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最終戦 -1945年ドイツ- [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヴォルフガング・パウル著の「最終戦」を読破しました。

1945年終戦間近のドイツ軍の敗走、そして無条件降伏に至るまでを描いたものは
この独破戦線でも「ヒトラー最後の戦闘」、「ベルリン陥落 1945」、
ナチス第三帝国の崩壊」と紹介しています。
上記の3冊が外国人著者のものに対して、本書はドイツ人から見た最終戦を
主に軍、あるいは軍集団レベルで淡々と描いたものです。

最終戦.JPG

「あとがき」で訳者の松谷健二氏が書いているように「バルバロッサ作戦」、「焦土作戦」と
書いてきたパウル・カレルが、この最終段階の戦史を書いているという話があるものの、
まだ完成しないうちに本書が登場したということで、
結局は、そのパウル・カレルの代わりという位置づけにもなっているようです。
そのせいもあってか、とても高いプレミア価格が付いてしまっています。。。

読み終えた印象であえて比較すれば、前半、ヴァイクセル河畔における主役、
ネーリング大将と陸軍参謀総長のグデーリアンのいきなり絶望的な状況を打開すべく、
有名な移動包囲陣によって奮戦する様子などは確かにパウル・カレルを彷彿とさせますが、
本書にはカレルで良く見られる、一兵卒同士の会話のようなものが登場しません。
そのかわり、コッホ中尉という著者の分身が度々登場してきて、
一般的なドイツ兵の心情などを表現しているといった感じです。

Walther Nehring2.JPG

また、最初に挙げた3冊がベルリン陥落までの過程を中心にしたものであるのに対して、
本書はそれにとらわれておらず、クールラントからケーニッヒスベルク、
あのライネフェルトSS中将が死守するキュストリン要塞から
ハンガリーでのSS第6装甲軍による「春の目覚め」作戦、そして西側連合軍との戦い、
降伏の様子もベルリンのみならず、各々の戦線において、
その最後までが、しっかりと書かれています。
戦況図も必要最低限出てくるので広範囲に及ぶ、これらの状況も理解しやすいですね。
ケーニッヒスベルクではその後ベルリンで行われるソ連軍による
暴行と略奪の序章ともいえる惨劇が行われています。

volkwagenwreckberlin7mk.jpg

ウィーン陥落までのエピソードは非常にサスペンス的な要素もあって少し違う雰囲気です。
ウィーンの防衛に就くのはフォン・シーラッハゼップ・ディートリッヒ
その配下にオーストリア人SS連隊「デア・フューラー」を含むビットリッヒ
SS第Ⅱ戦車軍団とくれば、ウィーンが廃虚となるような市街戦にもなりそうです。
しかし、大ウィーン陸軍警備隊長ビーダーマン少佐らによる
ソ連軍と協力したウィーン蜂起計画が発覚します。

ビーダーマン少佐ら抵抗運動のメンバーは死刑判決を受け、街灯に吊るされてしまいますが、
このような計画に動揺したビットリッヒらは、実はひどく弱体化していた
SS部隊も撤退させてしまいます。
10ページ程度の章ですが、これだけで本が一冊、
または映画が1本撮れそうな物語じゃないでしょうか。

Bittrich Deutschland.jpg

とにかく1945年1月からの戦局からですので、ほのぼのした話や
楽しい逸話などは一切ありません。
十倍にも及ぶ敵と対峙しつつ、カイテルやクレープスからもたらされる
ヒトラーのユートピア的命令に追い詰められていく将軍たちの物語です。
そんな中でも唯一、ニヤリとさせられたやり取りがありました。

ベルリン前面での防衛を任されたテオドール・ブッセ大将率いる第9軍。
しかし火器弾薬の少ないことを参謀長のヘルツ大佐がヴァイクセル軍集団に
皮肉を込めて問い合わせます。
「鹵獲品である19門のソ連製対戦車砲は弾薬がないので、
敵がわが軍からぶん捕った砲と交換に出してもよろしいか?」
これに対し、ヴァイクセル軍集団参謀長のアイスマン大佐は
「兵器交換はソ連第5突撃軍に直接同意を取りつけて行うこと」

Theodor Busse.jpg

バルジの戦い」で初登場したレーマー少将の「総統随伴師団」
(総統親衛旅団とか和訳は様々ですね)も第4装甲軍の予備として突然登場します。
しかし、というかやっぱりというか、ほとんど何もしないまま、
あっという間に全滅してしまいました・・。
この最後の最後にはハインリーチシェルナーといった軍集団司令官、
第12軍のヴェンクらを中心に、如何にして西側連合軍に降伏するか・・という
展開に終始します。

Hitler ontvangt Veldmaarschalk Ferdinand Schörner in de bunker.jpg

そして後半はヒトラーの自殺、後継者に任命されたデーニッツ海軍元帥を中心とした
降伏交渉の模様が詳細に描かれています。
モントゴメリーと交渉し、最後には毒を呷ったフォン・フリーデブルク提督は特に印象的です。
また、同様に無事交渉をまとめたヨードル上級大将に
柏葉騎士十字章をデーニッツが授けたという話もありました。

Col. General Gustav Jodl signs for Germany at Reims. General Admiral Hans G. Von Friedeburg.jpg

ネーリングは目立つなぁと思っていたら、本書の原稿にも目を通すなど
かなりの協力をしているそうです。
それにしても今や高い値段の付いたレア本です。
ヴィトゲンシュタインは神○町で6000円も出す羽目になりました。



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コメント 2

グライフ

こんばんは、遂に来ましたね「最終戦」 お待ちしてました。
私、中学生の時買いましてカレル本とのあまりの違い。無常観、諦念
が漂い、神目線のような突き放した文体、戦争がコッホの夢のなかの出来事のように感じられ、子供はついていけませんでした。
よってしばらく読む事もありませんでした。
でも年取ってから読むと感じるものの多さに何度も読み返してます。
コッホ、ショイフラー、の二本の糸とそれにまつわるエピソードをほどくように
読み解いていくのがこの本の味わいですね。語る事多すぎて逆に書けない
くらい思いこみのある本になってます。いや本は買っておくものですね。
著者はネーリングの伝記も書いてます、翻訳されてませんが。
しかし素晴らしく状態の良い本ですね、私のはもうボロボロですよ orz

by グライフ (2010-02-12 18:22) 

ヴィトゲンシュタイン

こんばんわ。読み終えた後、これはグライフさんのバイブル的本かな?という印象を持ちました。
確かに、この最後の最後を描いたものとしては、それほど悲惨さが滲み出ていない、淡々とした雰囲気のある本ですね。
本書は神○町にある軍事書籍専門で知られる○○堂で購入しました。
カバー無しとかだと、もっと安く見つけられたんですが、やっぱり古書の汚れが酷いのは買いたくないですね。
実は「ナチス狂気の内幕」も途中で耐えられなくなって、綺麗な古書に買い直ししたぐらいです・・。
でも、何回も読み直してボロボロになったものは、愛着があって逆に買い直しなんてしたくないんじゃないですか?
いま「焦土作戦」を読み返してみようかなぁと考えています。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-02-12 20:44) 

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