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髑髏の結社 SSの歴史(下) [SS/ゲシュタポ]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ハインツ・ヘーネ著の「髑髏の結社(下)」を読破しました。

この下巻では、まず東部戦線の悪名高い「アインザッツグルッペン」を詳細に解説します。
A~Dの初代隊長たち・・刑事警察局長で隠れ反ヒトラー派のネーベだけが志願し、
東部従軍を2度拒否してヒムラーからも不興を買っていたオーレンドルフも仕方なく承諾。
ヴァルター・シュターレッカーとオットー・ラッシュも隊長を務めることに至った理由は、
ハイドリヒの受けを良くして、その後のベルリン本部内での出世が目当てです。

逆にゲシュタポのミュラーやSDのシェレンベルクらが巧く立ち回り、
このユダヤ人とパルチザンらを容赦なく抹殺する殺人部隊の指揮を執るという、
最悪な前線勤務から、巧く身をかわした話も・・。

髑髏の結社 下.JPG

そして占領区域ではユダヤ人の迫害を実行に移すSSですが、
救出への道」でもあったように、SS嫌いの党のガウライター(大管区指導者)からは
邪魔者扱いされ、フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリューガーSS大将もお手上げです。

Friedrich Wilhelm Krüger.jpg

これらエーリッヒ・コッホハンス・フランクといったガウライターの他にも
東部の管区では「長いナイフの夜」によるエルンスト・レームの粛清とともに
滅亡したと思っていた「SA」が、SSに対する復讐心を忘れておらず、
SSの政策をここぞとばかりに邪魔だてし、特にSA幕僚長ヴィクトール・ルッツェは、
その謎の最後まで非常に印象的でした。

Viktor Lutze.jpg

中盤ではヒムラーとボルマンのライバル関係も・・。
秘書と恋に落ちたヒムラーが、妻と別れて新しい家族との生活を望むものの、
隠れて私腹を肥やす部下たちとは違い、この絶大な権力を持ちながらも
給料だけでやり繰りする潔癖症のヒムラーにはそんなお金がありません。

Heinrich Himmler and his daughter Gudrun_Heydrich_Wolff.jpg

恋には勝てない一介の男でもあるヒムラーは、仕方なく「党の金庫番」である
ボルマンからお金を借りて、彼の愛する子供たちも育ちます。
このヒムラーの複雑な人間性はルドルフ・ヘースアイヒマンが登場する
絶滅収容所の場面でも取り挙げられ、毎日数千人のユダヤ人を整然と殺害させながら、
看守の暴力による1人2人の被収容者の殺害は許さないという矛盾した潔癖症っぷり・・。

Gudrun and Dad.jpg

本書ではここまでほとんど触れられなかった武装SSも70ページほどの章で紹介されます。
ゼップ・ディートリッヒと本部長のゴットロープ・ベルガーの他に
軍人気質のフェリックス・シュタイナーと軍人嫌いというテオドール・アイケという2人の
SS師団長の相対する考え方を中心に解説しています。

Theodor_Eicke.jpg

1944年のヒトラー暗殺未遂関連では、フランスのB軍集団司令官ロンメルによる
連合軍への降伏交渉に伴う各将軍への根回しを紹介します。
ここでは武装SSを代表してビットリッヒも大賛成していました。
しかし結局、この計画は失敗し、ゲシュタポに捕えられた
ロンメルの参謀長シュパイデルを助け出したのが
ゼップ・ディートリッヒだったというのは初めて知りました。

bittrich7.jpg

また、解体~SDへ吸収した国防軍防諜部(アプヴェーア)のカナリス提督
父のように慕っていたシェレンベルクに、ゲシュタポのミュラーは
嫌がらせ充分にそのカナリスを逮捕するよう命じます。
このあたり、誰が何をするにしても、陰謀や裏切り、保身と敵対心が渦巻いていて
SSのなかにも、常識的にとても許されない残虐行為に手を染めていたことから
後戻りは考えられず、最後までヒトラーと共に突っ走ろうとする連中と、
敗戦と連合軍への降伏を想定し、証拠隠滅や逃亡計画を図る連中とに
分かれている印象があります。

Walter Schellenberg5.jpg

ヒトラーの国防軍への不審が最高潮に達したこの時期、少年時代からの夢が叶い、
遂に軍人としてヴァイクセル軍集団司令官という東部戦線の重要ポストにつくものの、
己の軍人としての実力を思い知ったヒムラーは、
一日の戦いは夜の10時に終わるもの・・と勝手に決めつけては床に就きます。
当初から絶望的な人事と考えていた陸軍参謀総長グデーリアン
「病気療養中」の彼から辞意を引き出させようとヒムラーの元を訪れますが、
それを出向かえたヒムラーの参謀長ラマーディングSS少将も思わず、
「あの司令官をなんとかしていただけませんでしょうか・・?」

Heinz Lammerding7.jpg

1945年のベルリン攻防戦ともなると、敵前逃亡した兵士を吊るし首にするため、
SDは軍事裁判の書類を提出するよう国防軍に求めます。
しかしOKWのカイテル元帥は、一向にこの要請を拒否。
すでにボロボロとなった国防軍兵士を晒し者にするなどということは
さすがに出来なかったようで、どの本でもロクなことが書かれていないカイテルが
このSSを中心とした断末魔の時期においては、マトモな人間である気がしました。

Generalfeldmarschall Wilhelm_Keitel.jpg

最後はほとんどヒムラーの副官となった印象のシェレンベルクと
ヒムラー専属のマッサージ師、フェリックス・ケルステンが
ヒトラーを見限るよう説得し続けています。
ケルステンの日記からヒムラーが真実の姿を見せているようでもあり、
前半から随所にケルステンによると・・とヒムラーの発言を検証しています。

kersten_himmler.jpg

とにかくタイトルから想像させるような「一枚岩の思想」という結束がまったく無い
「髑髏の結社」は戦線の拡大によって膨れ上がったSSという組織の現実的な運用と、
ヒムラーの追い求める理想とのギャップというジレンマの狭間に、
上級指揮官たちによる個人的な戦いや横領などの私利私欲が蔓延し、
誰もコントロール出来ない操縦不可能な組織になっていったというように感じました。

例えば、「ユダヤ人の抹殺」を推し進める部局があると思えば、一方では、
「ユダヤ人を労働力」として大量に確保しようという正反対の部局も存在します。
その意味では、このSSを支配したヒムラーが良く言われるような
2面性を持った化け物だったわけでは決してなく、
巨大組織のトップとして、「SS帝国指導者」としての責務を果たせていなかった・・と
考えたほうが良いのかも知れません。

Reinhard Heydrich at a Fencing Competition with the Berlin SS Fencing Team (1939).jpg

となると、やはり考えてしまうのが、「もし、ハイドリヒが暗殺されなければ・・?」。
古参には異常に甘いヒトラーがヒムラーを罷免することはないでしょうが、
それよりも、この戦局悪化の時期においては、上司を見限ったハイドリヒを黒幕とした
SS内部のクーデターが発生したとしてもおかしくありませんね。
ちょっと「ファーザーランド」を彷彿とさせる展開過ぎますかねぇ?

実におびただしいほどの人物が登場し、半分は初めて聞く名前でした。
しかもベッケンバウアーなどというSS将校まで出てくると、「おいおい・・大丈夫か?」
とドイツ・サッカー界まで心配になってきます。

SS Polizei's (Orpo) football team.jpg

決してSS入門編とは言えない「濃い」内容ですが、
他のSSモノを読まれているような興味のある方なら必ず読むべきもので、
Uボートでいうところの「デーニッツと灰色狼」と同じ位置づけだと思います。
たぶん、これ以上のSSモノは無いんじゃないでしょうか。。。
本書と「武装SS興亡史」の2冊を読破することで、
このSSという組織がある程度は理解出来ると思いました。



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ワルキューレ

興味深い本でした。
実は、毀誉褒貶のあるDアービングの「ヒトラーの戦争」を読んで以来、
ナチは戦争マシーンではなく、、最後、トップがコントロールできなくなってしまった組織と思うようになっていました。ヒトラーは確かにできる男かもしれないが、もともと、こういう組織運営は苦手そうですし。

しかもナチはご存じのとおり、古参は大半がチンピラあがりで、そうした組織人ではないですから。そんなイメージを持っていました。最後のヒムラ―怪物ではなく、無能説は、私のイメージにもあいます。ハイドリヒは本当に有能な化け物だったのかもしれませんが。
 また、ビットリッヒが和平を試み、ディートリッヒがシュパイデルを助けたという話は、興味深かったです。
 読んで見ようと思います。ありがとうございます。
by ワルキューレ (2010-08-15 10:30) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。ワルキューレさん。
早速、コメントしていただきまして、ありがとうございます。

本書はまだまだ興味深いちょっとしたエピソードが沢山あって
今回レビューを上下2回に分けても書き切れなかったほどです。
ディートリッヒがシュパイデルを・・という話ですら、
うかうかしていると気が付かないといった代物ですから・・。

しかし本書の雰囲気は伝わっているようで安心しました。
読まれたら、ワルキューレさんの感想もぜひ教えてください。

by ヴィトゲンシュタイン (2010-08-15 13:18) 

ワルキューレ

興味深い、また詳細な本でした。ただ、読むのがなじみがないのが苦痛でしたね。
(全体)1・SSというのは、非常に矛盾した存在です。これが改めて確認されました。一方向、たとえば治安という形では機能した半面、内部の混乱ぶりは驚くほどでした。
2・混乱と特徴には、ヒトラーの権力を分割する統治、ヒムラ―、ハイドリヒの二人の男の特徴が色濃く、残っていることが確認できました。
3・予想以上に、インテリが多く、部分的には見事な政策もあり、驚く点もありました。これは面白いテーマ、自分の現代の生活に参考になる点もあるかと思います。

(個別)1・檜山良明という作家の「スターリン暗殺計画」で、虚実入り混じった面白い小説がありました。注で出てきた、日本によるスターリン暗殺計画があって、この本が種本かと、興味深く思いました。
2・シェレンブルグという人物に興味引かれます。回顧録は絶版ですが。ここまで、和平交渉を進めていたとは知りませんでした。あと、ネーベとオーレンドルフの不可思議さが印象になります。
3・ロンメルの反逆について、「北仏で負けたら、国境まで引き上げる」なんて計画を承認していたなんて、ロンメル本を何冊か読んでいたのですが、初めて知りました。他の本でシュパイデルのデマで誤解で死んだのではなく、この本のとおりならヒトラーが自殺を命じてもしょうがないかと思います。これまでない情報ではないでしょうか。
4・やはりハイドリヒが、何を考えていたのか、もう少し知りたくなる本でした。どうも本を紹介いただきありがとうございました。
by ワルキューレ (2010-09-04 19:21) 

ヴィトゲンシュタイン

丁寧な感想、ど~も、ありがとうございます。

(全体)1・の”非常に矛盾した存在”というのは、自分も同じ意見です。
結論が”矛盾”というのも、変かも知れませんが・・。

2・”ヒトラーの権力を分割する統治”もなるほどですね。陸軍もそれまでのOKHからOKWが登場しましたし、空軍では知識がなく、遊びほうけてるクセに最高司令官の座を守りたいゲーリングが、ヒトラーよろしく、部下の権力を分散しています。海軍でも、もしレーダーが辞任しなければ、水上艦隊のレーダー対Uボートのデーニッツという図式が最後まで続いたかも知れませんね。

3・”現代の生活に参考になる”という意味ではワルキューレさんの点とは違うかも知れませんが、「健康帝国ナチス」という本があり、ガン研究、食生活やタバコ撲滅運動といった内容のようで、今度読んでみようと思っています。

ハイドリヒやシェレンベルクらは個人的にとても興味がありますが、ネーベは書かれている本が少ないので、なおさら気になる人物です。

またの感想、お待ちしております。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-09-05 09:05) 

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