So-net無料ブログ作成
検索選択

ニュルンベルク軍事裁判〈下〉 [ヒトラーの側近たち]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ジョゼフ・E. パーシコ著の「ニュルンベルク軍事裁判〈下〉」を読破しました。

下巻は生きる目的を失い、自殺する可能性が最も高い被告、カイテル元帥の様子からです。
総統から毎日与えられる屈辱から逃れるため、1個師団でも良いから指揮させて欲しいと
要望したことなど、ヒトラーの側近として積極的ではなかったことを
ゲーリングが証言してくれれば・・。
しかし軍事面については「総統が先生で、私が生徒でした」。

ニュルンベルク軍事裁判 下.jpg

被告たちに大きな影響を与え続けている大嫌いなゲーリングを孤立させるべく、シュペーア
収容所付きの米国の精神科医ケリーにゲーリングが一人で食事することになるよう仕向けます。
このケリーと通訳は頻繁に登場するコンビで、帰国後にこの体験についての本を
出版しようと目論見ますが、早々と帰国したケリーが独り占めにしようとする展開です。
なお、このケリーの後任でやってきた精神科医が「ニュルンベルク・インタビュー」の
ゴールデンソーン少佐なわけですが、本書では不思議なことに、彼について一切触れられません。

Funk Speer.jpg

そしてデーニッツ。。彼は総統後継者という責任ではなく、あの「ラコニア号」事件に伴い
命令を出した、「撃沈した船の船員を救助すべからず」が問題となっています。
しかしそれを「殺害命令」と取られ、また、その経緯はこの「独破戦線」でも紹介しているものです。
弁護人に任命されたドイツ海軍のクランツヴューラーもデーニッツのために証人集めに奔走・・。

Goering, Doenitz, Funk, von Schirach and Rosenberg have lunch at the Nuremberg trials.jpg

収容所所長のアンドラス大佐の驚くような一面も紹介されています。
逮捕直後に自殺したヒムラーの妻を重要証人として、収容所に監禁したものの、
このSS全国指導者の娘はどうするか・・。戦後の混乱のなか、通える学校を探し出し、
彼女を入学させて、水彩絵の具セットも贈ります。
そして度々、「親愛なるアンドロス大佐さま」と書かれた絵や、綿で作った雪だるまも送られ、
彼のデスクを飾っていたということです。非常に印象的な話ですね。

himmler gudrun.jpg

また、ヒムラーだけではなく、ゲーリングやカイテル、経済相を務めたシャハトに
ヒトラー・ユーゲント指導者でウィーンの総督だったフォン・シーラッハの妻らも
逮捕されているわけですが、この事実にゲーリングは
「連合軍の民主的なフリに騙されちゃいかん。やつらはゲシュタポのように凶悪なのだ。
いったい女子供が戦争犯罪に関係あるのかね」。
う~ん。ゲシュタポを作った人間の言葉だけに説得力があるのか無いのか・・。

HG-Nuremberg.jpg

裁判も3か月を過ぎた1946年の2月、ソ連側は、ドイツによるソ連侵攻自体を犯罪とするため、
スターリングラードで捕虜となったパウルス元帥を電撃的に出廷させます。
この件に積極的に関わった人物を「カイテル、ヨードル、ゲーリング」と答えるパウルスに
「自分が裏切り者であることを知っているか!ソ連の市民権を取ったんだろう!」と
激高するゲーリングです。

Friedrich Paulus in the witness stand.jpg

これを聞いていたカイテルはリッベントロップに語ります。
「実はパウルスはヨードルの後任に決まってたんだ。
そうなっていたらパウルスは、こっちの席にいただろうな」。
この人事については、いろいろな本でも書かれていましたが、それはパウルスが
スターリングラードを陥落させることが前提ですが、もし、そうなっていたら、
こんな裁判があったかどうかも、怪しくなってきますね。
ひょっとしたら「ファーザーランド」になったかも。。。

Nuremberg Trials Keitel.jpg

そしてソ連側はもう一つ、爆弾を破裂させます。
カティンの森」でポーランド将校1万名がドイツ軍によって虐殺された・・というものです。
これを聞いた被告人たちはヘッドホンを外して嘲笑し、
この誰が見ても、ソ連が行った戦争犯罪をナチスに押し付けようとする姿勢に
ジャクソン首席検事をはじめ、英米の法律家たちですら困惑してしまいます。

いよいよ、この裁判におけるメインイベント。
ジャクソン首席検事と"ナチズムの暗黒星"ゲーリングの直接対決です。
堂々たる態度でほとんどすべての事柄についての責任を引き受けるゲーリング。
しかしソ連侵攻など重要な問題では、巧みに答弁し続け、
この大一番はゲーリングに軍配が上がります。

goering-at-nuremberg.jpg

続く英国側の反対尋問は、トンネルを掘って脱走した
英国パイロットの戦争捕虜76名を射殺した件についてです。
これはお馴染み、映画大脱走」についてゲーリングの責任を問うというものですね。

同じ尋問はヒトラーからの「処刑命令」を伝えたカイテルにも繰り返されますが、
すでに「ドイツ国防軍全般の罪の責任を自分が負う」と発言していた彼は、「反対したものの
なんとかすでに収容所に戻されている脱走者の処刑はやめるよう説得した」と証言します。
う~ん。一歩間違えば、「調達屋のヘンドリー」なんかも銃殺されていたかも知れませんね。

Nuremberg_Trials Keitel.jpg

デーニッツの弁護人、クランツヴューラーは「殺害命令」が無かったことを
収監中の67人のUボート艦長たちから「声明書」で受け取り、
撃沈したギリシャ船の乗組員に対して「殺害命令」を実行したとされるエック艦長からも
その処刑の直前に、自らの決断であったことを認めさせます。

大方の予想を裏切って、殺害されることになるユダヤ人6万人をウィーンから追放したことを
認めるという気骨のあるところを見せたシーラッハ。。。
一方で自己抑制ができず、感情的になって金切り声をあげるザウケル

BaldurVonSchirach.jpg

弁護人の秘書として傍聴席にいる新妻に視線を送る国防軍統帥局長ヨードル・・・。
オランダ行政長官として国内のユダヤ人56%を死亡させたことを淡々と認める
ザイス=インクヴァルトと、各人の証言が続き、
最後にシュペーアが個人的にヒトラーの暗殺を計画していたことを証言します。

Alfred-jodl.jpg

こうして、4か国の判事団による各被告の判決が審議されます。
最終採決では4人の首席判事の投票により、3/4での票で有罪が確定、
この過程も非常に詳しく書かれて、結果は知っているのにドキドキしました。

Judges of the International War Crimes Tribunal,M. Donnedieu de Vabres of France, Frances J. Biddle, United States; Lord Justice Lawrence, Great Britain; and Major General I. J. Nikitchenk, USSR.jpg

遂に判決・・。
ハンス・フリッチェとシャハト、元首相でオーストリア大使だったフォン・パーペンの3人が無罪。
有罪の量刑が言い渡されるのは、昼食後です。

「絞首刑」を言い渡されたゲーリングは無表情に、ヨードルは怒ったような足取りで退出、
リッベントロップはどさりと崩れ落ちます。
強制労働者に対しての責任に問われていたザウケルにも同様の判決が出ますが、
同じか、それ以上に責任のあるシュペーアには「懲役20年」の判決が・・。

Joachim von Ribbentrop.jpg

最後には347人を葬ってきた「死刑執行人」ウッズ曹長が体育館に3台の執行台を組み立て、
その腕前を披露する時を待ちますが、その時、ゲーリングは青酸カリのカプセルを飲んで自殺。
それでも予定通りに処刑は執行され、「いま私は、息子たちの後を追います」と言い残して
落ちて行ったカイテルが死亡するまで28分もかかったということです。。

Sergeant john woods Hanging Rope Nuremberg.jpg

一般的に「謎」とされているゲーリングの自殺の様子が、非常に克明に書かれていることで、
ちょっと疑問に思いましたが、「補遺」としてこの件についての著者の解釈も書かれています。

なかなかドラマチックで楽しめました。
今まで読んだことないヨードルやゲーリングなどの奥さん連中の
「戦犯の妻」という置かれている立場や、その心境も良く伝わってきましたし、
シーラッハの奥さん、ヘンリエッテも旦那が死刑を免れて、大喜びしたりしてて、
彼女の書いた「 ヒトラーをめぐる女性たち」も読んでみる気になりました。
その分、シュペーアが若干嫌らしい悪役でもあったりして、
被告たちも同じ穴のムジナではなく、個性的なバランスも取っている感じです。

TIME_nuremberg.JPE

いま、wikiで「ニュルンベルク軍事裁判」を検索すると、本書を基にした2000年製作の
TVドラマが引っ掛かりました。
アレック・ボールドウィン、クリストファー・プラマー、マックス・フォン・シドー、
マイケル・アイアンサイドにシャルロット・ゲンズブールまで出てる、凄いキャストのドラマですね。
「ゲーリングを英雄視しすぎたと一部から批判を受けた」という話で、これは
エミー賞の助演男優賞を受賞したブライアン・コックスの名演技も要因のようです。
しかし、このTVドラマだけではなく、本書もかなりゲーリングが格好良く描かれてます。
ちなみに、wikiでは「同名の"小説"を原作にした」と書いてありますが、
本書は一応、"小説"ではなく、"小説風"ですね。

nuremberg 2000.jpg

数年前にNHKで放送したドラマは観たんですが、スペンサー・トレイシー、
バート・ランカスターにマレーネ・ディートリッヒなどの豪華スター共演で有名な
「ニュールンベルグ裁判」も観たことがないので、この2つはDVDが欲しくなりました。
コメコンさん、ありがとうございました。











nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

コメコン

遅ればせながら3周年おめでとうございます。
1冊読み切るだけでも大変なのに、
よくここまで濃密なレビューをしかもハイペースで書かれるものだと感心しています。
お陰さまで欲しい本が次々と沸いて出てきて困っています^^

現在、私は本棚から溢れてしまっているフジ出版の戦史以外の物を箸休め的に読み進めている所ですが、
秋くらいには「始まりと終わり」辺りで原隊復帰しようかな、などと考えております。
そういえば、以前ヴィトゲンさんに教えてもらった
「ニュルンベルク裁判 ナチス戦犯はいかにして裁かれたか」を虎視眈々と狙っていたのですが、
ようやく昨日になってアマゾンに比較的安価なものが出ていたのでうまく拾うことができました!こちらも楽しみです。
他に最近買ったものといえば「第二次世界大戦」(フジ版)も送料込み2900円で入手できました。
あと先日、東京へ出張に行ったんですが残念ながら軍学堂に寄る暇さえありませんでした・・・
いつの日か独破オフ会とか開催されるんですかねー^^

ではまた!
by コメコン (2011-06-03 13:53) 

ヴィトゲンシュタイン

コメコンさん。お元気でしたか?

本書は楽しめましたよ。教えていただき、感謝しています。
「ニュルンベルク裁判 ナチス戦犯はいかにして裁かれたか」は、負けましたね・・。昨日は飲み会だったもんで。。

>「第二次世界大戦」(フジ版)も送料込み2900円で入手

これは安い!3000円切ったのは見たことありません。自分のは再刊ですけどそのうちいきます。

独破オフ会なんて考えたこともありませんでした・・。そんな日が来るのでしょうか?
by ヴィトゲンシュタイン (2011-06-03 18:02) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。