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ヒトラーの戦争〈3〉 [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ディヴィッド・アーヴィング著の「ヒトラーの戦争〈3〉」を読破しました。

第3巻はヒトラーから信用を失いつつあるゲーリングと、
そのヒトラーの要求とゲーリングの叱責の板ばさみとなり、
自殺するイェショネク空軍参謀長の話から始まります。

ヒトラーの戦争③.JPG

ドイツにとってバラ色でイケイケな第1巻、東部戦線で暗雲立ちこめる第2巻、
そしてこの第3巻は、「彼」であるヒトラーを含め、登場人物たちが尽く死んでゆきます。
そんななかでヒトラーが本当に困ったときに最後までちょくちょく登場のユリウス・シャウプは
掴み所がなくて、いやに気になる存在です。
第1巻の巻頭、アーヴィングの紹介では、「ヒトラーの副官兼なんでも屋。
陰謀を考えるほど知的ではなかったので重宝がられた」という人物です。

Julius Schaub1.jpg

ブルガリアのボリス国王の謎の死についても書かれていました。
ヒトラーとの会談から帰国後、不思議な急病に倒れ、死亡しますが、
公式発表では「狭心症」。しかしドイツ人医師の表現では、
「風変わりな蛇の毒」、または「典型的なバルカンの死」ということだそうです。
それでも、この死はハッキリしないですね。ドイツが絡んでいることはなさそうですが、
「国王暗殺」という個人的に興味深いテーマです。

Boris_III hitler.jpg

イタリアの寝返り、ムッソリーニの救出のくだりでは、
イタリア本土に上陸した英米連合軍の比較が面白いですね。
英軍、米軍同数が投入されたのに、投降した連合軍兵士の9/10以上が米兵であり、
ヨードルは、米軍の実力をモントゴメリーの歴戦の英軍の遥か下と見た・・。
これが結局、ノルマンディ上陸を甘く見ることになったのかもしれません。

Alfred JODL.jpg

1943年も終りに近づくと、前線の将軍たちですら士気が落ち初めます。
ヒトラーの戦争目的を理解している2,3人の将軍の名前ではモーデルシェルナーという
荒っぽい元帥の他にロタール・レンドリック上級大将の名が挙がっています。
このレンドリック、実はあまり知りませんでした。
なにか最終戦的な戦記に登場してましたかねぇ?

Lothar Rendulic.jpg

防諜戦争についても本書全般で書かれています。
特に国防軍諜報部(アプヴェーア)の責任者カナリス提督が最終的にヒトラーに罷免され、
防諜が国防軍からSSへ移って行った過程では、このアプヴェーアの
情けないほどのスパイたちと間違った情報のオンパレードです。
ヒトラー目線から見た本書では、当然の内容ですが、
もともと反ヒトラーであったカナリスがワザと仕組んでいた感じもあるので、
どうもアプヴェーアの真の実力が図りかねますね。

canaris6.jpg

大脱走」も出てきます。ヒムラーの報告を受けたヒトラーが
「捕えたらゲシュタポへ引き渡せ」と命令し、決して「処刑しろ」とは言っていないと
ヨードルが証言しているそうですが、果たして真相はどうでしょうか。

Squadron Leader Roger Bartlett Big X.jpg

1944年6月、マンネルヘイムのフィンランドが苦境に立たされると、
それを支援していたヒトラーお気に入りの将軍、ディートルが再び登場します。
会議の場でヒトラーの批判に対し、顔を真っ赤にして、大理石のテーブルに拳を叩きつけ、
「机上の仕事しか知らない将官の典型である」と片付けて、
マンネルヘイムを最後まで助けるため、フィンランドへ飛び立って行きます。
唖然とするスタッフたちに向かって、ヒトラーはこう叫びます。
「諸君、これこそ私が好む将軍である!」
しかし、そのディートルを乗せたJu52は墜落してしまうのでした・・・。

mannerheim.jpg

ヒトラー暗殺未遂事件では、一般的にはヒーローのシュタウフェンベルク大佐
「己の命もかけられない、卑劣なテロリスト」という立場です。
この事件の巻き添えを食い、足に重傷を負って片目をえぐり出された、
長く首席副官を務めたシュムントをヒトラーが見舞い、涙します。
その後、死亡したシュムントの奥さんがヒトラーを訪れた際にも、やはり涙・・。

hitler_below_Goring_Rudolf Schmundt.jpg

結果的に140人が処刑されたとするこの事件では、
ヒトラーの燃えるような復讐心が凄まじく、ピアノ線を使った絞首刑の様子を撮らせて、
毎晩、鑑賞していたという話を良く聞きますが、本書ではまったく別の展開で、
フライスラー裁判長の演出過剰な裁判に怒り、絞首刑のフィルムを観るのも拒否。
ならばとSSの副官フェーゲラインが取り出した裸の死体写真も苛々と放り投げ、
最近親者に適当な生計費を与えるようヒムラーに指示までしています。
誰の目線から見るのかで、こんなにも善悪は変わるものなんですね。

Judge Roland Freisler.jpg

ヒトラーと戦った、あるいは命令を無視した将軍たち~一般的に評価されている~も
本書ではヒトラーの言うことを聞かないわがまま軍人的な扱いです。
フォン・マンシュタインしかり、ガーランドしかり、コルティッツ
「パリを気弱に明け渡したので・・」と紹介されています。
まるで「失われた勝利」や「始まりと終り」の反論本みたいになっていますね。

Surrender of General Von Choltitz.jpg

もちろんユダヤ人の虐殺命令をヒトラーが出したのか・・についても
所々で検証していますが、結論から言えば、そのようなハッキリした文書がないので、
「ヒトラーは知らなかった」としているようです。

本書はこの問題が賛否両論を巻き起こしたことで有名ですが、
読み終えた印象では、あくまで副次的な話・・と感じました。
基本はタイトルどおりの「ヒトラーの戦争」がほとんどを占めており、
ベルリンのブンカーでの最後の日々まで描かれています。
しかし個人的には客観的なものが好きなので、この「ヒトラー寄り」の本書は
なかなか自分の中で消化するのが難しいですね。

Hitler with Eva Braun.jpg

ただ、ヒトラー個人よりも、独裁者ヒトラーとナチ党という絶対権力の世界の中で
奔走した人々に興味があるので、そういった意味では、その彼らの別の一面を
知ることが出来たり、過去に読んだものに登場しなかった人々も
知ることが出来たという満足感はあります。

ちなみに著者のアーヴィングは2005年にオーストリアで逮捕されています。
以下に、当時の記事を抜粋します。

ウィーンの裁判所は20日、英国の歴史家デビッド・アービング被告(67)に対し、
ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を否定したとして、
禁固3年の有罪判決を言い渡した。
オーストリアやドイツでは、ホロコースト否定は法律で禁じられている。
同国司法当局は1989年、アービング被告がオーストリア国内での講演などで
「ヒットラーがユダヤ人の絶滅を命じたという定説は間違いである」
「アウシュビッツにガス室は存在しなかった」などと述べたとして、逮捕状を出した。
アービング被告は昨年11月に講演のため同国を訪れた際に逮捕された。
同被告は法廷で罪状を認め、過去のホロコースト否定は誤りだったとして
「後悔している」と表明。

David Irving in court.jpg

ちょっと調べてみましたが、アーヴィングが無事「お勤めを果たした」かは不明です。
しかし、高齢の彼は「問題あり」と知りつつも、ネオナチなどを相手に、
このような内容で「講演料」を稼いでいたようで、いざとなれば「ゴメンナサイ・・」することで、
いわゆる「お金積んで保釈」や「執行猶予」で済むと想定していたようです。



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