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雪中の奇跡 [欧州諸国]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

梅本 弘 著の「雪中の奇跡」を読破しました。

「独破戦線」初登場となる、フィンランドものの有名な一冊の紹介です。
1939年のドイツ軍によるポーランド侵攻後に起こった、ソ連によるフィンランド侵攻
いわゆる「ソ芬戦争」、または本書のタイトルからも想像できる「冬戦争」と呼ばれるものです。
著者は何度もフィンランドを訪れては、人々と話し、資料を収集。
フィンランド語の勉強も続けて、読み書きまで出来るようになった・・という
大変な努力をされた集大成だということです。

雪中の奇跡.jpg

プロローグでは後に最高司令官として、英雄ともなるグスタフ・マンネルヘイム中佐の
帝政ロシア時代、「日露戦争」での活躍が紹介され、第1次大戦も含めて、
この時代のロシアとフィンランドの関係などが理解できます。

そして1939年、独ソ不可侵条約にある秘密議定書に書かれた
「バルト諸国はソ連の勢力圏下にある」という記述通り、ソ連はまず、
バルト3国へ侵攻し、フィンランドに対しても領土の租借を求めてきます。
強気のフィンランドとの数回に渡る交渉は決裂し、11月末、ソ連軍は
総兵力約50万名、航空機670機、戦車も2000両を超える大群で侵攻を開始します。

Talvisota_7th_Army_1939.jpg

モスクワではヴォロシーロフ元帥が「4日で片が付く」と大見得を切るほど、自信満々・・。
T-26軽戦車に乗る戦車兵たちは、
「白色富農政権の圧政からからフィンランドの農民たちを開放するのだ」と教え込まれ、
総司令部からのコメントを読み上げます。
「あまり前進し過ぎて、スウェーデン国境を越えないように注意せよ」。

Stalin_Voroshilov.jpg

2日目には「バルチック艦隊」も出撃するソ連軍。
このような攻勢の前に、すべての建物を焼き払う「焦土作戦」で退却を続けるフィンランド軍。
しかし、この日から2週間も続く吹雪がフィンランド軍に味方をします。
カレリヤ地峡での数限りない沼や湿地もソ連戦車の前進を阻み、木製地雷も威力を発揮します。
雪と寒さに強い印象のソ連軍ですが、キルギス、ウズベキスタンにアゼルバイジャンといった
南から徴兵されてきた兵士も多く、その彼らにはロシア語も通じません。

一方、ほとんどが予備役将校のフィンランド軍ですが、
なかにはフランス外人部隊で5年間も軍務に就いていたユーティライネン予備役中尉や、
ソ連兵219人を倒した狙撃手、ハイハ下級軍曹なども紹介されます。
そして森の迷路となっている死のポケット地帯に追い込み、敵の補給を断つという戦術で
1個狙撃師団を壊滅。

The Winter War_7.jpg

ソ連軍の信号旗を持って林道の交通整理に出かけたフィンランド兵の鮮やかな手並みで
フィンランド軍陣地に向かってしまうソ連の補給部隊。
ロシア語の達者なフィンランド兵はソ連の軍服を着こんで、野戦烹炊所へ向かい、
仲間の分までバケツで温かいスープをもらいます。厚かましいことに、それも2週間続けたそうな・・。

The Winter War_8.jpg

薄着のソ連兵に零下に下がった気温、まるで逆「バルバロッサ作戦」のような展開ですが、、
ここで登場するのは伝説のフィンランド・スキー奇襲兵・・。
彼らのストックは日本から輸入した竹製です。
偽装に無頓着で、寒いといっては盛大に焚火するソ連部隊は彼らの格好の餌食です。

Talvisota_Poroparti20.2.1940.jpg

T-26戦車もフィンランド兵のモロトフ・カクテルなどの肉薄攻撃の前に
まとめて撃破されることもしばしば・・。
しかし、T-100といった多砲塔重戦車やKV重戦車を有する特別重戦車中隊には手こずります。
それでも4日どころか1ヶ月以上も持ち応えたフィンランド。
「我が軍がこれほど優秀で、ロシア軍がこれほど弱いとは・・」と
帝政ロシアの将校として長い間過ごしてきたマンネルヘイム将軍は複雑な心境です。。

t100.jpg

モスクワでもスターリンがヴォロシーロフに不満タラタラ絡み始めます。
しかし「それは全部貴様のせいだ!貴様が赤軍の粛清をしたからこうなったんだ!」と逆ギレ。。
さらに罪もない小国を侵略したソ連を国際連盟は除名し、
隣国スウェーデンから8000人を筆頭に、北欧、東欧諸国、米国、スペイン、
そしてドイツなど世界各国から義勇兵が参加し、日本人も数名いたということです。
本書には残念ながら書かれていませんが、その義勇兵のなかには、
あの史上最高のドラキュラ役者、クリストファー・リーが英空軍として参加していた話もあります。

Christopher Lee.jpg

本書の写真に数枚掲載されているフィンランド空軍のマークはスワスティカ「卍」です。
白黒なのが残念ですが、この「卍」の色は、フィンランドらしい水色で、
「卍」がこれだけ爽やかに見えるのも珍しいですね。
ちょっと調べてみましたが、特にナチス・ドイツのハーケンクロイツと関係あるわけではなく、
創設当初の1918年から使われ、1945年の終戦とともにヨーロッパで
「卍」禁止令が出るまで??使われていたようです。

i-16-t18-finnish.jpg

1940年1月、ティモシェンコを長とした西北方面軍として再編成したソ連軍。
その兵力は2個軍、60万名です。
それに対して英仏は5万7千の部隊のフィンランド派遣を決めますが、
ノルウェーとスウェーデンの国内通過許可が条件です。
ドイツに宣戦布告した英仏と、独ソ不可侵条約を結んでいるドイツの動向が読めない
この北欧の2国は、中立という立場が崩れて、大戦争に巻き込まれることを恐れ、
結局、許可を出しません。

Raattentie_T-26.jpg

戦術も見直して再度攻撃を仕掛けるソ連軍に徐々に押され始めたフィンランド軍は
ドイツ軍の最終戦のように子供までを対戦車部隊に投入するほど、弱体化していきます。
そんななか、編成されたばかりのフィンランド軍戦車部隊が遂に初陣に挑みます。
英国製のピッカース6㌧戦車16両というこの戦車部隊ですが、
せっかく出会った味方の補給隊からはソ連軍と思われて、逃げ出されてしまう有様・・。
これは散々戦ってきたソ連軍のT-26戦車もピッカース6㌧戦車が
ベースになっているということも大きいですね。

やがて3月13日、停戦を向かえ、この「雪中の奇跡」と云われた戦争は終結します。

Field Marshal Mannerheim.jpg

以前にDVDで観た「ウィンター・ウォー -厳寒の攻防戦-」というフィンランド映画は
なかなか印象的で記憶に残っています。。
この1939年の「冬戦争」を描いたものですが、本書のようなマンネルヘイムから政治情勢までを
幅広く網羅したものではなく、突如、侵攻してきたソ連軍に対し、徴兵された田舎の兄弟を主人公に
装備もままならない彼らフィンランド兵が、不屈の防御戦をみせる・・といった感じの映画でした。

Molotov Cocktail.jpg

特に思い出すのが、塹壕に降り注いだソ連の砲弾によって、
可愛い顔した弟がバラバラになってしまうシーンですか・・。
いきなりだったので、かなりビックリしましたし、葬儀の際にも
棺桶を傾けると「ガラガラ」音がしてしまい、母親が不審な顔をしたり・・。

久しぶりにドイツ軍が一切出てこない本を読みましたが、なかなか勉強になりました。
特に写真が豊富で、博物館や映画のカラー写真も多く、いろいろイメージがしやすいものでした。
1944年夏、フィンランドに二度目の奇跡が起こった・・という「流血の夏」も買いましたので、
これも楽しみですが、ちょっと調べてみるといろいろありますねぇ。
フィンランド空軍ものでは昔の朝日ソノラマで出てた「北欧空戦史」とか、
本書の著者が訳されている「フィンランド空軍戦闘機隊」も。。
また、独ソ戦車戦シリーズの新しいやつも本書の内容と同じ、
「冬戦争の戦車戦―第一次ソ連・フィンランド戦争 1939‐1940」です。
でもコレは、独ソ戦車戦・・じゃないよなぁ。。。













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コメント 5

北欧の鷹

ハスカリティ、スワティカは現在でもフィンランドで使われていませんでしたっけ?私の記憶違いだったら申し訳ありません。
by 北欧の鷹 (2011-06-10 23:30) 

ヴィトゲンシュタイン

今のフィンランド空軍のインシグニアは◎だったと思いますが、フィンランドの何かという意味ならわかりません。
「流血の夏」に書いてあれば報告します。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-06-11 05:47) 

北欧の鷹

ありがとうございます
自分の方でも調べてみます
by 北欧の鷹 (2011-06-12 09:43) 

北欧の鷹

見つかりませんでした。
Wikiに現在もフィンランドのメダルおよび装飾物に目立たない形で使用されている。と書かれているだけですね。
ごめんなさい
by 北欧の鷹 (2011-06-25 18:54) 

北国生まれ

国籍を問わず、最後まで郷土を守り抜こうとするその姿勢には感銘を受ける。
by 北国生まれ (2016-06-14 21:33) 

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