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ヒトラーの遺言: 1945年2月4日―4月2日 [ナチ/ヒトラー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マルティン・ボルマン記の「ヒトラーの遺言」を読破しました。

今年の6月に発刊された新しい1冊ですが、あの総統秘書ボルマンが世の中にひょっこりと現れ、
「ど~も。ボルマンです。ヒトラーの遺言を持ってきました」などと言い出して出版されたものではなく、
もともとは日本でも20年前(1991年)に発刊され、絶版となっていた同名の再刊です。
訳者あとがきを読む限りでは、日付も20年前のままなので、特に内容には変更が無いようですね。

ヒトラーの遺言.jpg

タイトルの「ヒトラーの遺言」という意味では、ベルリンの地下壕で「私はヒトラーの秘書だった」の
ユンゲ嬢にタイプさせた「遺言」の全文も読んだことがありますし、
ヒトラーの「わが闘争」や「ヒトラーのテーブル・トーク1941‐1944」もあまり興味が無い
ヴィトゲンシュタインですが、今回はどうも「マルティン・ボルマン記」という部分が
特に気になったので読んでみることにしました。

序文ではこの「遺言」のオリジナルの持ち主であるスイス人の解説が書かれていて、
数年間に渡り、ヒトラーが内輪の場で語ったことを記録係の補佐官が記録した膨大な資料が、
「ヒトラーのテーブル・トーク」と呼ばれていて、本書の始まる1945年2月4日というのが、
ボルマンがベルリンの地下壕に入った2日後・・
ということから、狭い地下壕には記録係の補佐官も置けず、
ボルマン自身がヒトラーの言葉を記録したものであるとされているようです。
そんなわけで、本書は「ヒトラーのテーブル・トーク1941‐1944」に収められていない最後の部分、
「1945」編と言えるのかも知れません。

Adolf Hitler at the party reception at Führerbau.jpg

それでは「遺言」部分について、いくつか興味深かったところを抜粋してみましょう。

最初の1945年2月4日では10ページに渡り、英国とチャーチルについて語ります。
チャーチルはよほど嫌いなのか「ユダヤ人に毒され、半分アメリカ人化した大酒呑み」という
表現で始まり、その後も「この老いぼれた詐欺師まがいの男の手に、残念ながら
ヨーロッパの運命までが委ねられている」と熱く語ります。
そして別の日にも「私は意図してダンケルクから敗走する英軍に犠牲が出ないようにした」として
「チャーチルは寛大さと騎士道精神を評価するすべを知らなかった」

Winston Churchill and Dwight Eisenhower shared a glass at the Inn.jpg

また、この絶体絶命な戦局を意識した部分では、「たとえ絶望的な戦いといえども・・」と語り、
「レオニダスと300人のスパルタ人のことを考えてみるだけでよい!」と
映画「<300>スリーハンドレッド」の戦いざまを挙げています。

300-movie.jpg

フランコのスペインを戦争に引き入れなかった件については
「望ましいものと思えなかった」と振り返ります。
「ジブラルタルを占領することで、数100㌔の大西洋沿岸地帯を防衛しなければならなくなり、
英国のスパイによって準備されたスペイン内戦の再発の可能性」もあったということです。

hitler_Franco 1940.jpg

日本についても思った以上に語ります。例えば、
「中国人や日本人が人種として劣等だなどと思ったことは一度もない。
そして彼らの伝統の方が我々のそれよりも優れていることを認めるのにやぶさかではない」
さらに「日本はいかなる時でも友人であり、盟邦でいてくれるだろう」として
日本が対ソ戦に介入してくれなかったことを残念がり、もし、そうなっていたら
いま、この瞬間にソ連軍によってブレスラウも包囲されていなかったし、
1941年の冬が来る前に、共同してボルシェヴィズムを撲滅していただろう・・と。

breslau1945.jpg

一方、もうひとつの枢軸国イタリアについては
「ドゥーチェとの揺るぎない友情と、イタリアに対する盟友としての誠意とは、
誤りであったことを不本意ながら認めざるを得ない。誰の目にも明らかなように
我々に役立つよりも、敵の助けになった方が多かった」
また別の日の「遺言」でも
「我々には、戦場で目立つことをやりたいという病的な執念からイタリア人を
思いとどませることができなかった」
ムッソリーニに計画を話さなかったことによる両者の不信についても解説し、
彼を信用して計画を打ち明けると、ムッソリーニは同じ信頼感をもってチアーノに伝え、
するとこのプレイボーイは可愛らしい女の子の前では秘密と言うことが分からなくなってしまう・・
ということを認識するまで高価な代償を払わされた・・。

The 1938 Munich Conference.jpg

歴史も浅く、人種的にも多民族国家である米国とルーズヴェルトについては、
「世界中のユダヤ人によって選ばれた"死刑執行人"」としています。
片やスターリンに対しては、ほとんど罵倒することはありませんが、
「第三帝国が敗北した後は、互いに対等の立場で対決することが出来る米国とソ連の
2大国だけが世界に存在することになろう」と予測しています。

fdr_roosevelt_stalin.jpg

226ページの本書の136ページでこの「遺言」は終わり、訳者の篠原氏の解説が始まります。
訳者の・・とは言っても、この方は只者ではなく、戦時中、哲学の勉強のため
ドイツで過ごしていたという経歴を持ち、ヒトラーも遠目ながら目撃したことがあるという方です。
当時の兵士が聞いた大本営の特別発表でのヒトラーの死は、このように伝えられたそうです。
「総統は一兵士にかえって、自らパンツァーファウストを持って総統官邸の前に立ちはだかり、
最後まで敵戦車と防戦しながら壮烈な戦死を遂げた」
また、本書も彼がドイツで手に入れたドイツ語版を翻訳し、自ら出版社を探した・・
という経緯も書かれています。

Volkssturm,_Frau_mit_Panzerfaust.jpg

思ったより「遺言」の部分が少なかったですが、なかなか楽しめました。
なかには、「それは後付けの言い訳じゃないの?」と突っ込みたくなる記述もあったりして・・。
こんな感じなら「ヒトラーのテーブル・トーク1941‐1944」も読んでみようか・・という気にもなりました。
でも、古書でも結構高いなぁ・・。

hitler's table talk.jpg

穿った見方をすれば、ここに書かれた発言が本当にヒトラーが語った言葉なのか?
という疑問が当然沸いてきます。
一応、「本物」という代物だそうですが、語った方、書き取った方、双方とも既にいない訳ですし、
仮にヒトラーが語り、ボルマンが書き取った・・にしても、
この各日5ページ~10ページに及ぶヒトラーの独演を
一語一句間違わずにボルマンが書き留められたのか・・という自然な疑問も残ります。
スイス人の解説によれば、第三帝国の最後を意識したヒトラーとボルマンが共同の意思によって
後世に残すことを目的として書かれたもの(すなわち「遺言」)と推察していますが・・。

ちなみにボルマンのタイプした原本が、戦後どのように発見されたかの経緯は、
ヒトラーが経済相兼ライヒスバンク総裁のヴァルター・フンクに
「ある大切な文書を預けるから、どこか安全な場所に保管を・・」依頼し、
厳重に封印された文書を受け取って、ベルリンの総統ブンカーから脱出。
これが巡り巡って、スイス人の元へ辿り着き、出版の運びとなったそうですが
最後の4月2日以前の35日間は存在せず、その理由も不明とのことです。

Walther Emanuel Funk.jpg

ただ、ボルマンについて、いろいろ読んできたヴィトゲンシュタインからすると、
ヒトラーの専属秘書としてヒトラーが「あやふやでうやむや」に語ったことを
明瞭で的確な言葉に要約し、厳格な総統命令として簡潔に説明する技術を持っていた
という彼ですから、この手の手法を大いに用いて、ヒトラーが「チャーチルは○○だ」とか、
「ユダヤ人は△△である」という程度のことを過去の発言や、ボルマン自身の思想や
考えを組み合わせ、大きく広げて仕上げたもの・・とも考えられるのではないでしょうか・・?

ヒトラーが全幅の信頼を置いた最後まで最も忠実だった秘書 = 「内容も忠実」という
イメージもわかりますが、総統に万が一のことがあった暁にはゲーリングヒムラーなどの
ライバルたちを出し抜いて・・という権力に魅入られた策士であり、
ゲッベルスのように総統と共に死を選ぶようなマネもせず、生き延びようとしたことを考えると
この「遺言」もいざという時に「総統はこう言っておられたのだ」と、
自分にとって都合よい内容なのが好ましいわけで、
やはり、ボルマンという人間をどう捉えるかによって、信憑性が変わってくる気がします。

bormann_hitler.jpg

もちろんこれは個人的な憶測のひとつですし、本書の記述を読んでいて
違和感を感じたりすることもありませんでした。
エヴァ・ブラウンの日記」もそうでしたが、信じる、信じないは人それぞれ自由ですし、
証拠が無い以上、「コレは怪しい・・」という目で見るのも嫌な人間ですしね。。
ただ、過去にも「ヒトラー日記」という贋作が大スキャンダルとなったこともあるようで、
「ヒットラー売ります―偽造日記事​件に踊った人々」という本も、ちょっと気になりますね。









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