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ボッシュの子 [女性と戦争]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ジョジアーヌ・クリュゲール著の「ボッシュの子」を読破しました。

本書は2006年にフランス人の著者が自主出版した半自叙伝で、原題は「戦争の胎児」。
再販では「禁じられた愛から生まれる」というものです。
翻訳版のタイトルである「ボッシュ」とは、フランス語で「ドイツ野郎」という意味のようで、
1940年から1944年の時期にナチス・ドイツに占領されていたフランスで、
敵同士の男と女は愛し合ってはならないにも関わらず、必然のように生まれてしまった
ドイツ軍人を父に持つ、フランス人女性の物語です。

ボッシュの子.jpg

1943年に生まれ、北フランスのソンム県で育った著者の「わたし」。
父はおらず、祖母と母との貧しい生活です。
やがて小学1年生になると、「パパはどこにいるの?」という疑問も芽生えますが、
返事をする祖母は「戦争中にどこかへ行ってしまったんだよ」
そして「ママには言うんじゃないよ」と念を押すのでした。

そんなとき、学校でもいつも一人ぼっちの彼女が、おどおどしながらも友達に近づくと
「ボッシュの子、あっちに行って!」
またライン川の勉強中、ドイツの町の名を書き入れただけで
「ボッシュの町の名前なんか入れなくていい」と先生に怒られる始末。。
これには祖母も真実を話さざるを得ません。
「パパはドイツ兵だったんだよ。お前が生まれた時に、ロシアへ送られたのさ・・」
そして母親は顔を強張らせるばかりです。

父のことを知りたいと願うようになった彼女は、母とその兄である叔父が
仲違いしていることを知ります。
叔父は戦争中レジスタンスの重要なメンバーで、彼にとっては妹がドイツ人と恋に落ちるなど
とても許せないことだったのでした。それでも解放後のドイツ軍に協力したフランス人たちが
彼らの報復の対象となって、女性が髪の毛を切られ、晒し者にされるという恥辱は
叔父の力によって、なんとか免れたのです。

chartres-august-18-1944.jpg


母はいつの間にやらフランス人男性と再婚し、父親の違う妹と弟が生まれます。
そして引っ越し準備のおり、ドイツ兵の色褪せた写真を偶然、発見してしまいます。
そのドイツ兵の士官は実にハンサムで・・。
彼女にとっての空想のヒーローに、初めて姿と顔が与えられたのです。
さらにはドイツから送られてきたと思しき手紙も・・。
そこには父はドイツで再婚し、子供が2人いること、ロシアで大変苦しんだこと、
娘を忘れることがなかったことが書かれていて・・。

その住所に宛て、手紙を書いた彼女。ある日曜日、てんとう虫型の自動車が近づき、
降りてきた白髪の男性が父であることを直感的に気付くのでした。
母は気が失うほど狼狽し、義父は無関心。。。
そんなことを尻目に、父娘は涙を流して抱き合います。

結局、父は3日滞在して帰国し、彼女もその後は恋愛など、青春の真っ只中に。。
新しい家族にもなじめず、家を出て住み込みで働きに出ます。
訪れたパリでは偶然に昔の親友と出会いますが、
「去年、ここで「パリは燃えているか」の撮影が行われたのよ。毎日、ボッシュの行進を見たわ」
と、鳥肌が立つ思いだったと言う彼女に食ってかかります。
「ボッシュってドイツ人のこと?それともナチスのこと?」
Is Paris Burning.jpg
1971年、彼女も子供を身籠ります。
生まれてきた男の子にはシャルルではなく、カールと名付け、
「ドイツ系の名前では?」と尋ねる人にも「私の父はドイツ人でしたから」と開き直った感じの彼女。
飼い犬が誰かに傷つけられたポーランド人のお婆ちゃんは「憎いボッシュめ。可愛い犬を・・」と
ドイツ系の彼女を殺人鬼のような眼差しで責めますが、もはや彼女は一歩も引きません。
「マダム、ナチスは犬ではなく、人間を大量虐殺したのですよ」

それからまた数年が経ち、再び、ドイツにいる父に連絡をつけてみることに・・。
しかし、すでに時は遅く、最愛の父は3年前に他界・・。
それでも会ったこともない異母兄弟たちから、ドイツへ招きたいとの手紙も届きます。
こうして1979年、ドイツへと向かい、彼らと対面。
すでに額の薄くなった男性が一生懸命フランス語で挨拶を・・。
「フランツです!あなたの弟です」

Née d'amours interdites.jpg

その後、彼女たちは年に5回も6回も頻繁に会って、家族としての絆を深めあうこととなり、
戦後60年のタブーを打ち破って、20万人といわれる彼女のような「ボッシュの子」たちも
ドイツ人の父を探し出すことが可能となるのでした。
また、彼女の2つの家族の交流も始まり、フランスの義妹の娘と、ドイツの腹違いの弟の息子が
愛し合うようになって、今ではふたりがドイツで一緒に暮らしているという
彼女の両親の間で起きたことが、60年後にその子孫によって繰り返されているという事実を
エピローグで紹介します。

実は読み進めてみるまで、本書の詳しい内容は知らず、苛められる子供の話だったらイヤだなぁ・・
と思っていましたが、まったくそんなことのない、自分探しの旅のようなもので、
192ページとボリュームもありませんから、1時間半で独破してしまいました。
まぁ、日本でもこのようなことは戦時中ありましたが、このドイツとフランスでは
ほんの最近まで、これほどタブー視されていたとは驚きだった一冊です。



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IZM

どうも~~~
退院してから数日は、家でヨボヨボしていましたが、突然激しい胃痛で再度入院して、本日また帰宅。。。今週末は自宅でゆっくり過ごしたいものですが。 そして数日ここを見れない間に色々更新なさっていて、あい変わらずの独破ペースに驚いております。
今回のお話、良いですねー。ワタシの合気道でお世話になったフランス人の先生がいるのですが、年に何度もドイツに教えに来てくださるのですが、やっぱりフランス人のご近所さん達は「どうしてドイツ人なんかと仲良くしてるの?」と聞いてくるんだそうです。その時先生の奥さんが、「あんた達は、ドイツ人の何を知っているっていうんだい?」と突っぱねたそうで、ちょっとレビュー読みながら、その奥さんを思い出していました。。。。


by IZM (2011-09-16 22:08) 

ヴィトゲンシュタイン

いやいや、良かったぁ。改めまして3号ちゃん、おめでとうございます。
こっちは0.5号すら作ったことないですから(たぶん・・)、相変わらず、暇つぶしの独破です。。
ふ~~ん。やっぱり、フランスとドイツは今でも仲悪いんですかねぇ。これは最近読んだ本でも、第2次大戦以前からの普仏戦争やらなんやらかんやらの事情のようですからね。
今回は読んでて、なんとなく IZM家のことを考えました。変な意味ではなくて、ドイツ人と△△人・・ということですが・・。 タイミング的にもね。。
Friday Nightですっかり良い感じのヴィトゲンシュタインでした。明日は濃い~のをUPしますよぉ。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-09-16 22:54) 

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