帥に対してもヒトラーは援助を惜しみません。
前大統領でもあるヒンデンブルクの86歳の誕生日祝いに100万RM、
マッケンゼンにも公有地が下賜され、このような光輝あるプロイセン元帥がヒトラーから
大々的に、しかも有難く受け取ったことは、国防軍の将官たちの手本ともなるのでした。
しかしヒトラーからしてみれば、これは政治上の抱き込み工作であり、
特に「長いナイフの夜」で殺害されたシュライヒャーとブレドウ将軍が参謀将校団体
「シェリーフェン協会」に所属し、その会長がマッケンゼンであったことなど、
ヒトラーの当初の乱暴な政治をと国防軍の不満とを揉み消す狙いとしています。

August von Mackensen_hitler.jpg

1940年、フランスを電撃戦でやっつけると、一気に12人もの「元帥」を誕生させます。
これについてヒトラーは、「特別な功労があった者にはプロイセンの王たちも
大々的にやっていた大きな贈り物をすることで、賞賛を与えている人物に対する宣誓と
義務を負わせることになるのだ」と計画的な行動だったことを陸軍副官のエンゲルに語ります。

同じく空軍の副官を長く務めたフォン・ベローは、当時の首席副官だったホスバッハ
副官たちに毎月100RMの補助金を支給するらしい・・と打ち明けて、海軍副官プットカマーを加え、
3人の間で議論になり、ホスバッハは「ヒトラーから金を受け取るのは、将校の独立性の保持から、
自分の信念に反する」としたものの、フォン・ベローの意見は全く違います。
「金を受け取っても独立性の保持は可能だし、悩んだこともない。それにホスバッハは大佐だが、
自分は大尉で給料も安いうえ、総統付き副官の特別な衣装のために金も掛かるのだ」

Nicolaus von Below.jpg

軍人だけでなく文官、党幹部に対しても誕生日(50歳、60歳、65歳、70歳)と称し
10万RM~60万RMの小切手が下賜金として送られ、同時に秘密保持も求められます。
バルバロッサ作戦で北方軍集団司令官としてレニングラード攻略を目指していたフォン・レープ
1941年9月の誕生日に25万RMの小切手を総統副官シュムントから手渡されます。

ちなみにこの25万RMは現在の日本円に換算すると約1億円・・ということで、
この後もクルーゲルントシュテットといった元帥たちのパターンも紹介され、
なぜかハルダーモーデルは受け取ったことがないとか、ロンメルもうまく断った・・、
ツァイツラーも返却した・・という証言もあるようですが、いずれも公文書が存在しないため、
貰った、貰わないは不明のようですね。

Ritter von Leeb.jpg

また、毎月の特別の「手当」が支給されることになり、本棒が2000RMの上級大将と元帥、
一人ひとりに無税の加棒として上級大将に2000RM、元帥には4000RMが・・。
う~む。本棒と同じか、倍以上の手当ですねぇ。。そしてこれも裁量基金からのものであるため、
いつでもヒトラーによって中止される可能性があるのです。
さらにゲッベルスは7400RM、ゲーリングはなんと2万RM・・まぁ、帝国元帥だからなぁ・・。
感じ悪いのは、このヒトラーの裁量基金を預かるラマース本人が、8000RMもお手盛りして
私腹を肥やしていたということで、最終的にはこの管理もボルマンに取られてしまいます。
こうなると総統ブンカーでのブルクドルフの叫びもやっぱり登場・・。

ヒトラー政権下の労働者賃金も紹介されていて、例えば女子の織工が月、80RMに対し、
強制収容所の未婚で25歳の女性看守の場合、185RMと高額・・。
そのためか希望者は年々、増加していったそうです・・。
そういえば「ナチ・ドイツ軍装読本」にも本書のような「手当」が書かれていましたねぇ。

Irma Grese.jpg

その他の代表例として、元外相ノイラートにリッベントロップ、ベルリン警視総監ヘルドルフ
SA幕僚長ルッツェ、ヒトラー専属運転手のケンプカや侍従長リンゲの下賜金パターンを紹介し、
ライプシュタンダルテの戦車野郎、マックス・ヴュンシェも結婚のお祝いに1万RMを頂戴・・。
ヴュンシェはもともと総統付きだったことがあるので、その縁なんでしょうね。

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武装SSの将軍ではゼップ・ディートリッヒが50歳の誕生日に10万RMを、
テオドール・アイケは同じく5万RM。。
SSだからって、国防軍より高い訳じゃないところがヒトラーらしい感じがします。
外国への政治家への贈り物もヒトラーの思うがまま・・。
スペインのフランコ将軍にはオフロード用ベンツ。
ムッソリーニには特別列車、ハンガリーのホルティ提督にはヨットを一隻・・。

Horthy_ hitler.jpg

最後はカイテルグデーリアンの土地を含めたパターンを詳しく紹介し、一方で、
マンシュタインが下賜金を貰ったか・・については「不明である」ということです。

個人的には、中盤くらいで「こりゃ、ヒトラーに絡んでる人はほとんど貰ってるなぁ」と
思いながら、280ページの最後まで読み進めました。
まぁ、いずれにしてもお金の問題は難しいですね。。。
向こう(ヒトラー)から勝手に大金をくれるというのを断るのは、人間大変ですし、
内密に個人に渡してるといっても、それぞれお互いの元帥たちも知っていたんじゃないかって
気がしますし、「あいつが貰ってて、なんでわしにはくれんのだ?」と、
トップからの評価のひとつと考えていたようにも思えます。

また、何度か出てくる、「1943年のスターリングラード敗北後も・・」という表現も
逆に、敗戦を意識しだしたことで、敗戦国としての戦後の生活や、家族のためにも
お金や土地が欲しい・・という気が高まったとも考えられます。
実際、副官時代に断っていたホスバッハが1944年11月の軍司令官の際の誕生日には
5万RMを喜んで貰っているということからも、軍人として「清廉潔白」うんぬんではなく
その前に純粋な夫としての、或いは一家の主として当然のように感じるんですね。

hossbach hitler.jpg

フォン・レープが「断っていたらどうなっていたか、わからない」という発言も本書では
「なにも起こらなかった」とあっさりと退けていますが、それは結果論ですし、
当時の彼らの立場(特に反ヒトラー派)からしてみれば、
「なにか悪いことが起こる可能性」も充分、考えられます。
そんなリスクを負うよりは、波風立てずに有難く頂戴しておくに越した事はありません。

よって、本書を読んだことで、グデーリアンを筆頭にほとんどの国防軍の将軍たち、
ヒトラーの副官に党幹部たちが給与以外の大金を貰っていたことが確認できましたが、
現代の日本人である自分にとっては、彼ら、それぞれのケースがどこまで「罪」なのか・・、
または「買収」されたのか・・ということは残念ながら、いま一つ理解できませんでした。



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