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ナチズムと強制売春 強制収容所特別棟の女性たち [女性と戦争]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

クリスタ・パウル著の「ナチズムと強制売春」を読破しました。

1996年に発刊された、以前からなんとなく気になっていた一冊を紹介します。
日本語版への序文」では例の従軍慰安婦問題と本書の関連性、そして
それぞれの国がタブー視してきた経緯にも触れているように、
本書は副題の「強制収容所」だけに閉じたものだけではなく、
SSや国防軍の戦地における「売春宿」の存在にも言及しているものです。

ナチズムと強制売春.jpg

「売春婦」や「娼婦」と呼ばれる人は、どこの国でも遥か昔から存在していたと思いますが、
本書ではまず、ヒトラーが政権獲得後すぐに制定した「帝国性病撲滅法」によって、
売春取締が厳しくなり、逮捕者が増大していく過程が解説されます。
しかし、これは「売春完全撲滅」を目指すものではなく、1937年にSS全国指導者ヒムラー
「この問題はギリギリまで大目に見よう。それは青少年が「同性愛」に陥らないように
しなければならないのに、逃げ道を塞いではならないからだ」と演説しているように、
ナチの政策にとっては、この「同性愛」の方が撲滅する必要性は高かったようです。

die prostitution.jpg

もちろんヒムラーと言えば、アーリア人種の血を守ることに執念を燃やして
レーベンスボルン(生命の泉)」などを開設した人物ですから、
売春婦でなくても、「人種の恥」と呼ばれた、外国人やユダヤ人などと性的関係を持った女性も
逮捕されてラーヴェンスブリュックの女性強制収容所送りとなってしまいます。

Ravensbrück.jpg

本書にも少し触れられていますが、戦争が激しくなると、ドイツ国内では旦那さん連中は軍隊に
徴兵され、フランスやポーランド、ロシアなどの占領地から外国人労働者が大勢やってきて
使用人として、各家庭で働いていたことは様々な本にも書かれています。
このような環境で、奥さんが、例えば若くて素敵なフランス人の使用人と「間違いを起こす」ことは
容易に想像できます。

このようにして、1941年マウトハウゼン強制収容所を視察したヒムラーによって
「囚人用」の売春宿を設置する命令が、SS経済管理本部長官オスヴァルト・ポールに出されます。
これは囚人の労働成績を上げるための、いわば「アメ」のようなもので、
勤勉で態度良好、抜きんでた労働成績を収めた一部の囚人に報酬として与えられるというものです。
そしてアウシュヴィッツを筆頭に、ブッヘンヴァルトザクセンハウゼンダッハウといった
名だたる収容所にも次々に「売春宿」が設置されるのでした。

KZ_Mauthausen,_Himmler.jpg

この各々の収容所の「売春宿」で働くことになるのは、ラーヴェンスブリュック女性強制収容所に
収監されている女性たちです。
主に「売春」経験者が多かったようですが、本書に書かれている様々な例・・
その選別過程の様子は、受け入れ先の収容所や証言によっても、
一概に「プロ」だけではなかったようです。
ブッヘンヴァルト所長のコッホが、痩せ細った裸の女性の選抜に立ち会い、
「もともと良い身体をしたあの女はうんと食べさせて、また太らせますよ・・」。

Karl Otto Koch.jpg

実際、本書では「売春宿」で働くことを強いられた女性数人からのインタビューも紹介し、
そこには内容の知らされないこの「特別任務」を6ヶ月間務めた者は釈放する・・
などといった条件での募集もあったそうです。
しかし、そのような口約束が実行されるはずもなく、6か月後には病気になって
元のラーヴェンスブリュックに逆戻り・・。

women's concentration camp.jpg

「売春宿」での生活の様子とルールなどもしっかりと書かれています。
収容所の隅に建てられた「特別棟」でベッドとSS隊員用の食事を与えられ、
10人からの女性たちによる12時間の交替制勤務だったり、夜の2時間限定だったりと
この辺りは収容所所長がそれぞれ定めたルールのようです。

ユダヤ人の囚人は対象外で、ドイツ人もしくは外国人のブロック長や
囚人頭の「カポ」などエリート囚人がお客・・。
当然、時間制限もあって、場所によって15分~30分。また、体位にも制約があり、
「横たわった体位での性交だけが許され、それ以外は処罰を受けた」。

KZ Kapo.jpg

収容所を警備する髑髏部隊のSS隊員はどうしたか・・というと、基本的に「立ち入り禁止」です。
しかしアウシュヴィッツではこの禁止警告が度々出されていることから、
コッソリ訪れるSS警備兵もいたようですね。
それでも収容所によっては、SS隊員専用の「売春宿」も設置されていたようで、
ラーヴェンスブリュックでは「最上の女性がSS隊員向けに選抜された・・」。

KZ_Mauthausen  camp guard.jpg

1940年にフランスを占領したドイツ軍。OKWは早速、ドイツ国防軍による「売春宿」を設置します。
これは強姦や性病の蔓延を防ぐのと同時に、管理下で規律を守ることが目的で、
第1次大戦時代の兵士用売春宿の伝統を引き継いだものです。
そしてここで働く女性はユダヤ人を除く、ポーランド、フランス、ロシア、ギリシャ、ユーゴ出身者です。
また、これはフランスだけの話ではなく、対ソ戦でも同様です。

全体的な印象としてはラーヴェンスブリュック女性強制収容所の重労働と劣悪な環境から
一転した、衣食住が得られるものの、その「労働」は人によっては耐えられず、
妊娠や性病、そして自殺といった例も紹介され、生き残るために彼女らが選んだ道であったとしても、
その結果の良し悪しは一概に語れるものではないでしょう。

Ravensbrück prisoner Helen Ernst. Women of Ravensbruck.jpg

200ページ程度なので、一気読みしてしまいましたが、
本書の著者は以上の事柄を、感情的になったりすることなく、専門的に冷静に分析しています。
これは非常に難しい、なかなか答えの見つけられない問題ですね。



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IZM

慰安婦に関しては、最近読んだ日本の元兵士の方々の本でも散見され、それらの記述では日本のマスコミ等で見た日本軍の従軍慰安婦像と大分違う様子だったので、自分も今気になっているテーマの一つだったりします。。。
相変わらずこのへんのシンクロ度がすごい。Ww
この本の作者、女性なのかな。こういうテーマをよくまとめましたね。。。
というわけで、また気になる本が増えてしまいました。Ww
余談ですが以前パリで「戦争と性」というテーマの展覧会があったようです。 ワタシの記憶では東京で開催だったかと思ったら・・・記憶ってあいまいなものです。ご存知かなあ。。。
http://www.youtube.com/watch?v=FmEPQYDoZMU

by IZM (2011-05-11 22:24) 

ヴィトゲンシュタイン

お~、これもシンクロしてましたか・・。
「慰安婦」っていうのは、自分は2通りあると思っています。
日本が大陸で・・の話も、強制的だったという話もあるし、現地のプロの売春婦だったという話も・・。
同様に、以前に読んだ本でも、パリではプロの売春婦がフランス人からドイツ人に相手を変えただけ・・というのもありましたし、ポーランドの収容所でもポーランド人の売春婦が稼げそうだとばかりに、自ら収容所近辺をうろついたなど・・。アメリカ軍にしてもプロのイタリアの売春婦を雇っていた・・なんて話もありました。

本書はあくまで「強制」にターゲットを絞っていますが、「慰安婦」という意味では需要と供給を知っている、したたかな女性たちも多かったんだと、今のところ解釈しています。

「戦争と性」というテーマの展覧会、今見ましたがまったく知りませんでした。旦那が不具になって帰ってきたり・・というのも大変でしょうけど、男から見て最悪なのは、戦後、収容所から帰ってきたら、嫁さんに死んだと思われて、再婚されてた・・ですね。ハルトマンはそんなことなくて良かったです。。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-05-12 20:29) 

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